いつまでもショパン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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本棚登録 : 1701
レビュー : 170
  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800220431

作品紹介・あらすじ

難聴を患いながらも、ショパン・コンクールに出場するため、ポーランドに向かったピアニスト・岬洋介。しかし、コンクール会場で刑事が何者かに殺害され、遺体の手の指十本がすべて切り取られるという奇怪な事件に遭遇する。さらには会場周辺でテロが頻発し、世界的テロリスト・通称"ピアニスト"がワルシャワに潜伏しているという情報を得る。岬は、鋭い洞察力で殺害現場を検証していく!

感想・レビュー・書評

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  • テロを起こすこととピアノを演奏すること。どちらも人間の手による行為でありながら、それぞれが人々に与えるものは絶望と希望という相反する深い感情。絶望は憎しみや悲しみ、怒りを生み出し、希望は慈しみや感動、力強さを生み出す。絶望の縁からは何も生まれない。幾度となくそう思ってしまう瞬間がある。けれども、夜の闇が深いほど数え切れない星の瞬きが綺麗に見えるように、どれだけ深い絶望に飲み込まれたとしても希望は容易く消えることはないのだと、その度に一筋の光に助けられるのだ。人だけは闇の中で消えそうで消えない火を灯し続けることが出来る。

    ピアノから離れられなくなるピアニストたちは、ある者は何か大切なものを見失ってしまい、そしてある者は何か大切なものを思い出させてくれる。その旋律は時に戦場で奇跡となってキラキラと降り注ぐことさえある。例えお伽話のようなものだとしても、絶望の果ての痛みから生み出された音楽だからこそ、傷つけ殺し合う人間たちの上に尊い光となって射し込むこととなる。音楽の力だけでテロや戦争はなくならない。そんなことは分かってるのだけれど、音楽には人間の心を取り戻す力があることは信じてたい。信じている。

  • 岬シリーズ。岬がショパンコンクールに出場するにあったって、ポーランドにゆく。そこで殺人事件に遭遇する。通称”ピアニスト”と呼ばれるテロリストが犯人だという。岬はコンクールに臨みながらも犯人を探り当てる。
    ショパンコンクールだけあって、犯人探しよりも、ショパン、ポーランドについて、何よりも音楽の解説が多く、私個人はすっかり酔えました(お酒なしでね)。いや、それだけでなく、ヤンの生い立ち、苦しみ、そしてショパン、岬の苦しみ加わり物語が熱くなっています、マリーの悲しみも。読むのはあっという間でした(どっぷりこの小説の世界に浸りました)。ミステリとのバランスはどうかと思いますが、岬のノクターンとかそれぞれの成長とか悲しみとか、音楽に乗せられ私はシリーズの中では一番かなあ、酔った度合いで。

  • この話の主体はもちろんショパン。ショパンがポーランド出身だったことも知らなかった私にしてみれば、知らないことがいっぱいだった。
    日本から現れた、盲目で絶対音感を持つピアニスト。あれ、辻井さんと何かがかぶる。

    英雄ポロネーズとか、ノクターン、スケルツォなど、ものすごく専門的なタッチの説明とかその音楽的技巧、作曲された時期の説明など、かなり描かれていて勉強になりました。YOUTUBEで聞きながら読んだ。
    ところどころにラフマニノフの後継者やドビュッシーの後継者の話がちらほらと。
    ヤンが親からの呪縛に気付き、あがき、テロの事件や他の参加者の音楽を聴いて、殻を破るまでの過程と、テロ事件と刑事事件の犯人捜しのミステリが混じりあってたけど、最後の岬のノクターンで終わるとことか、もうやられた!って感じ。

  • ショパンコンクールに出場するためにポーランドに向かった岬は、コンクール会場で刑事が殺されるという事件に遭遇する。
    事件を操っているのは、「ピアニスト」と呼ばれる世界的テロリストらしい。
    持ち前の鋭い推理力で、「ピアニスト」の正体を突き止めようとする岬は…。

    前作と同様、ピアノ演奏シーンの迫力ある描写が圧巻。
    ショパンコンクールのファイナリストたちのピアノ演奏描写が延々と続くのですが、それぞれの個性的な演奏を活字に起こすという難易度の高い作業を奇跡的に成功させており、飽きることなく読んでしまいました。

    舞台全体に等しく配られる視線が全能感を感じさせてくれるので、とっても心地よいのです。
    演奏を四方八方からあまたず眺め尽くした気分になり、読み終える頃にはそれだけでおなかいっぱい、ミステリ部分がどうでもよくなるくらいでした。

