【TVアニメ化】響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ (宝島社文庫)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800217479

作品紹介・あらすじ

北宇治高校吹奏楽部は、過去には全国大会に出場したこともある強豪校だったが、顧問が変わってからは関西大会にも進めていない。しかし、新しく赴任した滝昇の厳しい指導のもと、生徒たちは着実に力をつけていった。実際はソロを巡っての争いや、勉強を優先し部活を辞める生徒も出てくるなど、波瀾万丈の毎日。そんななか、いよいよコンクールの日がやってくる-。少女たちの心の成長を描いた青春エンタメ小説。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、『全国大会』を目指したことがあるでしょうか?

    『全国大会』という言葉を聞いてそこに何を思い浮かべるかはマチマチだと思います。それは、あなたがかつて中学、高校で所属していた部活動によっても異なるでしょう。そんな言葉に細い目で遠くを見つめたくなる方は、『本気で全国に行きたい』と厳しい練習の中に身を置いたことがある方でしょう。一方で、『単なるスローガンというかなんというか』と和気藹々とした過去を思い出す方は、『出場して楽しい思い出を作』られただけの方かもしれません。

    過ぎ去って見れば、そのいずれもが間違いであり正解とも言えます。現在のあなたの中にそんな過去を振り返ることが苦にならないのであれば、いずれにしてもそれは幸せな時代だったのだと思います。

    しかし、過去のあなたの記憶にある部活動のあり方はあなたが選択した結果だったのでしょうか?それとも何も考えずにその部活動の雰囲気の中に自然と導かれた結果だったのでしょうか?

    さてここに、『今年一年間指導していくにあたって、まずは皆さんに今年度の目標を決めてほしいと思います』と語る顧問の先生の言葉の先に、自分たちが歩むべき道を自ら選んだ部員たちが主人公となる物語があります。『十年ぐらい前までは結構名の知れた強豪校』だったものの『いまは見る影もな』く落ちぶれた吹奏楽部が舞台となるこの作品。そんな部に新しい顧問が就任したことから何かが動き出すこの作品。そしてそれは、そんな彼らの歩みの先に『絶対、北宇治高校は全国に行く』と拳を握る主人公の決意を見る物語です。

