いなくなった私へ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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感想 : 142
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  • Amazon.co.jp ・本 (491ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800251176

感想・レビュー・書評

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  • 自殺したと思われる人気のシンガーソングライターが、渋谷のゴミ捨て場で目覚める。そして、彼女は、彼女として認識されないなかなかショッキングな書き出しで始まります。
    現世に生まれ変わるという輪廻転生。しかも、ほぼ自分自身にほぼ記憶を持って再生するという設定。設定は奇抜だけれど、物語の流れはそれほど無理が無い。主人公の歌手の女性と、彼女を認識できるやはり転生した二人の男の子が、自分の死の真相を転生した自分が知るというところがミステリー。転生の部分にインドの再生の泉をファンタジー的にまとめて、作者デビュー作。
    予測では、土瓶さんはダメだと思います。

    • 土瓶さん
      う~~~ん?
      著書を読んだ記憶がないのに作者名に覚えがある???
      アンソロジーかなんかで引っ掛かったかな。

      予測の答え合わせをして...
      う~~~ん?
      著書を読んだ記憶がないのに作者名に覚えがある???
      アンソロジーかなんかで引っ掛かったかな。

      予測の答え合わせをしてみたいという気持ちもありますが、ちょっと時間も無いのでやめときますm(__)m
      2023/05/01
  • 国民的人気歌手の上条梨乃が飛び降り自殺した翌朝、上条梨乃はセンター街のゴミ捨て場で、目を覚まし、自分が自殺して死んでいることになっているのに驚きます。
    街を歩く人々は誰も梨乃に気づかず、大学で心理学を学ぶ佐伯優斗と小学4年生の立川樹だけが梨乃が梨乃であることに気づきます。
    そしてまた樹も梨乃の自殺現場でひき逃げに遭い死んだ少年で家族や他の誰にも自分を認識されなくなった子供でした。

    梨乃は名前を田代美加と変えて優斗の姉の家に身を寄せ、自分が所属していた芸能プロダクションで事務のアルバイトを始め、自分の身辺を探り始めます。
    梨乃には自殺をした覚えは全くなかったのです。
    樹は優斗の家で暮らしはじめます。

    梨乃と樹は「本当は自分たちは死んでいないのか」それとも「死んだけれどなぜか生き返ったのか」考え、樹はネットでザ・スプリング・オブ・リインカーネーション<輪廻の泉>という言葉を発見します。
    そして巷では<輪廻の泉>というカルト教団が事件を起こしたのが発覚し始めます。
    そして梨乃の事務所の人間関係から事実が発覚します。
    梨乃と樹のただ一人の理解者である優斗にも過去に事件があったことがわかってきます。

    凄くミステリアスな話かと思ったら、結構ストーリーは実際あり得なさそうではありますが、単純明快で、登場する悪役たちは本当に許せない人間でした。

    少し長めのエピローグで梨乃が梨乃の曲を大学の学園祭で歌うシーンは感動的でした。

  • 最近嵌まっている辻堂作品、今回は最初から特殊設定。主人公・上条梨乃は超人気歌手。彼女はある日、目が覚めると裏通りのゴミ捨て場で目を覚ます。電光掲示板で自分が飛び降り自殺で死んだとのニュースが。梨乃のことを上条梨乃だということを理解する人はいない。街で出会った佐伯優斗だけは梨乃を認識する。さらに梨乃の飛び降りの際に小5年の樹は同じ時間に自動車でひき殺されるが、彼も生きている?この3人の不思議な関係、さらに梨乃を巡る憎悪がリアル~家族、友人に認識されない寂しさとそれを乗り越える3人の健気な姿に胸打たれた。⑤

