夜よ鼠たちのために (宝島社文庫)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800231734

作品紹介・あらすじ

脅迫電話に呼び出された医師とその娘婿が、白衣を着せられ、首に針金を巻きつけられた奇妙な姿で遺体となって発見された。なぜこんな姿で殺されたのか、犯人の目的は一体何なのか…?深い情念と、超絶技巧。意外な真相が胸を打つ、サスペンス・ミステリーの傑作9編を収録。『このミステリーがすごい!2014年版』の「復刊希望!幻の名作ベストテン」にて1位に輝いた、幻の名作がついに復刊!

感想・レビュー・書評

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  • 9つのサスペンスミステリ短編集。

    とんでもない1冊に出会ってしまった。
    読後率直な感想だ。

    本作品は、過去発刊された著者の短編作品から、強く復刻が希望された作品が集まった1冊であることを読後に知り、深く納得に至る。

    兎角文章が美しい。そしてミステリとしての物語が面白い。叙述トリックの連続だったが、飽き性の私が不思議と飽きなかった。理由は明確だ。各話の設定が魅力的で、ぐいぐい惹き込まれるのである。

    短編集だが一編一編が重く、読むのに多分の時間を要した。

    個人的に、自宅で殺して庭に埋めた妻が別の場所でも殺される『二つの顔』そして、子供心に芽生えた根深い憎悪が描かれた表題作の『夜よ鼠たちのために』は特に傑作であった。

    全て1980年代初頭に書かれた作品でありながら、ミステリとしての本質的なものは古びていない。
    現代作品では当たり前のように登場する【携帯電話】などという名詞が出てこなくても違和感はない。
    これぞまさに風格と言えよう。

    連城三紀彦。
    お恥ずかしながら本作で初めて知った著者。

    2013年10月13日逝去されておられるのだが、私が本作品を積読棚から手に取り読みはじめたのが10月13日だったことは偶然か、はたまた必然だったのか。

    サスペンス、ミステリ、叙述トリックが好き方へ、胸を張ってお勧めしたい1冊である。

    • akodamさん
      shukawabestさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます。

      私のレビューに共感いただけたようでしたら、嬉しいです。
      ...
      shukawabestさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます。

      私のレビューに共感いただけたようでしたら、嬉しいです。

      先般、土瓶さん、地球っこさんよりコメントでお勧めいただいた「戻り川心中」「恋文、私の叔父さん」も入手、私の本棚で堂々かつ太々しく鎮座しております。

      また、読了しましたら拙くもレビューしたいと思っております^ ^
      2021/12/11
    • M.Kさん
      私も読んでみます
      私も読んでみます
      2022/01/23
    • akodamさん
      M.Kさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      私もキッカケはブクログのレビューでした。
      とても綺麗な文脈と秀逸なミステリに魅了さ...
      M.Kさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      私もキッカケはブクログのレビューでした。
      とても綺麗な文脈と秀逸なミステリに魅了されました。

      是非ご一読ください。
      今後ともよろしくお願いします^ ^
      2022/01/23
  • いぶし銀の推理小説!全9作品、様々なテーマ&重厚感たっぷりのミステリー短編集 #夜よ鼠たちのために

    ■きっと読みたくなるレビュー
    社会派、サスペンス、恋愛、ハードボイルドなどバラエティに富んだ短編9作が綴られたミステリー。

    80年代前半の作品とのことで、社会派から新本格の流れになりつつあるミステリー界隈。全ての短編が筆力と重厚感たっぷりな内容で、どの作品も短編なのに何重にも仕掛けが施されていてビビる。じっくりと読ませていただきました。

    ■短編ごとの感想文
    ・二つの顔
    妻を自ら殺害したにも関わらず、なぜか別の現場で妻の死体が見つかる。
    男の苦悩と悲しさが鋭く迫るお手本のようなミステリー。人間の身勝手さが胸糞悪くて最高です。

    ・過去からの声
    誘拐もの、若い刑事が警察を退職する際の手記によって語られる。
    短編とは思えない、映画にもできそうな深みのある仕掛けにびっくり。

    ・化石の鍵
    離婚と家族がテーマのミステリー。
    美しく文芸作品としても品質が高い、親として大切なことを気付かせてくれる作品。

    ・奇妙な依頼
    私立探偵がおかしな浮気調査に巻き込まれる物語。
    あの古典的名作のトリックが基盤になってそう。二重三重に、かつ現代的にアレンジできているところがスゴイ。しかしこんな依頼、絶対嫌だなぁ。