    『緊張で死ぬかもしれへん』と隣にいた梓がつぶやくのを聞いて、『私も、と答えながら』『目を見開』いたのは主人公の黄前久美子(おうまえ くみこ)。『立て看板に並ぶ』『京都府吹奏楽コンクール』という『関西大会を目指す』この場に来るのは三度目だと思う久美子。そんな中、『ゆっくりと紙が広げられ』『並んだ中学校名』の隣に『金、銀、銅の文字』が書かれています。『金や!』『久美子!何ぼーっとしてんの!金やで金』と叫ぶ『梓に抱きつかれ』『ようやく笑みをこぼした』久美子。『金は金でも関西大会には進めないダメ金だけど、まあでも金賞なら及第点だ』と思う久美子。そんな中に『トランペットを握り締めた』麗奈が、『悔しい。悔しくって死にそう。なんでみんな金賞なんかで喜べんの?アタシら、全国目指してたのに』と涙を流します。『アンタは悔しくないわけ?』と『吐き出された声が、久美子の心臓にまっすぐ突き刺さ』ります。そして『アタシは悔しい。めっちゃ悔しいねん』という麗奈の絞り出すような声が『久美子の脳にいやにはっきり刻み込まれ』ました。
    場面は変わり、『続きまして、校歌斉唱』という声に立ち上がった久美子。そんな中に始まった吹奏楽部の演奏に『…これはヒドイ』と思う久美子は『不ぞろいなリズム、まばらなテンポ』に『高校でも吹奏楽を続けようかと思っていたが、このレベルならやめておこう』と思います。『関西大会どころか京都大会で金賞すら無理だ』と思う久美子。続いて『新入生代表、高坂麗奈』と『新入生の挨拶』に指名された麗奈を見て、『成績優秀』だった彼女が『どうしてこの学校を選んだのだろう』と思います。式の終了後、『一年三組の教室に入』った久美子は、早速、隣に座った短髪の少女から声をかけられます。『うち加藤葉月』と紹介され、話し始めたところに担任で吹奏楽部の副顧問の松本美知恵が入って来ました。『私はこの学校でいちばん厳しい教師だと自負している』と挨拶する松本は出席をとり始めますが、何人目かで『川島…りょくき?』と詰まってしまいます。『それ、サファイアです。緑に輝くって書いて…』と『猫っ毛の少女』が手を挙げます。そして、全員の点呼が終わりその日は終了となりました。『一緒に帰ろうや』と葉月に声をかけられ一緒に帰る二人は部活動の話をします。中学校の時テニス部だったけれど、『吹部に入るつもり。なんかおもろそうやし』と語る葉月に『私、中学のとき吹部だったよ』と返す久美子。そんなところに『二人とも吹奏楽に入るつもりなん?』と『猫っ毛の少女』川島緑輝が声をかけてきて、三人は一緒に歩き出します。そんな中、緑輝が『吹奏楽の超強豪校』である聖女出身だと知って驚く久美子に、緑輝は、自分は『コントラバスひと筋』だったと告げます。そんな緑輝に『久美子ちゃんは?』と訊かれ、『私はユーフォだったよ』と返す久美子。『なんよUFO』と訊く葉月に、『UFOじゃなくて、ユーフォ。ユーフォニアムっていう低音の楽器のことだよ』と説明する久美子。『高校でも吹部に入るつもりなの?』と訊く葉月に『うん、そうだよ?』と返す緑輝。しかし、久美子は『この学校の吹部って…なんというか、さ』と言葉を濁し『ダメ金すら無理そうやし』と続け『あんなレベルの部活で我慢できる?』と訊きます。それに『普通に楽しくやれたらいいかな』と答える緑輝に、『久美子ちゃんも吹部に入るん?』と訊かれ言葉を詰まらせる久美子。そこに『久美子も吹部に入るんやんな?』と『葉月が無邪気に尋ねて』きました。『う、うん…入るつもりだよ』と諦めたようにうなずく久美子に『三人で仲良くやってこな!』と溌剌と告げる葉月。二人が笑っているのを見て、『他人に流されるのも悪くはないかもしれない』と思う久美子。そんな久美子が吹奏楽部へと入部し、中学時代同様ユーフォニアムを担当し、コンクール出場をかけて練習に明け暮れていく日々が描かれていきます。

    “授業だけでは得られない、吹部女子たちの心の成長を描いた感動ストーリー!”と本の帯に書かれた言葉が”ザ・青春”を感じさせるこの作品。『関西大会連続出場、全国大会金賞…』と『音楽室の壁』に飾られた『吹奏楽部の華々しい栄光』を過去に見る中に、今やすっかり落ちぶれてしまった北宇治高校吹奏楽部を舞台に描かれていきます。高校の部活動は大きく分けると文化系と運動系に分けられると思います。試合での勝利を目指して練習に励む運動系の部活動に比して、文化系の部活動は一見、地味に見られることが多いと思います。しかし、そんな中の唯一の例外と言って良いのが吹奏楽部です。それは一つには全国コンクールの存在、そんな大会への出場を目指して一致団結して練習に励んでいくイメージがどこか運動系の部活動に近いものを想像させるからだと思います。また、吹奏楽部は小説の素材としても相応しく、実際数多くの作品が存在します。私が読んできた中では、額賀澪さん「屋上のウインドノーツ」、「風に恋う」が強く印象に残っています。ご自身も中学校時代に吹奏楽部だったという額賀さんの作品で主人公が担当する楽器は額賀さんも担当されたパーカッション、そしてアルトサックスです。吹奏楽には欠かせない楽器が印象的に奏でられるそれぞれの物語は作者である額賀さんの吹奏楽への強い愛情を見るものでもありました。そして、この作品の作者である武田綾乃さんも小・中学校時代の五年間、吹奏楽を奏でられた過去をお持ちです。そんな武田さんが担当されていた楽器こそが、この作品の主人公・久美子が担当するユーフォニアムです。額賀さんの作品のレビューにも書いた通り、私もかつて吹奏楽に関わった過去があり、自分が担当していた楽器に対しての思いはひとしおです。額賀さん、武田さんがそれぞれ自ら担当された楽器を主人公に担当させる気持ちはとてもよくわかります。

