いなくなった私へ (『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
3.55
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本棚登録 : 343
感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800237293

作品紹介・あらすじ

人気絶頂のミュージシャン・梨乃は目を覚ますと、誰にも自分と認識されなくなっていた。さらに自身の自殺報道を目にした梨乃は自らの死の真相、そして蘇った理由を探りはじめるが…。2015年第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ユニークな設定のミステリー。
    各章、二つの部分で構成されている。
    ひとつは20世紀初頭に書かれたイギリス人の手記。
    当時イギリス領だったインドに出かけた探検家。
    魔力を持つ泉に遭遇し、現地の人々と交流する。

    二つ目は、現在の日本で起こる不思議な現象。
    人気絶頂の女性タレントが
    ある日、身に覚えのない場所で目覚める。
    すると、彼女はかつての自分ではなくなっている。
    確かにここにいるのに
    誰も彼女だと認識してくれない。
    どういうこと?

    過去のイギリス人の手記とこの不思議現象。
    二つに関連があるだろうことは予測可能。
    でも、どんなふうに?
    その謎ときに興味津々。

    現在の世界の舞台は、華やかな芸能界。
    タレントだった女性の周りにもうひとり、
    同じ境遇の小学生の男の子が現れる。
    ふたりの周りには、善意の人たちが。
    バイト先の上司や大学のサークル仲間。
    人と人の絆の強さが彼女と男の子を救い
    最後はほんわか温かい雰囲気で終わる。
    読後感は爽やかといってもいいかな。

    でも…。
    何も解決されていない、と思ってしまった。
    途中、病院で治療を受けるシーンがあるけれど
    保険証はどうしたのかな? 戸籍は?
    そしてなにより、この主人公たちの今後は?
    こんなに恐ろしいことはないと思うのだけど。

  • 4.7
    このミステリーが面白い、の優秀賞を獲った作品とのこと。
    この本を読んだきっかけはテレビでこの作者の最新作「あの日の交換日記」を紹介していて、著書を検索していたらこの作品に行き当たりました。
    面白かった、展開の仕方も良く、意外性もありながら最後は綺麗にまとめてます。
    読後感も良く、しばらく後に再読してみたいなと思えるほどでした。
    惜しむらくは主人公は美女のはずが本の表紙に描かれている女性は美女という感じでは無かったことです、あの絵を想像して読むと違和感があります。
    登場人物も魅力的で変な恋愛話に展開していかなかったのも良かった。
    少々グロテスクな場面もあるが、全体的には爽やかな感じです、これもジャンル的にはミステリーになるんだという思いもありました。
    作者の別作品も読んでみようと思います。

  • ピアノ
    輪廻

    ブレスレット
    カルト
    姉と弟

    不思議な感覚を覚える本でした。賢い少年が印象的で、これからの幸せを願いたいです。
    図書館本

  • 状況が理解できない?いや、理解はして読んでいるのだが設定が分かりきらないせいか、進まない。

    人気シンガーの上条梨乃が自殺した。人気絶頂でのこの事件、憶測が飛び交う。当の本人はゴミ置き場で気が付き、自分のニュースを見てびっくりする。さらに驚きなのが、自分が話しかけても「上条梨乃」だと認識されないこと。唯一、佐伯優斗だけはわかってくれた。
    同時期、上条梨乃の自殺現場に居合わせた樹も、車道に飛び出しひき逃げに合う。梨乃と同じように樹もいる(存在する)のに家族にも認識してもらえない。
    果たして、この謎の現象はどう回収されるのか・・

    なるほど、落としどころはそこだったか、という感じ。
    ただ、本当であればすごく、すごく怖い現象。

  • エンディングがすごい
    前半はタラタラしててうーん読み切れるかと思っていたけど中盤からのそれぞれの人物の個性が出てきたあたりから引き込まれる。すっごく怖いけど面白く新鮮なミステリー
    是非読んでもらいたいと思う

  • タイトルと表紙からして、主人公の心の成長を描く物語なのかな?と思ったら、全然違った。
    序盤はむしろスピリチュアル的な話なのかな?と感じて、まさかミステリーに繋がるとは思わなかったけれど結末はきちんとミステリーだし、色々な疑問も腑に落ちたし読んでて楽しかった!