    ・夜よ鼠たちのために
    医師と施設で育った少年たちの間で起こった真相は?
    動機がいい意味で酷く、仕掛けも油断ならない傑作。
    幼いときの記憶や思い出って、なかなか消えないですよね。

    ・二重生活
    夫婦、不倫をテーマに人間の業が深く描かれて、素晴らしく下品な作品。
    でも私としては大好きで、さらにこの真相はシンプルながらも強烈でした。

    ・代役
    人気俳優が自分の影武者に殺人の代役を立てるサスペンスミステリー。
    美しくも哀れに人が破滅していく様子が好き。

    ・ベイシティに死す
    昔ながらのハードボイルド、暴力団と男と女。登場人物が渋くてカッコイイ!
    これ絶対映画で見たいやつ。

    ・ひらかれた闇
    昭和時代の不良たちと熱血女性教師の物語。他の作品と違ったテイスト。
    全編通して熱く、若く、クサいところがイイ、懐かしいこの感じ。

    ■推しポイント
    趣味で手品を嗜んでいるんですが、この世界も流行り廃りがありますし、またTPOに合わせて、いろんな見せ方やネタがあります。

    本作品は円熟された技術が詰め込まれたステージマジックショーを見せてもらったようで、やっぱり推理小説っていいな!と感じましたね。

    こんな素敵な作品を残してくれた先生に、お礼を言いたくなりました。ありがとうございました。

  • akodamさんのレビューで知った連城三紀彦さん作品、二作目。
    「このミステリーがすごい! 2014年版」の「復刻希望! 幻の名作ベストテン」にて第1位作品。

    9編の短編集。 
    とにかくトリックが凄い!
    まったく予想できない。
    必ずドンデーンと返される。
    トリック好きにお勧めできる一冊。
     
    「ベイ・シティに死す」が一番好きかな。
    トリック自体はそれほどでもないけど雰囲気が良い。せつない系に弱いです。
    「ひらかれた闇」は何か変? イマイチ。

    • akodamさん
      土瓶さん
      こんにちは。ご無沙汰しておりました。
      私はもはや連城三紀彦コレクターと化しております。
      先輩土瓶さんにお薦めいただいた「戻り川心中...
      土瓶さん
      こんにちは。ご無沙汰しておりました。
      私はもはや連城三紀彦コレクターと化しております。
      先輩土瓶さんにお薦めいただいた「戻り川心中」も入手済みなので、読みたい頃合いがきたら熟読しようと思います。
      2022/03/26
    • 土瓶さん
      akodamさん。
      お、お、お、おひさしぶりでーす!
      先輩などとお止めください。
      勧めたり勧められたりが読書の世界ではありませんか。
      憶えて...
      akodamさん。
      お、お、お、おひさしぶりでーす!
      先輩などとお止めください。
      勧めたり勧められたりが読書の世界ではありませんか。
      憶えててもらってただけでも光栄です。
      また、気楽にちょいちょいと戻って来てくださいな。
      2022/03/26
  • いやぁ~、ホンマ生きているうちに読めて良かったぁぁ~(笑)
    聞きしに勝る傑作とはこのこと!
    ( kwosaさんご紹介ありがとうー!)

    信じ込まされていた物語の構図を一気に反転する、
    切れ味鋭いドンデン返しの数々に
    何度ページをめくる手が震えたことか…。
    (しかも反転に次ぐ反転の嵐やし!)


    本書は長らく復刊が待たれていた、
    先の読めない展開と意外な真相が胸を打つ
    9編からなるサスペンス・ミステリーの短編集です。

    恥ずかしながら著者の連城さんに関しては
    直木賞を受賞した『恋文』のイメージから
    純文学を書く作家だと勝手に思い込んでいたけど、
    ミステリーの大御所でもあられたんですね(汗)

    収録されている短編はすべて
    切れ味鮮やかな傑作揃いだけど、
    中でも僕が惹かれたのは、

    わずか二年で退職し郷里に帰った
    元刑事が語る
    一年前の誘拐事件の驚愕の真相とは…
    『過去からの声』、

    夫婦双方から別々に浮気調査の依頼を受けた探偵が巻き込まれた
    殺人事件。
    何度となく反転するストーリーに悶絶しまくった(笑)
    『奇妙な依頼』、