    スピード感あふれるスリリングな展開で、最後まで飽きさせず読ませてしまう筆力は素晴らしい。
    お見事でした。

  • 「ドビュッシー」「ラフマニノフ」以上に、音楽描写が多く、その方面に暗い身としては、言葉を理解できないながらも、いつの間にか読み進んでいた。
    唐突に出てきたアフガニスタンの戦場シーンに違和感を覚えたが、最終章で納得。現実にはあり得ない、けれどあり得るか、そんな期待感を持たせてしまうのも、それまでの演奏シーンの説得力か。

  • ミステリ要素よりも何よりも、戦争の空しさや、芸術とは何かという問いかけを突き付けられているようで、考えさせられる1冊だ。『さよならドビュッシー』の時から思っていたことだが、まず音楽の描写に圧倒される。解説でピアニストの清塚信也氏が書いている「細か過ぎるほどの情報で楽曲解説」「その曲を一流のピアニストが引く時、どこに気をつけるか、どういうところがいやらしく難しいものかをも情報に載せている」「音楽解説のテンポはとても速い」という部分に思わず首肯した。本書を読んでいる間ずっと小気味よいピアノの調べが聞こえているかのような錯覚に陥るほどに、繊細で美しい表現なのだ。
    ラスト、突発性難聴のためにミスをした後で岬洋介がマリーのために弾いたノクターンの切なさは、この曲を知らない人間にも伝わるように書かれている。これも清塚氏の言葉を借りれば、「言葉と言う本来音楽とはシンクロ出来ないはずのツールを使って表現しきってしまっている」。そのためにテロリストが攻撃を止めた、というのはいかにもフィクションで、下手な小説に書かれていたら鼻白むところだ。しかし、本書においてはそのくだりも十分に活きている。実際には聴いていないのに、あの演奏ならばさもありなん、と思える。プロの小説家の書く文章とはこういうものだ、というのを思い知らされたようだ。

  • 物語は、正直、荒唐無稽に思うが、ウッカリ騙されてしまった。

    が、音楽を文字での表現には、本当に舌を巻く。目で追っているはずなのに、耳から聞こえてくるように感じていた。

  • 天才的なピアニスト・岬洋介氏、今回の舞台は、はるか東欧の国、ポーランド。
    難聴を患いながらも岬氏が向かったのは、ポーランドのショパン・コンクール。

    その権威あるコンクールで優勝優勝すべく、ロシアやフランス、アメリカなどから、強力なライバルたちが集う。

    しかし、悲惨なテロが頻発する市内で、なんとコンクール会場で、ポーランド人の刑事が殺害され、10本の指が全て持ち去られた。
    いったい、誰が、なんの目的で?

    そして、世界的なテロリスト・通称『ピアニスト』がワルシャワに潜伏しているとの情報が...
    果たして『ピアニスト』は、今回のコンクールの関係者なのか?

    今回の作品も、音楽シーン満載で、本職(ピアニスト)の方の解説も感心することしかり。いったい著者の中山七里氏は、どうやってこうした素晴らしい表現が可能なのかしら?

    最後の主人公ヤン氏と岬氏の別れのシーンに、涙が出て来ます。また、『おやすみラフマニノフ』とのリンクも、最高です。

  • 月日が流れると共に喜びや愛しみを知っていく一方で、何もかもが指の隙間から零れ落ちていくように絶望を重ねて生きなければならない者もいました。目に映る世界は何と醜悪で残酷で虚しいものか。そんな根源的な哀しみに訴えかけることが出来るのは、色でも物でもなく、音のように『感』じることなのかもしれない。それも直接的ではなく、ただ ほのかに光っているような静謐さで…。たった一曲の鎮静曲だった。肌の色、言語が違えど、流した涙の意味こそ同じであったと信じたい。

  • 文庫本には〜間奏曲〜が付いていた‼︎得した気分‼︎

    装丁。あの公園か、しら…マリーちゃん。

    ノクターン聴きましたぁ♪

    ショパン・コンクールと、テロ。
    そして…

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著者プロフィール

中山 七里 (なかやま しちり)
1961年生まれ、岐阜県出身。男性。幼少の頃から読書が趣味で、高校時代から執筆を開始。花園大学文学部国文学科在学中に江戸川乱歩賞に応募したこともあった。
就職後は執筆から離れていたが、島田荘司を生で見た体験から執筆活動を再開。2009年、第8回『このミステリーがすごい!』大賞で『さよならドビュッシー』と『災厄の季節』の2作が最終選考にダブルエントリーされ、前者で大賞を獲得して48歳で小説家デビュー。後者も、「読みたい!」との声が続出したため、『連続殺人鬼カエル男』と改題し、2011年に文庫本として出版される事となった。
代表作に『さよならドビュッシー』などの「岬洋介シリーズ」、『贖罪の奏鳴曲』にはじまる「御子柴礼司シリーズ」。多くの作品が映画・テレビドラマ化されている。

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