  • 国民的な人気を誇るシンガーソングライターの上条梨乃は、
    ある朝渋谷のゴミ捨て場で目を覚ました。
    そこに至るまでの記憶がない…。
    通行人に見られて慌てるが、誰も彼女の正体に気付く様子はなく、
    さらに街頭に流れる〝梨乃の自殺を報じたニュース〟に梨乃は呆然とした。
    いったい何が起きているのか…?

    梨乃は高層マンション19階の自宅ベランダから飛び降りて自殺したと報じられているが、
    梨乃自身の記憶は前夜帰宅したところで途切れている。
    自殺する理由はなく、いくら考えても自分が何故死んだのかわからない。
    自殺したなんて考えられない。本当に死んだのか?
    それなら、ここにいる自分は何者なのか?
    そんな中、大学生の優斗だけが梨乃の正体に気付いて声を掛けて来た。
    梨乃は悠斗と行動を共にするようになり、彼の姉のなつみの家に居候して新生活を始めた。
    やがて、梨乃のマンションの近くで梨乃を梨乃だと認識できる少年樹に出会う。
    樹は、梨乃の自殺を目の当たりにし、驚き車道に飛び出してひき逃げされ死んだと言う…。
    三人はこの不思議な、奇妙な現象の謎を追う。

    確かに肉体は存在し、容姿も記憶もそのままなのに、死んだとされている。
    そして、周囲は別人として認識している。
    時折挿入されている手記…インドの古い伝説の手記。
    それが、この現象とどの様に繋がっているのか…?
    何がどうなつているのか、先が気になって仕方無かった。
    『輪廻の泉』
    私自身何となくぼんやりですが、輪廻転生って心の何処かで信じています。
    それが〝輪廻の泉〟に入ったものは生まれ変わらず、現世で輪廻を繰り返す。
    それって、凄く辛く苦しい事なんじゃないか…地獄の様だって思いました。
    他の人からは認識してもらえない…酷いって凄くネガティブにばかり思考が行ってしまったけど、
    逆に考えれば無念を残して亡くなった人が、条件付きではあるけど、
    もう一度生きるチャンスを与えられているのではないか…。

    架空の人物になりすまし、病院や警察はどうするのという突っ込み所もあったし、
    優斗はともかく、戸籍も無い状態の梨乃や樹はこれからどう生きて行けるのって
    現実的な事も頭をよぎりましたが、三人のこれからの明るい未来を感じさせられ
    とっても温かい気持ちで読み終える事が出来ました(*˙︶˙*)☆
    優斗の立場は、何となく早めに読めてしまいましたが、とっても面白かった♪
    三人がとっても良い子達ばかりで、三人の会話も温かくてとても良かった。

    著者は東大法学部在学中のデビュー作なのですね。このミス優秀賞
    だから、青春も凄く感じました(*´艸`*)

  • 超飛ばし読みでした。青春キラキラでちょっとなー。中学生ぐらいの頃なら楽しめたと思う。

  • この後どうなるんだろう?
    日本は戸籍があるから面倒だよね。

  • 戸籍も保険証もないし、受診はどうしたんだろう、生活費は?とか、つい現実的なことを考えて、なかなか設定についていけなかった。
    でも、読んでるうちにそれなりにハマった。設定を素直に受け入れて読むと面白くなる。
    主要登場人物がみんないい子。梨乃は、可愛くて性格も良くて歌もうまい、優斗もきっとカッコイイんだろうし、いっくんもしかり。ロックバンドの十文字とか、まるで少女漫画の世界で違和感ありつつも、微笑ましくもある。
    そんな中でも優斗が亡くなった時の描写、指を砕くとかがグロかったけどギャップが引き立つ。
    カルト宗教は、作中で書かれてるといかにもだけど、現実で未だに騙される人が後を絶たないから怖い。

