どこかでベートーヴェン (『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800255679

作品紹介・あらすじ

ニュースでかつての級友・岬洋介の名を聞いた鷹村亮は、高校時代に起きた殺人事件のことを思い出す。岐阜県立加茂北高校音楽科の面々は、九月に行われる発表会に向け、夏休みも校内での練習に励んでいた。しかし、豪雨によって土砂崩れが発生し、一同は校内に閉じ込められてしまう。そんななか、校舎を抜け出したクラスの問題児・岩倉が何者かに殺害された。警察に疑いをかけられた岬は、素人探偵さながら、自らの嫌疑を晴らすため独自に調査を開始する。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。。

    シリーズになっている岬 洋介の高校2年生の時のお話。
    青春時代の音楽を語りながらのミステリー。
    ミステリー自身より、生き方の教訓が詰め込まれています。

    できれば、「もういちどベートーヴェン」よりこちらを先に読んだ方が人物像がよくわかってよかったかも。

    シリーズである「いつまでもショパン」も是非読みたいと思いました。

  • 好きだわ!岬洋介シリーズ。
    父親との葛藤
    息子と父親の関係はやり損なうと難しすぎる、
    岬洋介「卓越した天才それを本人は気づいてない」
    彼の不幸は父親との葛藤〜
    天は二物も、三物も与える
    それが幸せとは限らない。
    とにかくどのシリーズも面白い。

    御子柴も岬シリーズも中山七里はすごいわ!

  • 岬洋介シリーズ第4弾。今回の主人公は、岐阜県立加茂北高校音楽科で岬洋介とともに高校生活を送っていた鷹村亮…9月に行こなわれる発表会にむけて構内で練習に励んでいた夏休み…そんな中豪雨による土砂崩れが発生、練習を抜け出していた問題児の岩倉が殺害されてしまった…。自らの嫌疑を晴らすため、岬洋介は最初の事件の真相究明に乗り出す…。
    岬洋介の高校時代、新鮮でした!このころ突発性難聴を発症してしまったのですね…ここで一旦ピアノを弾くことを諦めるのか…それに、頭脳明晰で何にでも長けているとここまで思ってきたのが、何と古文が苦手とは!こんなことも、岬洋介の魅力をさらに引き出してくれましたね。音楽の描写は変わらず素晴らしいし、読みながらベードーヴェンを聴いてました。岬洋介と父親との葛藤に加え、同級生たちの将来に対しての不安、仲間意識とか、恋愛模様なども描かれていて、高校生の心をよく捉えた作品だと感じました。最後の一文に、え??となりましたが、次作を読むのが楽しみです。

  • パキスタンの大統領が、ピアニスト岬洋介に向けて
    世界に発信したメッセージのシーンから始まります。
    これは、前作『いつまでもショパン』の最後のシーンです。

    それを かつての岬の級友、鷹村亮が偶然、テレビで見たのです。
    この物語は、鷹村が自分たちが高校生だった10年前を思い出す
    という形で綴られます。
    そして、その時に起こった事件とともに、岬洋介の生い立ちが語られます。

    同じクラスの高校生が殺されるという事件が起こりました。
    岬洋介が、驚異的な分析力で解決に導いたことを克明に思い出した鷹村。
    思い返したことで、鷹村は自分の生き方を見直すことを決意します。

    前作のショパンコンクールでは、岬洋介にアクシデントが起こりました。
    その発端が、17歳の高校生だった岬が抱えた災難にあったことが明かされます。
    そして、タイトルの『どこかでベートーヴェン』には、
    象徴的な意味があるのだということも納得。
    『月光』も『悲愴』も、心の奥の奥にまでしみわたる曲です。

    岬洋介シリーズがあと二作あるはず。
    気になります。

  • 岬洋介シリーズ第4作目

    前作「いつまでもショパン」の最終章で、パキスタン大統領が、ショパンコンクールを終えて、日本に向かう岬洋介に発した緊急メッセージから、物語は始まった。

    「パキスタン市民24人がタリバンの人質になっていた時、アメリカ軍が敵の攻撃に手をこまねいている時、君の演奏するショパンが戦場に流れた。
    たった5分の演奏だった。しかしその5分間、あのタリバンが、一発の弾も撃たなかった。そうただの一発もだ。
    お陰で24人の人質は、脱出することができた。
    ミサキよ、コンクールの審査員たちは君に何も与えなかったと聞いた。だが君の奏でたノクターンで24人もの命が救われたのだ。審査員たちが与えないのなら我々が君に感謝と栄誉を与えよう」

    鷹村亮は、何気なく自室で見ていたテレビから流れる、大統領のメッセージから、懐かしい名前を聞いて、固まった。

    思えば、岬洋介という男は昔からそういう人間だった。
    音楽で人心を虜にしてしまう悪魔性と、錯綜し縺れた事象を一挙に解明してしまう神がかった部分をかねそなえていた。
    だからこそ僕は全幅の信頼を寄せながらも、どこかで彼を畏れていたのだ。