    そんな武田さんのこの作品では、吹奏楽について全く知識のない方にも戸惑わないように丁寧な描き方がなされているのがとても印象的です。そんな中からユーフォニアムをはじめとする金管楽器を鳴らすには、という基本のキについて触れられた箇所を抜き出してみましょう。

    『金管楽器には吹き込み口となるマウスピースという部品がある。このサイズは小型の楽器ほど小さくなり、大型の楽器ほど大きくなる』。

    この位はわかるという方もいらっしゃるかと思いますが、

    『木管楽器と違い、金管楽器はこのマウスピースに触れた状態で唇を震わせる。金管は奏者の唇の振動により音を生み出すのだ』。

    という点はご存知でしょうか?

    『リコーダーのようにただ息を吹き込むだけでは音が出ない』。

    という通り、強く息を吹き込めば良いというものではなく、『音を出すにはコツがい』ります。

    『あー、音が出えへん!』

    そんな風にいじける初心者の葉月。『楽器を吹いているのに音が出ない』ことにストレスを感じる瞬間。この作品では、音を出せるようになってみればなんのことはない、そんな風に本当のゼロの状態から始める登場人物を用意することで全く吹奏楽を知らない方にもとてもわかりやすく物語が進んでいきます。その他にも、『金管楽器でまず重要な基礎練習といえば、ロングトーン』、『ひとつの指使いでさまざまな音を出す金管楽器にはとくに重要な練習』という『リップスラー』、そして『同時に同じ音を出し、その高低差を調節する』という『チューニング』などなど、吹奏楽を知る方には当たり前でもある言葉の数々にも丁寧な説明が入ります。それでいて、読んでいて読者を熱くするコンクールの場面など、初心者から、上級者までさまざまな位置にある読者が楽しめるようにとても良く考えられた作品だと思います。数多の吹奏楽を題材にした小説の中でも頂点に位置付けられることも多いこの作品、その理由が良くわかります。

    では、次にそんな作品の登場人物を整理しておきたいと思います。とは言え、舞台となる北宇治高校吹奏楽部に所属する生徒の数はこんな風に紹介されます。

    『三年が三十五人、二年が十八人、一年が二十八人』の計八十一人

    これら全員の名前が登場するわけではもちろんありません。ここでは、文庫本の表紙に描かれた六人についてご紹介したいと思います。それぞれが楽器を手にしていますのでこれで特定ができると思います。

    ・黄前久美子: 主人公、ユーフォニアム担当、小学校四年で加入した金管バンドから中学時代を通じて同じ楽器、制服が可愛いことで北宇治高校を選ぶ

    ・加藤葉月: チューバ担当、中学はテニス部、日に焼けた褐色の肌、薄い唇

    ・川島緑輝: コントラバス担当、中学時代から吹奏楽で同じ楽器、名前は『サファイア』と読む、ふわふわとした猫っ毛

    ・高坂麗奈: トランペット担当、中学時代から吹奏楽で同じ楽器、部活のほかに教室にも通う、艶のある長い黒髪、こぼれ落ちんばかりの大きな瞳

    ・塚本秀一: トロンボーン担当、中学時代は吹奏楽部でホルン担当、久美子の幼馴染、身長一八〇センチの細長男

    ・田中あすか: ユーフォニアム担当、低音パートリーダー、副部長、饒舌、抜群のプロポーション、長い黒髪、(表紙の左上の後ろ向きの人物)

    以上の生徒たちをまとめ、顧問を務めるのが、『今年からこの学校にやってきた』という滝です。

    ・滝昇: 二年五組の担任で音楽担当、年齢は三十四歳、スラリとした体躯に、シャツ越しでもわかる均整の取れた肉体。柔らかな印象を与えるその甘いマスクは、瞬く間に女子生徒たちの心をガッツリとつかんでいた。

    男女の人数比1 : 9という中にこの顧問・滝の印象は大切です(笑)。少し漫画チックではありますが、こういった細かいキャラクター付けがこの作品にはよくあっていると思います。しかし、この顧問、ただものではないその姿を次第に垣間見せていきます。