  • もし自分が死んでしまって、奇跡的に現世に生き返ることができたけれど、誰からも自分を認識してもらえなかったら・・・

    国民的歌手の上条梨乃は渋谷のゴミ捨て場で目を覚ます。自殺してしまったらしい梨乃は、自分を上条梨乃だと認識してくれる青年らとともに自らの死の真相を探る。

    読み始めはぶっ飛んだ設定だなあと思いながらだったけれど、ほんとに終盤、梨乃の死因を始めいろいろなことが明らかになっていくあたりから一気読みだった。
    梨乃の死因も悲しくてやるせないものだったし、全体的に「そんなことで・・・?」と唖然としてしまう流れ。特に、梨乃を梨乃だと認識してくれる優斗に隠された秘密がつらい。
    もしかしたら?と思ってはいたけれど、思っていた以上に切なくて、この話があってのラストの学園祭はぐっとくるものがあった。
    梨乃がかけた母親への気づかれるはずのない電話のエピソードも良かった。身近な誰かが亡くなった後に、もしかしてあの人が来てくれたのかもとか、ちょっと不思議なことがあったという話をときどき聞くけれど、それらも梨乃のように現世をさまよっている人が引き起こしているのかなとか、考えてしまった。

    インドの【輪廻の泉】という怪しい手記や、それに溺れたカルト集団が絡んできたり、ちょっとずつ伏線もあったりして、けっこう強烈な話だけど面白かったかな。


    「田代実加としての自分を受け入れ、生きようと努力してみればいい。目の前にあるいくつもの壁は、きっと何かを諦めることで一つずつ壊していける」

  • 2014年に『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞した、著者のデビュー作。当時、東大在学中の学生だったそうです。

    ぼんやりとした意識と記憶のなかゴミ捨て場で目覚めた主人公・梨乃は、それまで国民的シンガーソングライターとして忙しい日々を送っていた。梨乃は目覚めてまもなく、自分の自殺による死亡報道を目にします。不思議なことに、彼女を見る誰ひとり梨乃だと気づくことはなく、自分はいったいどうしてしまったのかまったくわからなくなります。自分はどうして死んでしまったのか。少しずつ明らかになっていくその謎が大きな見どころでした。そして、死亡報道以後の、梨乃のあらたな生活の情景の温度感も、この小説を読ませる力として大きかったのではないかな、と思いました。

    独特の「輪廻」の仕方のアイデアが優れていて、この物語を大回転させたなあ、という印象です。芸能界が大きな舞台としてあり、そういった煌びやかな世界の裏側という引きつけも、本作品を読ませる力として働いているでしょう。また、ライブや練習風景の場面描写もしっかりしていました。著者にはバンド経験があるそうです。

    文体の第一印象は、きっと推敲や直しに励んで、この読みやすくて整理された端正な文章に変えていったのではないかなあ、というもの。それでいて、光る表現もちゃんとあるエンタメ作品。アマチュアとしての賞への応募作品ですが、隅々まで力を使い切って完成させた、立派な「プロの仕事」という感があります。

    それぞれのシーケンスをきっちり書かれていますし、構築している世界は狭くないですし、こういった「構成」と「構築」のどちらからも力を感じられるのが、やっぱり賞の関門を突破する人ゆえだなあと感じ入ったのでした。ストーリーテリングとは <「構成」と「構築」> とも言えるのかもしれない。まあ、斬新なアイデアを忘れてはいけないですが。読み進めていくごとに奥行きが深まっていきます。それはたとえば、新しい友人ができて、時間とともにその人をより詳しく知っていく過程と似ているのかもしれない、なんて気がする自然な深まり方です。

    分析めいたことをこうやって書いてますけど、物語のほうにだって没入して楽しんでいます。書くようになってからは読み手視点と書き手視点の「二重読み」の度合いが強くなりました。ただ、物語の魅力に負けがちになります。佳境を迎えると、書き手視点がどっかいってしまう。今回も終盤は楽しむのみ、みたいなふうに。

    その終盤、悪党が正体を表し、悪を為す場面があります。がらっとそれまでのトーンが変わる、読ませどころなのですが、そんな「悪」を扱う場面であっても身じろぎしていない書きっぷり。肝が据わっています。自分の書くものから目を逸らしていない。そういう根性というか精神力というか度胸というか、、そういったものがあると思いました。これは、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』を読んだときに著者に感じたものと似ていました。才能を下支えする度胸みたいなものがあるなあ、と。

