いつまでもショパン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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本棚登録 : 2135
レビュー : 200
  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800220431

作品紹介・あらすじ

難聴を患いながらも、ショパン・コンクールに出場するため、ポーランドに向かったピアニスト・岬洋介。しかし、コンクール会場で刑事が何者かに殺害され、遺体の手の指十本がすべて切り取られるという奇怪な事件に遭遇する。さらには会場周辺でテロが頻発し、世界的テロリスト・通称"ピアニスト"がワルシャワに潜伏しているという情報を得る。岬は、鋭い洞察力で殺害現場を検証していく!

感想・レビュー・書評

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  • テロを起こすこととピアノを演奏すること。どちらも人間の手による行為でありながら、それぞれが人々に与えるものは絶望と希望という相反する深い感情。絶望は憎しみや悲しみ、怒りを生み出し、希望は慈しみや感動、力強さを生み出す。絶望の縁からは何も生まれない。幾度となくそう思ってしまう瞬間がある。けれども、夜の闇が深いほど数え切れない星の瞬きが綺麗に見えるように、どれだけ深い絶望に飲み込まれたとしても希望は容易く消えることはないのだと、その度に一筋の光に助けられるのだ。人だけは闇の中で消えそうで消えない火を灯し続けることが出来る。

    ピアノから離れられなくなるピアニストたちは、ある者は何か大切なものを見失ってしまい、そしてある者は何か大切なものを思い出させてくれる。その旋律は時に戦場で奇跡となってキラキラと降り注ぐことさえある。例えお伽話のようなものだとしても、絶望の果ての痛みから生み出された音楽だからこそ、傷つけ殺し合う人間たちの上に尊い光となって射し込むこととなる。音楽の力だけでテロや戦争はなくならない。そんなことは分かってるのだけれど、音楽には人間の心を取り戻す力があることは信じてたい。信じている。

  • 岬シリーズ。岬がショパンコンクールに出場するにあったって、ポーランドにゆく。そこで殺人事件に遭遇する。通称”ピアニスト”と呼ばれるテロリストが犯人だという。岬はコンクールに臨みながらも犯人を探り当てる。
    ショパンコンクールだけあって、犯人探しよりも、ショパン、ポーランドについて、何よりも音楽の解説が多く、私個人はすっかり酔えました(お酒なしでね)。いや、それだけでなく、ヤンの生い立ち、苦しみ、そしてショパン、岬の苦しみ加わり物語が熱くなっています、マリーの悲しみも。読むのはあっという間でした(どっぷりこの小説の世界に浸りました)。ミステリとのバランスはどうかと思いますが、岬のノクターンとかそれぞれの成長とか悲しみとか、音楽に乗せられ私はシリーズの中では一番かなあ、酔った度合いで。

  • 岬洋介シリーズ。
    ポーランドで開催されるショパン・コンクールでの話。
    コンクールのすぐそばにはテロ事件の恐怖もあり…。
    今回の話の中心はヤン・ステファンス。
    彼のコンクール参加と周囲の出来事を経て心の成長を綴ったかたちになってました。
    人の心に触れる音楽。成績よりもっと偉大なもの。
    それを最後に教えられた気がしました。
    岬洋介は主人公というよりは、それを支える名脇役。
    今回もそれを現した作品でした。

  • ショパン・コンクールと天才ピアニスト・岬洋介、そしてテロリスト…

    絡み合う糸がほどかれた時、見えてくるものとは果たして…?

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    突発性難聴というピアニストにとっては致命的な病を抱えながら、岬洋介はショパン・コンクール出場のために、ポーランドに降り立った。

    一方、若きポーランドのピアニスト・ヤンも、父親からのゆがんだ重圧に苦しみながら、ショパン・コンクールへ臨んでいた。

    しかしコンクール会場で、残忍な殺人事件が発生。
    会場周辺でテロも頻発し、さらには“ピアニスト”なるテロリストもポーランドに潜伏しているという情報が入る。

    “ピアニスト”の真の目的とは…?
    そして岬、ヤンが奏でるピアノの行く先とは…?

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ピアニスト・岬洋介シリーズの1冊ですが、今回も例によって岬自身はオーラのある脇役であり、話はポーランドのピアニスト・ヤン目線で進んでいきます。

    ピアノ演奏が文字で表現できていることが不思議でならないのですが、しかし岬洋介シリーズも4冊目のため、若干ピアノ演奏時の文章に悪い意味で慣れてしまいました。

    ショパン・コンクールを通してのヤンの成長がメインでもあり、推理ものとして読んでしまうと、物足りなさを感じます。
    その一方で、この物語は無差別なテロの残虐性や、そんな恐怖の環境の中で暮らさざるを得ない人々のやるせなさに触れられる小説でもあります。

    長編「いつまでもショパン」の他、巻末には短編「間奏曲」も収録されています。
    「間奏曲」の時期は、長編「いつまでもショパン」の直前にあたりますが、既刊「おやすみラフマニノフ」の登場人物がメインなので、そちらを読んでからの方が、より楽しめます。