    物語は、このような土台の上に、ある意味読者が期待する王道の物語が〈プロローグ〉と〈エピローグ〉に挟まれた四つの章にまさしく起承転結のわかりやすい構成をもって描かれていきます。そんな物語にはさまざまな要素がてんこ盛りです。注目すべきポイントを三つご紹介しましょう。まず一つ目は物語の作者である武田さんは京都府宇治市のご出身ということから、『京都』に関する描写が物語に独特な雰囲気感をプラスしているところです。『京都』を描いた作品は多々ありますが、この作品は他の作品であまり見慣れない『京都』が登場します。その一つが『毎年六月五日から六日未明にかけて行われる、県神社のお祭り』という『あがた祭り』です。また、『別名「暗夜の奇祭」』というその祭りの中で『山登ろうよ!大吉山!』と久美子が登るのが『正式名称は仏徳山』という標高一三一メートルの山です。知らない『京都』がたくさん!登場する中に展開する物語は、一般的な『京都』が前面に出過ぎない独特な雰囲気感を醸し出してくれます。

    次に二つ目は、”恋愛&学園物語”が描かれるところです。なんと言ってもこの作品の舞台は高等学校です。当たり前に”学園もの”の雰囲気感に満ち溢れて物語は展開します。そんな中に、キュンとするような”恋愛物語”が描かれます。

    秀一: 『お前さ、五日空いてる?』
    久美子: 『え?五日って平日でしょ?普通に部活じゃん』
    秀一: 『そうじゃなくて、部活のあと!』
    久美子: 『部活のあと?…あぁ、もしかして、あがた祭り?』
    秀一: 『…その、一緒に行けへんかなって思って』
    久美子: 『あ、えっと…』

    そんな中に、『普段ならなんとも感じないこの距離が、なぜだか今日ばかりは無性に近く感じた』と展開する物語は、ときめきと切なさが混じり合う感情の中に展開していきます。定石と言えば定石通りの”恋愛物語”なのかもしれませんが、間違いなくこの作品の魅力の一つだと思います。

    そして、三つ目は『吹奏楽』を描いていく中で部員たちが見せるさまざまな人間模様です。これはどんな部活動でも同じことだと思いますが、普段どんなに仲の良い関係性であっても試合に出場できる数は決まっています。仲間でありながらライバル同士でもあるのが部員たちです。一年生から三年生まで三学年に渡る部員たちの関係性は普段は先輩、後輩という関係性に集約されます。この作品では、新しく顧問となった滝が『オーディションをやることに決めました』という大きな決定により物語を動かしていきます。『オーディション。その単語に真っ先に反応したのが三年生だった』という先に、不満が渦巻く三年生。そんな三年たちを滝はこんなひと言をもって制します。

    『そんなに難しく考えなくて大丈夫ですよ。三年生が一年生より上手であれば、なんの問題もない。…違います?』

    あなたが三年生だったとして、こんな言葉を投げかけられたらどう思うでしょうか?こんな言葉に反論ができるでしょうか?高校生ならではのドロドロとした、高校生だからこそのドロドロとした感情が渦巻いていく展開はある意味極めてリアルであり、そんな彼らには恐縮ですが、そこに描かれていくのは間違いなく面白い物語です。

    また、そんな物語は、主人公・久美子の確かな成長を見る物語でもあります。物語の冒頭を飾る〈プロローグ〉では、久美子の中学最後のコンクールの結果発表の場面が描かれます。そこで、『関西大会には進めないダメ金』ではあるものの、『まあでも金賞なら及第点だ』と思った久美子。しかし、涙をぽろぽろと流す麗奈に『アンタは悔しくないわけ?』と問われた言葉が突き刺さります。そして、同じ高校の吹奏楽部で再会した久美子と麗奈はこんな会話を交わします。

    麗奈: 『アタシはさ、特別になりたい』
    久美子: 『トランペットを吹いてたら、特別になれるの?』
    麗奈: 『なれる』、『だからアタシは、吹奏楽をやってんねん。特別でありたいから』

    そんな会話の中に久美子は自問します。

    久美子: 『どうして吹奏楽を続けているか。その答えを』『いまだ持っていない』。

    この作品は、そんな久美子が吹奏楽を続ける答えを探す物語でもあると思います。『初めてその名を聞いたとき、冴えない楽器だなあと思った』と自らが奏でるユーフォニアムのことを思う久美子。『地味だし、マイナーだし。見た目もあんまりカッコよくない』というユーフォニアム。『だけど、それでも久美子はユーフォニアムが好き』。