  • なんとなく手に取ったがとても面白かった。これぞミステリーという感じ。話の展開が楽しくて読みやすかった。

  • あらすじを見て読みたいと思ってた。
    おもしろい設定だと思うし、終わり方もよかった。

    ただ主人公があまり好きになれないのと
    真相の残酷さで入っていけなかった感じ。

  • 文章が拙い…という表現は不遜だし、ベテラン作家の文章と比べるのも気の毒だけれど、もう少し練ったものを読みたかった。同じ内容を宮部みゆきが書いたらどうなのかな、などと考える。
    ファンタジーとしてはまあまあ良く出来ている。“ミステリ”に超常現象を持ち込むのって、もひとつ受け入れられないんだけれど、一応初めからヒントが提示されていたからセーフかな。
    主人公は健康保険に入っていないのに病院で治療を受けてるけれど、費用は幾らで誰が払ったんだろうとか、今後芸能活動することになるとして、戸籍がないことがバレたら××人だとかネットで大バッシングされちゃうかもとか、義務教育期間中の少年は誰が保護者の役割をするんだろうとか学校に通うための手続きはとか、イロイロ考えちゃう。
    タイトルは応募時と変えているようだが、編集者とか、そういうプロのひとが考えたのかな。だとすれば流石。最初のタイトルは作文の題名みたいで、後のは“売れる”本のタイトルらしさがある。(2019-06-29L)

  • 洗練された文章と物語でさくさくと読み易かった。設定も興味深くて、とても自然に引き込まれた。終盤のピンチにはハラハラさせられた。色々と割り切って爽やかな読後感だった。

  • 2014年このミステリーがすごい!大賞の優秀作「夢のトビラは泉の中に」を改題、改稿(たぶん)した作品で、現役東大生のデビュー作。

     トップミュージシャン上条梨乃は、目が覚めるとごみ捨て場にいて、誰も自分が梨乃だと気づかない。それどころか、ニュースでは上条梨乃は自殺したと報じられていた。
     自分のことを上条梨乃だと気づいてくれたのは、大学生の優斗と自殺現場で車にはねられて死んだ10歳の樹(いつき)の二人だけで、どうやら梨乃も本当に死んだようだ。

     樹がネットで調べた情報からインドの奥地にある輪廻の泉が関係して、死後現世に転生したのではないかと推測するが、ここにカルト教団が関わっていて、犯罪が背後にあるという謎めいた展開になっていく。優斗が梨乃を認識できる理由は意外だがわかると当然だと納得させられてしまう。。
     エンディングはハッピーエンドめいているが、梨乃が友人だと名乗って実家に電話して自分に気づくか試した時、母は梨乃の「くせ」に気づいていたと語る場面では涙腺崩壊してしまった。

     ただ、教団は他にも殺しているだろうから、同じ状況の人は他にもいるんじゃね?(笑)

  • 目が覚めたらごみ集積所に居て、有名芸能人である自分を周りの人が認識しない。どうしてこうなったのか、と考えるうちに平行して進む2つの物語が1つになる、謎が解けるところが面白い。
    姉がなぜ優斗のことがわかるのか、だけが消化不良だったが、かつての自分を取り戻そうとせずに今の姿のまま生きようとするところに人間の強さを感じた。

  • 間に挟み込まれた不穏な手記とハートフルファンタジー風味な本編のギャップが不思議でどう繋がるのかと思っていたら、後半に入って急にサスペンスフルで意外などんでん返しも有り一気読みしてしまった。
    巻末の大森さんの選評通り甘くてキラキラだし登場人物達にとって解決しきれていない問題は残っているけれど、伏線はきっちり回収してあって読後感も良く面白い。

  • 第13回このミステリーがすごい!大賞優秀賞受賞作。主人公達が優し過ぎてややリアリティに欠ける感じは否めませんが、スピリチュアル要素のあるミステリとしては、きちんと成立していると思いました。

  • 「このミステリーがすごい」優秀賞
    デビュー作だけに、気になる部分もあるが、それを吹っ飛ばしてしまうくらいぐいぐいと小説の世界に連れて行かれた。
    登場人物も好感がもててよかった。

  • 面白いし読みやすい!ある日自分が自殺したことになってる上に、自分のことに誰も気付かない、というところから始まる。気付かないといっても幽霊で見えない訳じゃなく別人として認識されるなんて混乱の極み。芸能事務所やカルト教団などが絡みつつ、読後感はすっきりでミステリとしてもよかった。

