検事の死命 (「このミス」大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800215543

作品紹介・あらすじ

郵便物紛失事件の謎に迫る佐方が、手紙に託された老夫婦の心を救う(「心を掬う」)、感涙必至!佐方の父の謎の核心が明かされる「本懐を知る」完結編(「業をおろす」)、大物国会議員、地検トップまで敵に回して、検事の矜持を押し通す(「死命を賭ける」-『死命』刑事部編)、検察側・弁護側-双方が絶対に負けられない裁判の、火蓋が切られた(「死命を決する」-『死命』公判部編)。骨太の人間ドラマと巧緻なミステリーが融合した佐方貞人シリーズ。刑事部から公判部へ、検事・佐方の新たなる助走が、いま始まる!

感想・レビュー・書評

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  • 期待を裏切らない 佐方貞人シリーズ 三作目。
    これは、二作目の『検事の本懐』を読んでから読むべき。
    ストーリーが 一部 繋がっているので。

    満員電車の中で起こった痴漢事件。
    被害に遭った少女が手をつかんで警察に引き渡したのは、地元の有力者の係累。
    その上 彼には、検察庁関連の予算を後押しする代議士が後ろについている。
    一方、被害に遭った少女は母子家庭で万引きと恐喝の補導前歴がある。
    目撃者も物的証拠もない。

    間違えば冤罪を作り上げることになり、検察組織の権威に関わるこの事件。
    佐方の事務次官・増田の目線で語られる成り行きには、ハラハラドキドキ。
    増田は、度々 腰が引けながらも こんなことをつぶやく。
    「自分はこれまで通り佐方を信じてついていくしかない」
    そうだよね。つい、私もこぶしを握り締める。

    『検事の本懐』で登場した東署の南場 署長も登場。
    前作で彼が佐方から受けた恩義を深く心に留めて
    降りかかる圧力をものともせず、佐方の力になろうとする。
    いいなあ、こういうの、好き。

    そして、この作品ではもうひとつ重要なストーリーが語られる。
    前作で、読む者に感動を与えてくれた佐方貞人の父親のこと。
    父の十三回忌に故郷に帰った佐方に、驚きの出来事が…。

    ハラハラ、びっくり、そして感動を与えてくれるこのシリーズ。
    四作目にうつります。 楽しみ ☆彡

    ただ、ひとつ。
    佐方さんのニコチン中毒、何とかならないかな。
    素敵な人だから、長生きしてほしい。

  • 佐方の父親が逮捕された事件の真相が明かされて、皆の勘違いが解けてよかった。
    これにより佐方は前を向いて、父を誇りに思うことができたのだろう。

    過去に佐方に恩のある南場の男気により、痴漢事件は解決に向かった。過去に登場した人物との協力が見えたのが、展開的に熱くてすごくよかった。

  • このシリーズ、本当に好きです。
    父の真実、痴漢は冤罪か?、読み応えがありました。

  •  『佐方貞人』シリーズ3作目。
     米崎地検赴任後まもない若き佐方貞人の為人を描く。一見4編からなる連作だが、「死命」は刑事部編と公判部編でひと続きなので、実質3編構成と言える。

         * * * * *

     「心を掬う」では佐方の捜査姿勢を、「業をおろす」では佐方の心の重荷となっていた父親の謎を、そして「死命」2編では独任制官庁である検事としてのスタンスを、重厚なタッチで描き出していきます。

     また佐方の人柄について、真面目な堅物では決してなく、例えば『明日のジョー』を引き合いに出してジョークを飛ばせる柔らかさを持った一面もあることをさりげなく盛り込むなど、人物に幅を持たせているのも好もしい。

     かなり魅力的な゙主人公なので、このシリーズは長く続いて欲しいと思います。

  • 「本懐」の完結編が書かれていた。結末が気になっていたので嬉しかった。「死命」編も最後まで井原弁護士がなにか仕掛けてきそうでハラハラしながら読んだ。面白かった。

  • 佐方検事の検事としての、死命を全うする姿に
    心打たれました。
    「業をおろす」は佐方検事の人間らしい苦悩が
    見えて、感銘を受けました。

  •  これまた良かった!
     今回も佐方が若き検事の頃のお話。そして、またもや短編集だが、今回は読者にも嬉しい展開に。前作で佐方の父親が実刑を受け、そのまま周りの人たちにも犯罪者とみなされ、汚名を被ったままだった佐方家。もちろん真実は両親すら知らず、何年もの間辛い思いをしてきた。佐方は真実を知っていたにも関わらず、亡き父親との約束だからと明かさなかったその姿勢に感銘を受けた前作。
     でも、やっぱり心のどこかではすっきりしなかった私。両親はそのまま息子の汚名を被ったまま亡くなってもいいのか?周囲の人に誤解されたままでいいのか?そんな気持ちをすっきりさせてくれる『業をおろす』。こちらは前作の続編なのです。

     そして、法廷モノと言えば、弁護側と検察側でバッチバチの戦いがあってなんぼなのだが、前作ではそれがなかった。内容は良かったものの、そこだけは物足りなさを感じた前作。弁護側が用意したものに対し、検察側はどう対処するか。その心理戦がドキドキワクワクするものだ。
     今作の『死命を~』はそのバッチバチが楽しめる。痴漢に会った女子高生。相手は名家の家系の婿養子。そして優秀な弁護士が完全バックアップ。方や、女子高生は過去に補導歴もあり、母子家庭で貧しい家系。また、国会議員や検事正からの横やりも入る始末。この圧倒的不利な状況これに対し、佐方はどう対応していくのか・・・。

     いやあ、面白かった。今回は、佐方の上司でもある筒井の性格がよく表れている。佐方が後に弁護士になるきっかけを作った出来事があるのだが、今の筒井を知ってしまうと、それが腑に落ちない。一応、佐方貞人シリーズは、今のところこれ以降は出ていないようなのだが、続きを是非期待したい。

  • 安定しておもしろい。秋霜列日の白バッジを与えられた重み、自身の信念を貫く姿勢に感動を覚えた。

  • 柚月さん3冊目、今回も検事の正義を題材にした内容。冤罪だ!と被告の武本が訴える。原告の玲奈(高校生)は過去に万引き&恐喝の補導歴をもつが、佐方は玲奈を信じ、被告の痴漢を暴く。被告は大金持ちで大物(議員、検事等)がバックにいるが、佐方はそんなのお構いなしで正義を貫く、この一本気は極めて心地よい。佐方の正義は父親譲り。最終幕の極めつけ、弁護側は「被告は電車の中で痴漢していなかった」という証人を連れてきたが、佐方が証人の偽証を暴くこの場面は、シビレマシタ!!人が殺されない本を読むのは久しぶりでした。

  • 佐方検事の罪への向き合い方の真摯さひたむきさが郵便局での事件、痴漢事件で痛切に感じた。同時に作者の佐方検事への思いが私の心へも伝わった。佐方の父の謎もなる程であったが、親子共に罪への向き合い方が素晴らしい。柚月裕子作品益々のめり込みそうだ。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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