    このシリーズはどこから読んでもよいお話にはなっているものの、岬洋介の生い立ちを順番に知っていくほうが、物語の根底に流れるものも含めて楽しめます。
    第一作の「さよならドビュッシー」から「おやすみラフマニノフ」、「いつまでもショパン」の順番で読まれることをオススメします。

  • この話の主体はもちろんショパン。ショパンがポーランド出身だったことも知らなかった私にしてみれば、知らないことがいっぱいだった。
    日本から現れた、盲目で絶対音感を持つピアニスト。あれ、辻井さんと何かがかぶる。

    英雄ポロネーズとか、ノクターン、スケルツォなど、ものすごく専門的なタッチの説明とかその音楽的技巧、作曲された時期の説明など、かなり描かれていて勉強になりました。YOUTUBEで聞きながら読んだ。
    ところどころにラフマニノフの後継者やドビュッシーの後継者の話がちらほらと。
    ヤンが親からの呪縛に気付き、あがき、テロの事件や他の参加者の音楽を聴いて、殻を破るまでの過程と、テロ事件と刑事事件の犯人捜しのミステリが混じりあってたけど、最後の岬のノクターンで終わるとことか、もうやられた!って感じ。

  • 第一作のキャラクターが出てきたときはちょっと感動した。岬さんは相変わらずのキャラクター。でも少し内面が見えた気がしてちょっと好きになった。

  • ショパンコンクールに出場するためにポーランドに向かった岬は、コンクール会場で刑事が殺されるという事件に遭遇する。
    事件を操っているのは、「ピアニスト」と呼ばれる世界的テロリストらしい。
    持ち前の鋭い推理力で、「ピアニスト」の正体を突き止めようとする岬は…。

    前作と同様、ピアノ演奏シーンの迫力ある描写が圧巻。
    ショパンコンクールのファイナリストたちのピアノ演奏描写が延々と続くのですが、それぞれの個性的な演奏を活字に起こすという難易度の高い作業を奇跡的に成功させており、飽きることなく読んでしまいました。

    舞台全体に等しく配られる視線が全能感を感じさせてくれるので、とっても心地よいのです。
    演奏を四方八方からあまたず眺め尽くした気分になり、読み終える頃にはそれだけでおなかいっぱい、ミステリ部分がどうでもよくなるくらいでした。

    スピード感あふれるスリリングな展開で、最後まで飽きさせず読ませてしまう筆力は素晴らしい。
    お見事でした。

  • 「ドビュッシー」「ラフマニノフ」以上に、音楽描写が多く、その方面に暗い身としては、言葉を理解できないながらも、いつの間にか読み進んでいた。
    唐突に出てきたアフガニスタンの戦場シーンに違和感を覚えたが、最終章で納得。現実にはあり得ない、けれどあり得るか、そんな期待感を持たせてしまうのも、それまでの演奏シーンの説得力か。

  • ミステリ要素よりも何よりも、戦争の空しさや、芸術とは何かという問いかけを突き付けられているようで、考えさせられる1冊だ。『さよならドビュッシー』の時から思っていたことだが、まず音楽の描写に圧倒される。解説でピアニストの清塚信也氏が書いている「細か過ぎるほどの情報で楽曲解説」「その曲を一流のピアニストが引く時、どこに気をつけるか、どういうところがいやらしく難しいものかをも情報に載せている」「音楽解説のテンポはとても速い」という部分に思わず首肯した。本書を読んでいる間ずっと小気味よいピアノの調べが聞こえているかのような錯覚に陥るほどに、繊細で美しい表現なのだ。
    ラスト、突発性難聴のためにミスをした後で岬洋介がマリーのために弾いたノクターンの切なさは、この曲を知らない人間にも伝わるように書かれている。これも清塚氏の言葉を借りれば、「言葉と言う本来音楽とはシンクロ出来ないはずのツールを使って表現しきってしまっている」。そのためにテロリストが攻撃を止めた、というのはいかにもフィクションで、下手な小説に書かれていたら鼻白むところだ。しかし、本書においてはそのくだりも十分に活きている。実際には聴いていないのに、あの演奏ならばさもありなん、と思える。プロの小説家の書く文章とはこういうものだ、というのを思い知らされたようだ。

  • 物語は、正直、荒唐無稽に思うが、ウッカリ騙されてしまった。

    が、音楽を文字での表現には、本当に舌を巻く。目で追っているはずなのに、耳から聞こえてくるように感じていた。

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著者プロフィール

作家。
1961年生まれ、岐阜県出身。『さよならドビュッシー』にて第8回「このミステリーがすごい!」大賞で大賞を受賞し、2010年に作家デビュー。著書に、『護られなかった者たちへ』『総理にされた男』『連続殺人鬼カエル男』『贖罪の奏鳴曲』『騒がしい楽園』『帝都地下迷宮』『夜がどれほど暗くても』『合唱 岬洋介の帰還』『カインの傲慢』『ヒポクラテスの試練』『毒島刑事最後の事件』『テロリストの家』『隣はシリアルキラー』『銀鈴探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『復讐の協奏曲』ほか多数。

「2020年 『境界線』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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