    と、彼に初めて会った2000年の春に、思いを馳せる。

    それは、岬洋介が、県立加茂北高校に、転入してから、転校する半年の間の事だった。

    県立加茂北高校・音楽科は、普通科の受け皿のようなもので、偏差値は、あまり高くなく、音楽科といっても、真剣に音楽家を目指す者も、皆無だった。

    そんな、ぬるま湯に浸かっている様な音楽科のクラスメイトは、底知れぬピアノ技術を目の当たりにした日から、岬洋介に、羨望の目を向けた。
    しかし、その感情が、劣等感、恐怖心、そして、苛立ちに変化するのは、あっという間であった。

    中でも、岩倉智生の感情が、顕著で、岬洋介に、暴力を振るうようになった。

    文化祭を控えた夏休みのある日、音楽科の生徒は、夏季登校をしていた。

    その日は、土砂降りの大雨だった。
    2日前から続いた雨は、止むことを知らず、生徒は、学校に閉じ込められた。

    その上、岩倉智生の他殺死体まで見つかり、かねがね、虐められていた岬洋介が、犯人とされてしまった。

    自らの嫌疑を晴らすため、岬洋介最初の事件解決に、挑む。

    豪雨で、電線が切断され、校舎裏の待ち受け擁壁が崩れ落ち、激痛にも似た雨足。
    勇敢にも、岬洋介は、外界と遮断され、閉じ込められたクラスメイトの救出を求めて、倒れた電柱を伝っての脱出の場面で、
    折しも数日前から大粒の雨が、降り続いている現実と重なり、目から、耳から、臨場感は、半端なかった。

    半年間の回想を終え、鷹村亮は、

    ようやく決心した。
    僕はあの夏のことを包み隠さず書き残そうと思う。小説のような形で世に出すことができれば一番望ましい。今、僕は仕事柄別の名前を使っているが、岬の実名を出しておけば彼自身がいずれ目に留めてくれるだろう。
    僕はパソコンを起ち上げると、真っ白な原稿に早速タイトルを打ち始めた。
    『〈どこかでベートーヴェン〉中山七里』

    え?え?え?

  • 岬先生が学生の頃のお話。
    そんなことがあったんですね...お父様との確執にも触れられてます。

    級友が死体で発見され岬先生がその容疑者に⁉︎
    いや、あっさりと解放されました∑(゚Д゚)
    一体誰が犯人なのか...え、あなた知っ...

  • “努力が常に実を結ぶとは限らないが、成功する人間は例外なく努力している。”(p223)


    「さよならドビュッシー」シリーズ4作目!
    今回は岬洋介が高校生の頃のお話。

    うん、確かに。
    努力すれば報われる、という無責任な励ましより、報われた者は必ず努力している、という言葉の方がずっと重みがあるし、がんばろう、という気分にさせてくれる。
    さすがベートーヴェン!(上のセリフはベートーヴェンの名言だけど、作中では別の人が言ってるよ!)

    次回作も楽しみ٩( ᐛ )۶

  • 中山七里さんの小説を読むのは
    デビュー作「さよならドビュッシー」と
    「総理にされた男」に続いて、3作目です。

    今回は「さよならドビュッシー」に登場した
    ピアニスト・岬洋介の高校生時代のお話。

    ピアノ演奏の描写もすごいですが、
    土砂崩れの描写も臨場感あふれ、
    ハラハラしました。

    また、岬洋介の才能を目の当たりにした
    同級生たちの複雑な心情が、とてもリアル。

    岬と、ワトソン役でもある同級生の鷹村は
    おとなびた部分もありますが、
    他の同級生たちは年相応な反応をみせるので
    高校時代のお話、という部分にも
    違和感は少なく読めます。

    タイトル「どこかでベートーヴェン」が、
    最後の最後まで効いていて、
    思わずうなってしまいました。

    ミステリとしても青春小説としても
    味わえる1冊です。

  • 岬洋介の原点、ここにあり。岬の高校時代の最初の事件。岬の唯一と言ってよい友人の出会い。いまさらながらに装画が北澤平祐さんと知る。よくよく観察すると確かにこれは北澤さんのタッチである……。

  • このシリーズを読むといつもその曲を聴きたくなる。
    若しくはピアノ弾けたら気持ち良いだろうな。とも。
    岬洋介が高校生の時の事件。
    ミステリーというより青春物という印象。
    (殺人事件だけど…。)
    卓越した才能に対しての嫉妬、憧れ。
    それに対して自分の才能が凡庸だと思い知らされる。
    目を背けてた、後回しにしてた事が目の前に突きつけられる感じ。
    岬の父親の「自覚のない才能ほど、傍で見ていて不愉快なものはない」はクラス全体の皆が感じてる気持ちの総意だと思う。
    間違ってる事は決して言ってないんだよ、岬の父親は。
    ただ正論過ぎる。
    真っ当過ぎる。
    エピローグの最後の1文はぶっとんだ(爆)

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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