    さて、序盤にもしかすると瑕疵がありました。主人公は北海道出身で親は札幌にいるのに、居候をする理由が、他の大学でのサークル活動について親とうまくいかなくなって家に帰れないから、というところです(もしかすると、僕の読み違い・読み足りなさかもしれない)。読み違いならほんとうに申し訳ないのですが、僕はここもなんらかの伏線なのかな、と頭にひっかかっていたのでした。どうなんでしょう、また読み直すと僕の勘違いだとわかるような部類のものかもしれないですが、そうでもないような気もして。

    文章は読みやすいですし、しっかり内容は考えられていますし、おもしろかったです。今後はもっと難しいものを扱ってみよう、みたいな感じで創作活動を促されるような作品でもあったかもしれませんが、500ページ弱の分量をきっちり書き尽くすあたり、力を持ってらっしゃいますね。最後までゆるめず、やりきるといった姿勢はほんと、その通りなんだよなあ、とリスペクトでした。

  • ★3.5
    初読み作家のデビュー作で【このミス】優秀賞受賞。

    斬新な設定。まず、物語冒頭の冒険家が迷い込んだ密林奥地の『手記』と、本編のパートの結びつきがどうなるのか⁈ 興味が湧く。

    主人公は、国民的歌姫でアーティスト:上条梨乃…と本人は自覚しているが、自分は自殺したことになっていた! 

    芸能界、ファンタジー、説明不能な状況と、エンタメ要素満載で面白かった。現実から遠い世界のためか、脳内で登場人物像の映像変換せず、残念。。。創刊順に追いかけてみたい作家だ。

  • 気になっていた1冊。
    他人に認識されない自分の虚しさ。悲しさ。
    自殺されたという上条梨乃と、その巻き添えで交通事故死してしまったとされる樹。
    唯一彼女らの本来の姿を認識できる青年・優斗。
    3人の悲しい過去、現実と向き合いながら実際の事件の真相に迫っていく。
    ミステリーとファンタジーが融合された面白い作品でした。
    ラスト様々な謎が明らかになっていってまた驚かされました。
    この作家さんの他の作品も読んでみようと思います。

  • 辻堂ゆめさんの小説は短編を数本かじった程度であまり読んだことがなかったので購入。

    あらすじも読まずに買ったわけだけど、いわゆる「本格ミステリー」ではないのがよかった。というも自分はごちゃごちゃ説明される本格系が苦手なので笑

    本作の主人公は超売れっ子ミュージシャンの女性で、ある日目を覚ますと主人公は路地裏で倒れていた。
    戸惑いながら街を歩いていると、なんと自分は自殺したことになっている。しかも周りの人間は有名人である主人公のことをまったく認知していない。これ、どういう状況?というのが本作の「謎」。

    合間に挿入される「とある旅人の手記」によって少しずつ「謎」が明かされている感じがとてもいい。とても丁寧に書かれているなという印象だった。デビュー作とのことだけど完成度は高い。
    というわけで☆4つ。

  • 小学生が賢すぎるが、子供らしさもあり魅力的でした。カルト教団のデタラメさと泉の幻想的な部分のバランスが少し頭にすっと入らないところだけが、読み進めるのに苦労しました。一部の温かい伏線が心地よかったです。

  • 私を私と誰にも認識されないなんて、とても怖い。『私』がどこにもいなくなる、自分が知っている私は‥‥ 自我がガラガラと砕けていく音がする。一人でも二人でも私を私と認識してくれる人のいる安心感といったらない。彼らを支えに新しく人との関係を紡いでいけると思える。いなくなった私は新しい私に生まれ変わって生き直していく、そんな希望が見えるのが嬉しい。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。東京大学在学中の2014年、「夢のトビラは泉の中に」で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞《優秀賞》を受賞。15年、同作を改題した『いなくなった私へ』でデビュー。21年、『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補、『トリカゴ』で大藪春彦賞受賞。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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