    唯一の心の友であった鼠を無惨に殺された孤独な男の復讐劇を
    壮絶技巧で描いた哀切極まる傑作
    『夜よ鼠たちのために』、

    妻の殺害を企む人気俳優。自分とそっくりの男でアリバイを偽装した完全犯罪の行方は…。
    漫画「ドラえもん」で影がのび太を乗っ取るエピソードを彷彿とさせる驚きの展開に指は震え、
    しばし放心状態にさせられた(汗)
    『代役』、

    可愛がっていた弟分と愛する女の共謀により
    刑務所に入れられた男の悲しき復讐劇を
    ハードボイルドの香り高く描いた
    傑作!
    『ベイ・シティに死す』、

    かな~。


    冒頭でも述べたように
    とにかく次から次へと飛び出す超絶技巧のオンパレードに
    もうひれ伏すしかないんやけど(笑)、

    丹念に丹念に積み重ねていく登場人物たちの心理描写と
    人間の業の深さや哀しみを描いた
    流麗にしてメランコリックな文章は
    ミステリーとしての驚きを越えるほどに、
    読み終わった後に深い余韻をもたらせてくれる。
    ( また限界まで贅肉を削ぎ落とした文体もスゴいし、だからこそ読者を選ばない「読みやすさ」が生まれるのです)。

    しかもすべての短編が
    それぞれ違ったテイストでいて長編並みの密度を持ち、
    尚且つこの完成度を保っているのは
    もうコレは奇跡に等しいでしょ~(笑)

    なお、本書は『このミステリーがすごい!2014年度版』の
    「復刊希望!幻の名作ベストテン」の第1位に選出されています。

    ミステリー好きなら
    絶対に狂喜乱舞する作品だし、
    読みやすくテンポのいい文体なので
    ミステリー初心者や
    意外なドンデン返しのある物語をお探しのアナタにも
    強く強くオススメします。

    • kwosaさん
      円軌道の外さん

      こちらこそありがとうございます。
      自分が読んで「よかったー」「おもしろかったー」って思った本を読んでくれて共感しても...
      円軌道の外さん

      こちらこそありがとうございます。
      自分が読んで「よかったー」「おもしろかったー」って思った本を読んでくれて共感してもらえるのはホントに嬉しいことです。
      読書は一人で完結するものですが、読後にさらにこうやって同好の士と繋がれるのは幸せですね。

      表題作はもちろんのこと、傑作ぞろいの中でも『奇妙な依頼』『ベイ・シティに死す』はよかったですよね。
      僕は『化石の鍵』も好きでしたよ。
      読後に「ああ」と膝を打つタイトルの詩的な表現と、ミステリではどうしても作りものめいてしまう密室の謎が、解明とともに人間的な物語の主題に繋がる感じが痺れてやみません。

      連城ミステリは単にトリックやギミックに終わらず、ドラマと不可分なところがたまらないんですよね。
      最近読んだ『小さな異邦人』も面白かったですよ。
      なかでも『無人駅』『冬薔薇』には震え、幻惑されました。
      2014/11/22
    • 円軌道の外さん

      kwosaさん、またまたありがとうございます!

      確かにそうですよね!
      読書も音楽も本来個人レベルで楽しむものだけど、
      自分が受...

      kwosaさん、またまたありがとうございます!

      確かにそうですよね!
      読書も音楽も本来個人レベルで楽しむものだけど、
      自分が受けた感動や驚きを
      誰かと分かち合う喜びも捨てがたいし、
      そうすることでまた新たな視点で物事を見れるようになりますよね(^^)
      ああ~、そういう考え方もあったんやぁ~って(笑)
      じゃあ今度はそれを頭に置いて
      再読してみようとか(笑) 

      kwosaさんが言うように、
      連城ミステリは単にトリックだけに終わらず
      人間がちゃんと描かれてるところに僕も惹かれました。
      道尾秀介氏が『本格ミステリーは人間を書くのに最も有効な手段だ』って昔何かのインタビュー出言ってたけど、
      まさにそれ(笑)

      読み終わったあとに
      『いやぁ~、スゴいトリックだった!』と思うと同時に、
      『そして、いい物語だった!』って思わせてくれる連城さんの作品は、
      まさに名作の条件を満たしてますよね。

      『小さな異邦人』ご紹介ありがとうございます!
      読みたいリストにしかとメモりました!(笑)(^^)
      これも短編集なんかな?