    『地味だし、マイナーだけど、その音は温かくて美しかった。ほかの楽器になりたいと何度も思った。だけど結局、ユーフォを選んでしまう自分がいた。久美子はユーフォニアムが好きなのだ。ただ好きなわけじゃない、大好きなのだ』。

    そんなユーフォニアムを奏でていく久美子は強い思いの中に前へ前へと歩みを進めます。『全国に行けたらいいな』とは思うものの、『口先だけの約束みたいなもので、本当に実現させようだなんて思ったことは一度もなかった』という久美子。『期待すれば恥をかく。叶いもしない夢を見るのはひどく馬鹿げた行為だ。そう思っていた』という久美子。そんな久美子が思いを込める瞬間の到来。

    『だけど、願いを口にしなければ叶うことなんてありえない。絶対、北宇治高校は全国に行く』。

    『千五百以上ある高校のなかで、全国大会に残れるのはたった三十校足らず』という狭き門を目指してどん底から歩みを始めた北宇治高校吹奏楽部の活躍を描くこの作品。後半に向けて読者の気持ちを限りなく昂らせていく物語の中に、そこには期待に違わない素晴らしい感動のストーリーが描かれていました。

    『どちらを今年の目標にするか、自分の希望に手を上げてください。全国大会に行くか、のんびり大会に出るだけで満足するか、です』。

    顧問の滝が問いかけるそんな二択の回答に『全国大会を目標に練習に励むことにな』った北宇治高校吹奏楽部の活躍が描かれていくこの作品。そこには、ご自身もかつて同じ楽器を奏でられていた武田さんのユーフォニアムに対する愛情に満ち溢れた物語が描かれていました。まさしく”ザ・青春”が描かれていくこの作品。個性豊かな登場人物たちがそんな青春を駆け抜けていく様を見るこの作品。

    嗚呼、『吹奏楽』ってやっぱりいい!、心の底からそんな思いが込み上げる”吹部もの”の傑作だと思いました。

  • 小学6年生にお勧め本を探していて出会った1冊。

    京都府宇治市。黄前久美子(おうまえくみこ)は小学生の頃から吹奏楽をやっていた。楽器は、中音楽器のユーフォ二アム。しかし人に流される性質のある久美子は、特に主体性で選んだわけでなく、なんとなくここまで来ていた。
    入学した北宇治高校でも、新しく友だちになった葉月と緑に誘われるがままに吹奏楽部に入る。そして、三人で低音楽器パー卜の担当になった。
    北宇治高校は、昔は吹奏楽強豪校だったが、顧問も代わり生徒の意識も変わり、いまではすっかり弱体化していた。
    だが新しく顧問になった教師の滝は吹奏楽部員に問う。「きみたちは、なんとなくのんびり過ごしたいのか、本気で全国を目指したいのかどちらですか?」そう聞かれては「本気」と答えざるを得ない部員たちを相手に、滝の厳しい指導が始まった。

    吹奏楽部には色々な考えの部員たちがいる。実力主義で全国大会に行きたい者、みんなで仲良く音楽を奏でたい者、自分が好きなだけ演奏できれば良い者、楽器大好きで上手い自分を見て見て!という者。
    部活を通すことで、同級生のいままで知らなかった面が見えることもある。考え方の違いに仲違いが起きたり、部活を辞めるものもいる。部内での淡い恋もある。
    だが滝の指導によりみんなは確かに上達していた。
    そしてサマーフェスティバルが始まる。

    ===
    シリーズ第1弾。これはなかなか良かった。
    部活を通しての思春期物語だが、テーマも登場人物も多いけれども話としてごちゃごちゃすることもない。
    友情や同じ目的を持つ者の連帯感もあるし、学業との両立に苦しむこともあるし、レギュラー争いをすることで揉め事が起きることもある。過去には吹奏楽部内での揉め事もかなりあったようだし、恋愛のちょっとしたごちゃごちゃやら派閥?やらもある。それでもみんなが真剣に取り組んでいるので全体的に爽やかだ。
    キャラクターも個性的だし、ヒロインが「流されて行きてきた自分」「人に合わせてきたけど実は冷めている自分」に悩むという自分探し・自立への道の部分もある。高校生たちのじゃれ合うようなお喋りも実に元気だ。
    演奏の描写も良い。本当に音楽が聴こえてくるような文章だ。実際に吹奏楽で演奏される曲名や、演奏方法も書かれているので、YouTuberで曲を検索して聴きながら読んだ。