  • わかりやすく押し付けがましい青春系が苦手な私にとって、これがギリギリ許容できるラインかな(;^ω^)

  • さほど期待せずに読み始めたけどなかかの作品だった。都合のいい設定がされているところや若干不自然さを感じる描写があるものの、作品の中に散りばめられている不可解な伏線をきちんと回収していてスッキリする。「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞受賞作なだけはある。今後辻堂ゆめさんの作品が出版される際にはぜひ読んでみたい。

  • 今年、東大総長賞を取った作者の作品はどんな物かと思い読んでみました。突っ込みどころは多々。でもまあ面白かったです。『こんな状況ならもっと取り乱すだろー!』とか、『綺麗に締めくくったけど、社会的身分はどうすんの?』とか、やっぱり読後色々突っ込んでしまう(笑)

  • 善人は善人としてしか、悪人は悪人としてしか描かれていなくてなんだかなぁという感触。
    戸籍や生活費をどうしてるのかが気になった。

  •  他の人から自分を認識してもらえない。まったく別の人に見えるらしい。こんな設定を無理なく結末まで持っていき、ピュアなイメージは壊していません。

     戸籍もないのにお医者さんや、警察の対応はどうしたのって細かい所が気になってしまいました。いっくんもこれからどう生活するんでしょう?心配です。

  • 自分の死と転生の謎を追うファンタジーミステリー。

    ファンタジー部は優斗の事情の真相が強引でしたが設定はしっかりしていたと思います。
    ミステリー部は犯人の豹変ぶりや犯行の雑さなどツッコミどころ満載でしたが一応論理的には解決していました。
    性格が素直な主人公視点でストーリーが展開するので叙述トリックを心配せず読めました。
    エピローグではいっくんの話など涙腺が緩みました。
    全体的には荒唐無稽な話に陥ってしまうところが、文章のうまさかキャラたちの爽やかさかわからないですが、最後まで飽きさせず読ませる力があり感心しました。

  • このミス大賞優秀賞受賞作。ややファンタジーめいた物語だと思っていたら、なかなか本格でした。
    自分が死んだことになっていて、家族や親しい人に会っても分かってもらえない、という状況はかなり怖いし哀しいです。だけど「輪廻の泉」の存在意義にもなるほど、と思う面があったりもして。これはやはり幸運ととらえるべきなのかな?
    あれやこれやの事象がすべて関わっていて、見事に繋がっていたのは驚き。そしてあの状況を理解できる人たちの共通点を思えばあの真相はさほど意外でもないのかもしれないけれど。案外と気づかなかったなあ。

  • 「このミステリーがすごい! 」優秀賞受賞作品
    人気シンガソングライターの上条梨乃は、渋谷のゴミ捨て場で目を覚ましたが、そこに至るまでの記憶はない。
    どうやら自殺したらしい。
    幽霊話でもなく、実は生きていたという話でもない。
    もっと皮肉なシビアな話かと思っていたら、結構いい話系だった。
    戸籍もなく、健康保険証もなく、お金もない人間が、病院に普通にかかっているとか、もう少しなんとかしてほしいと思う面もあったり、強引な展開もあったりだが、設定自体は面白かった。
    (図書館)

  • 相当ぶっとんだ設定なのに、スーパーナチュラルミステリーとしてちゃんと成立しているのがすごい。カルトとか天才美少女な主人公とか芸能事務所とか白骨送付とか、ぶっこみすぎてごちゃごちゃしてたり、犯人は明らかなのになぜそこで気づかない!いい子すぎるだろ!ともだもだするとこもあったりするけど、とにかく3人がこれからもずっと幸せでありますように。

  • 国定美波という登場人物により、やっぱり承認欲求の強い人は苦手だ、と思った。この作品の設定は現実的ではないが、謎めいたストーリーの展開にはハラハラした。エンタメ作品として十分に楽しめる本だ。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。東京大学在学中の2014年、「夢のトビラは泉の中に」で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞《優秀賞》を受賞。15年、同作を改題した『いなくなった私へ』でデビュー。21年、『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補、『トリカゴ』で大藪春彦賞受賞。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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