      2015/04/14
  • 1980年代の作品なので、昭和の香り漂う世界観さえ気にしなければ、推理ミステリーとしての意外な展開を、十二分に堪能できる傑作集です。

    その意外性は、終盤にきて、おもいきりひっくり返されるものが多く、内容も多彩で、私的には、そうきたかと驚かされるものばかりで、新鮮でした。

    また、推理ミステリーだが、物語が情感あふれる濃い内容で、むしろ、こっちがメインなのではと思うくらいの素晴らしさもありました。

    それは、「夜よ鼠たちのために」の犯人の非道さ、「化石の鍵」の娘の愛情、「二重生活」の女性の哀愁、「ひらかれた闇」の不良少年少女たちへの優しさ等、内容も多岐に渡っております。

    その中でも、特に気になったのは、「ベイ・シティに死す」の、ヤクザ者たちの愛の交錯で、倫理的には理解出来ないのだろうけれど、感情的には理解出来るものがあったんですよね。
    おそらく、昭和のアウトロー的な哀愁に、共感出来た感じに似ていると思います。

  • 短編全て見事な起承転結があり、長編に出来る仕上がり。
    ただ人間関係が複雑になりすぎて、2、3度くらい混乱ししました。

  • 幻の名作読了。
    昭和が香る叙情的情景、シックなトリック。短編集とはいえ、どの作品も数行で世界観に入れますね。
    夜よ鼠たちのためには、読み直しました。
    昭和の松本清張から現代の伊坂幸太郎他のミステリまでの系譜を繋げてきた作品であり作者。
    皆さんの高評価に納得。

  • こうだと思ってたら違う! の連チャン。「代役」が一番おもしろかったです。読者も、主人公も「ちがうんかーい」ってなるところ。
    最後の話だけ世界観が全然違います。40年ぐらい前か、スカートズルズルの不良少女たちが木刀なんか持ってつるむ、一連のドラマのようでした。

  • フォロワーさんの本棚、感想に惹かれて手に取りました。堪能できました。ありがとうございました。

    ①二つの顔
    死んだ妻が発見されたとの刑事からの電話。そんなはずは。妻は私が・・・。
    ②過去からの声
    僕はたった2年で尊敬する岩さんと刑事という職業に背を向けた。それは・・・。
    ③化石の鍵
    蝶が飛んでいる、呟こうとした半身不随の少女は声が出なかった。その瞬間、首を締め付けられていたのだ。
    ④奇妙な依頼
    品田に妻の浮気調査をしてきた男。しかし、簡単に尾行はばれて、逆に妻から男の浮気調査を依頼される。
    ⑤夜よ鼠たちのために
    8歳のとき、鼠の「信子」を殺したダボに刃を突き立てたオレは、妻の「信子」を殺したヤツらに再び刃を・・・。
    ⑥二重生活
    「どうして?今夜はゆっくりできるんじゃないの」牧子は16歳年上の修平の背中に声をかけた。
    ⑦代役
    人気俳優の支倉はボロの作業着を纏い、妻を殺すため新幹線に乗った。すべてはあの男のせい。
    ⑧ベイ・シティに死す
    6年の刑期を終え、自分を裏切った女の店に向かう。女と舎弟に復讐するために。
    ⑨ひらかれた闇
    職員室の麻沙に退学した女生徒から電話。ふとよぎる殺人の予感。そして予感は外れない。

    メロドラマの印象があって避けていた作家。本書を読みながら「落葉樹」や「絹婚式」を朗読で聴いたが、夫婦の愛憎劇を無意識に嗅ぎ取り敬遠していたかと納得。

    小説家というより、読者を欺くことに全てを賭す職人のよう。①〜⑦までの「覆えされ感」が凄い。

    40日ぶりの小説と向き合う時間。いい時間でした。ありがとうございました。

  • 人間の内面、心の奥底を炙り出すようなミステリー、短編集。
    発表されたのは昭和59年。しかし、読みやすい。この時代の雰囲気と文章が当たり前だけどあっていて、昭和の空気感がとてもいい味を出している。今読むと、懐かしさと新鮮さを感じる。

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著者プロフィール

連城三紀彦
一九四八年愛知県生まれ。早稲田大学卒業。七八年に『変調二人羽織』で「幻影城」新人賞に入選しデビュー。八一年『戻り川心中』で日本推理作家協会賞、八四年『宵待草夜情』で吉川英治文学新人賞、同年『恋文』で直木賞を受賞。九六年には『隠れ菊』で柴田錬三郎賞を受賞。二〇一三年十月死去。一四年、日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞。

「2022年 『黒真珠 恋愛推理レアコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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