  •  表紙のイラストから内容に若干の偏見を持って読みはじめたが、顧問と部員や先輩後輩の衝突等の人間関係や、しつこ過ぎない恋愛要素などのしっかりとしたストーリー、吹奏楽のリアリティある描写など期待以上の読み応えで、一年に数冊程度しか出会えないレベルの面白い小説であり1日で読み終えてしまうほどのめり込めた。
     もう一度青春時代を追体験出来るほどにリアリティのある作品で後編を読むのが楽しみである。
     

  • フォローしている方の本棚から。
    吹奏楽部ではなかった私にも読みやすく、高校生の頃の一日一日の濃度の高い感じがよみがえってきて懐かしい。
    部員たちがそれぞれの思いを抱えながら臨むコンクールのシーンは緊張感と高揚感でいっぱいになった!
    それと同時に、こちらも吹奏楽部ではないけれど、部活を頑張っている高校生の長男の毎日もこんな風なのかなと思ったら胸が熱くなり、応援の気持ちを込めてお弁当のおかずをもっと豪華にしてあげようと思った。

  • タイトルしか知らなかったので。

    私も中高吹奏楽部だったので、とても懐かしい気持ちになりながら読んだ。部活の成績が顧問によりいかようにも変わってしまうのは本当に激しく同意。

    とはいえ自分は中高生全員一緒にC部門(上の大会がない)に出る方針の学校だったため、全国大会目指してというのは無く、全国行くぞ!という団結の仕方が少し羨ましく眩しかった。オーディションやソロ決めのギスギスはとても想像できる...
    それでもコンクール結果発表の瞬間のドキドキなどは共通していて、プロローグとエピローグでその辺が同じように且つ対照的に書かれているのも面白いなとおもった。

    あと高校生の恋の萌芽が初々しくてキュンとする。

  • 京都のとある高校の吹奏楽部を舞台にした青春小説シリーズ第一弾。アニメ化もされている。

    人物描写と各人物の関係性が中心なので、音楽についての描写が少ないのがちょっと残念。読んでいて音楽が聞こえるような部分が加わると話の深みが増してより一層良い小説になるように思った。この点ではアニメ化されたのは原作の弱点を補う形になり、良かったのでは。

    あと、青春小説の割には恋愛シーンは少なく、一方、ちょっと百合をにおわせる部分があるのは異色。もしかするとこのラインで同人誌が既にあるかも。

  • まだ読んでいなかった人気作。いつか読もうと思っていた人気作。それは実に大量にあります。せめて1巻だけでも読んでおこうと、手当り次第に読んでいます。そして人気作というのは、やはり面白いのですね。面白いからこその人気作だと納得します。

    やる気のない部活が顧問の指導により練習を重ね上達し大会に臨む。部活ものの王道だけど、そこに「空気」を持ち込むのが面白くも怖い。
    大会を目指すかどうか。消極的に、でもみんながきっとそう思うだろうからと目指すと挙手する。そんな消極的な態度だったのに、いつの間にか代表に選ばれるために練習を重ね、選ばれなければ涙する。
    何となくみんながそうだからと流される。それを作り出す顧問。でも上達することで楽しくもなる。もし初めの段階で部員たちが大会を目指さず楽しむ部活にしたいと言えば、顧問はどのように対応したのだろうかと気になった。いや、あの場で大会を目指さないなどと言える生徒は少ないと確信していたのだろうか。音楽が好きで音楽に真面目で熱心。それはわかるけどそれ以外がわからない顧問が怖く感じた。

    そして空気だけによらぬ人間関係の綾。人と人がいるからこそ心が動く。男女の恋愛関係だけでなく、同性のふたり、先輩後輩という関係、同年齢の友人、さまざまな関係性が吹奏楽部という括りの中で醸造される。
    それは愛情・友情・尊敬・信頼など既存の言葉だけでは括れない関係かも知れない。その関係性に惹かれる読者が多いのも想像に難くない。こりゃ面白い訳だ。

  • アニメ、映画と見てから小説にも手を出しました。
    アニメから入っているため登場人物の関西弁にまずは慣れるところから。
    標準語に比べて関西弁になることでやっぱりキツく聞こえてしまうのは仕方ないところ。
    そこは慣れてしまえば大丈夫でした。

    ユーフォニアムのリアルな人間関係がとても好きで、小説はそこがさらにわかりやすくてよかったです。
    久美子の性格の悪さがリアルでいい。
    感情移入がとてもしやすいです。

    知り合いがあんまりいない高校で、スタートしたかった
    という久美子の言葉が1番すきです

  • アニメを観てどハマりした。
    多分、自分も学生時代、吹奏楽部だったから。
    アニメと違って、主人公の久美子以外は関西弁なのが最初、違和感があった。でも、楽器を吹く喜び、どんどん上達していく演奏、分かる。
    舞台に上がった瞬間の、なんとも言えない緊張感と、指揮棒が振り下ろされた瞬間から、無我夢中に演奏したあの頃が蘇る。

  • めっちゃ久しぶりに本を読む。

    友人に『リズと青い鳥』という映画を見てどハマりしたという話をしたら、「は???原作を読んで???」と貸してくれたシリーズ本がこれ。ありがたい。



    この物語の内容を、にわかなりにざっくり説明すると、

    私、この物語の主人公、黄前久美子☆
    春から高校生☆友達100人できるかな☆
    ヤバ☆この高校吹奏楽部あんじゃん☆
    私中学の時吹部でユーフォニアムやってて全国目指してたの☆
    この高校の吹部の実力や如何に☆
    …は?www ゲロ下手wwwwww
    でもまぁとりあえずこの弱小吹奏楽部で全国大会で金賞目指すよ☆
    がんばるぞい\(^o^)/


    …ってなる話。
    これはガチファンに殺されるな…(小声)



    アニメ化もされているらしく、原作は後から読む派の私はまずアニメの履修から始めることを決意。


    …まぁ案の定(?)どハマりし、今に至る。


    ついに原作に手を出し始めるわけだが、少しここの書き方を変えてみようと思う。

    今までは1冊読んだら感想を書く、という形にしていたのだが、今回はシリーズ本だしアニメとリンクさせて読みたい感もあるので、小説を読みながらリアルタイムでこの感想を書こうと思う。
    つまりは文章というよりただの感想の箇条書きになる。すごい量になりそう。あれ、ブクログって文字制限あったっけ???
    まぁいいか。


    私のブクログは誰かにオススメするために綺麗に書くとかじゃなくてガチでただの自己満足な記録で書いてるのでネタバレが嫌とかなんかこいつ嫌とかいう人はこの先を読まないことをオススメする。


    あっ、ちなみに私はリズから入ったのもあってのぞみぞ推しです。
    でも最近なかよし川とかいう世界を開拓してしまったせいで「この川っ…深いっ…!!(CV.ぼーちゃん)」みたいな感じになってます。


    とりあえずリアルタイム読み始めるぞ〜!!
    フゥ〜〜!パフパフ!!


    __________________

    ・ダメ金ってなんだろうって思ったけど金賞は全校が次の大会に進めるってわけじゃないのね。
    ・いや〜〜これはブチ切れ案件〜〜!!本気でやってた人に言うセリフじゃねぇ〜〜!!黄前久美子〜〜〜!!
    ・アニメ版だと関西弁じゃなかったよね…?
    ・いるよねー、制服で高校選ぶ人。
    ・待って高坂さん新入生代表なの!?頭いいのね!!頭脳明晰、容姿端麗とはこのことか
    ・名前読み間違えられる気持ち鬼わかるわサファイア〜!
    ・名前すぐ覚えてくれるっていうのもわかるわサファイア〜!
    ・サファイア150cmしかないのかよかわいい
    ・後藤くんーーー!!!!私の推しキャラの1人!!!!寡黙な感じがたまらん
    ・高坂さんつよつよのつよだな
    ・キターー!滝先生!イケメン!!イケボ!!
    ・人前では敬語で二人きりの時はタメ口とかなにその先輩後輩関係…特別感あってすこ
    ・私さー、夏紀の第一印象最悪だったんだよね…。他の人たちが頑張ってる時にあからさまにやる気なさそうにする奴とかまじで嫌い…。帰れよ…。
    ・高坂さんもっとコミュ障っていうか、「私に話しかけないで。スンッ」って感じの子かと思ってた、意外と普通(?)
    ・待って夏紀かわいい、あんなボケッとした感じ出しておきながら楽器ケースにくまさん付けてるの??かわいい
    ・あーそれな!!それほんま腹立つねんな!!!(マネ)
    ・滝先生あんなにがっつり言えるのまじで尊敬だわ…
    ・関西弁の高坂さん違和感満載すぎて草
    ・晴香と後藤音痴だったのか…
    ・「(夏紀の)その視線の先には、先ほどの二年生、優子がいた。」というパワーワード(突然のなかよし川)(パワーワードではない)
    ・なんですか?????意味ありげに笑う夏紀ってなんですか????それもっとkwsk
    ・夏紀がピンクのチューナーってなんか意外だなかわいい
    ・あすかパイセンまじ尊敬
    ・部長の気持ちが痛いほど分かって死ぬわ…
    ・あすかパイセンまじ尊敬(2回目)
    ・誰にでも平等に接してて人望の厚いあすかパイセンまじ尊敬だけどそういう人に限って心の中で何考えてるか分からないし踏み込めない感あるよな、わかる
    ・お祭りガチで行こうとする麗奈かわゆ
    ・あすかは香織とデート…へぇ…
    ・私の密かな推し後藤くんは彼女がいたんですよね、えぇ…はい。
    ・も〜〜〜〜黄前久美子〜〜〜それは嫉妬です〜〜ヤキモチっていうんですよ〜〜〜黄前久美子〜〜〜
    ・まじでこのあがた祭りの時の麗奈の私服死ぬほど可愛いよな、てか普通に麗奈が可愛い()
    ・大吉山登りたい
    ・やっぱポニーテールって正義だよな
    ・まじ展望台のシーンのくみれいよ。ここの絡み最高なんだよな
    ・沈黙が苦ではないと思うことはめちゃくちゃ大事…!!!
    ・あすかの考えが分かりすぎるけどあすかみたいにできないのが面倒くさいんよねぇ、、、
    ・なんて先輩だよ…。メンバーに選ばれなかったのは実力が自分より後輩の方が上だったからでしょ…。その分夏紀の考えはそこら辺好感持てるわ
    ・わりとここの黄前久美子の気持ちが分からんでもないから複雑な気持ち…。
    ・「楽器」や「音楽」は好きだけど「部活」は好きじゃないってなんかね…。分からなくもない節があったりなかったり。
    ・昔の人とは違うと頭では分かっていても昔のことがフラッシュバックして変に身構えたり信用出来ないことってあるよね…。
    ・アニメ版の夏紀の「あーあ、オーディション落ちてしまったー」のところ個人的に好き
    ・美智恵先生苦手だけど嫌いじゃない
    ・麗奈つよい…
    ・「正直言って、心の底からどうでもいいよ。」ここのあすかパイセンもめっちゃ好き!!!!!
    ・負けたかった、ってめちゃくちゃ分かる。もうどうしようもないくらいに無理だと納得できないと、でもと少しの可能性を探ってしまうのよね、諦めが悪いから。



    やべぇ本に没頭しすぎてソロ決め以降感想を書かずに最後まで読み終わってしまった…。
    まぁいいか…。



    はい。
    さっさと次の巻読も。

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著者プロフィール

1992年京都府生まれ。第8回日本ラブストーリー大賞最終候補作に選ばれた『今日、きみと息をする。』が2013年に出版されデビュー。『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』がテレビアニメ化され話題に。同シリーズは映画化、コミカライズなどもされ人気を博している。2020年に『愛されなくても別に』が第37回織田作之助賞の候補に、また2001年には同作で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。その他の著作に、「君と漕ぐ」シリーズ、『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『どうぞ愛をお叫びください』『世界が青くなったら』『嘘つきなふたり』などがある。

「2023年 『愛されなくても別に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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