血の季節 (宝島社文庫)

  • 宝島社 (2016年8月3日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784800258564

感想・レビュー・書評

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  • ドラキュラ伝説にインスパイアされて書かれた和製ゴシックホラー。作者は『女には向かない職業』の翻訳などで知られる小泉喜美子さん。文体にややクセがあり、戦時下の日本と、ゴシックな味わいを出すためにあえて海外文学のような読み心地にしているようです。そのため読んでいて「淡く美しい思い出」を語り聞かされている気持ちよさがありました。『失われた時を求めて』を読んだときの感覚に若干近く、格式と読みやすさとエンタメ性を同時に味わえた気分。
    恐怖譚というより昭和初期に起きた怪事件と、少年たちの触れあい、という側面の方が強いです。また、同時進行して書かれる「現代篇」ではミステリー調に話が進んでいき、最後にふたつの物語が重なるという構成となっています。
    好き、なのだけど、ホラーとして読むと肩透かしを喰らうし、ミステリーとして読むと物足りなさを覚えるというのが本音。なのでこれは和製ゴシックホラーとしての「文体」を楽しむ小説ですね。個人的には。その点においてはほんと素晴らしいので。

  • 幼女惨殺事件の被告人が、独房で奇妙な独白を始めて…
    「弁護側の証人」で有名な小泉先生の3作目長編。ドラキュラ伝説をモチーフにしたゴシックホラーミステリ。戦時中の丁寧な描写など物語に緊張感を与えている。
    仕掛けに関しては40年以上前の作品と考えると斬新だったのではないだろうか。
    ただどうしても名作と比較するとね…(汗)

  • 泥沼の日中戦争から敗戦直前の東京大空襲、原爆投下までの狂乱の時代を背景に、作家で翻訳家の小泉喜美子さん(1934-1985)が、 なんと!恐怖の<ドラキュラ伝説>を、ミステリ-と絡み合わせ、読む者の興奮と興味を最後までひきつける長編作品です。復刊希望が相次いだという、幻の名作の名に恥じない、捻りの効いた怪奇ミステリ-です。

  • 幻の名作らしいが、今一つの面白さだった。最初から最後まで判然としないストーリー、ミステリーなのか、ホラーなのか、曖昧模糊、混沌とした雰囲気のままでラストを迎える。

    青山墓地で発生した幼女惨殺事件。逮捕された犯人の過去と現在が描かれるが…

    裏表紙に記載された魔性も狂気も感じられず、吸血鬼小説の面白さも、サイコパス小説の面白さも、警察小説の面白さも味わえなかった。

  • 最後の物語の閉じ方が絶妙。警部が熱い良い味を出している。

  • 「復刊希望が相次いだ、幻の名作がついに復刊」と出版社直々に書かれますと、どんなけ面白いんだ!?と、期待のハードルがグイグイ上がってしまうものですが、とくに山場らしい山場がないまま読み終わってしまった感がありました。
    この肩透かし感は出版社のふれこみを真に受けてハードルが上がりすぎてしまったからかと考えてみましたが、やっぱりこの作品はホラーと呼ぶには物足りなく、ミステリーと呼ぶのも物足りない。「血の季節」というタイトルから何となく想像できると思うのですが、その辺のゴシック感もやっぱり物足りない。
    恐らくですがこの作品が刊行された当時は、私が物足りないと思ったすべての要素が水準以上で、この物語の妖しい雰囲気がたまらなく、復刊を待ち望んだ方々の記憶の中に生き続けていたのではないかと思います。
    ただミステリーもホラーも妖しい雰囲気の小説もこの35年でどんどん水準が上がっていってしまい(表現もどんどんぞくっぽくなっていっているし)、今の基準に慣れきった者は物足りなく感じてしまうのではないかと思いました。
    超個人的な感想としては、もっと美少女の蠱惑的な面を見たかった!それがいちばん物足りないと思った点でした笑

  • 精神科病院の病室で幼女惨殺事件の被告の回想を聞く、という導入がまず良い。とても興味を掻き立てられる。
    語り口は穏やかで冷静、知的であり、ノスタルジックで幻想的な内容も含んだ美しい世界に引き込まれる。ただ、それが如何にして幼女暴行惨殺という残忍で破廉恥極まる犯罪心理へ向かうのか…と期待するとやや肩透かし感はある。
    しかしそこを克明に描かないからこそ表現される妖しい雰囲気や上品さもあり、一概に悪いとは思わない。
    むしろ長い回想の空気感がハイライト。作者自身が東京大空襲を経験しており当時の空気感を含めた描写は真に迫るものがあるし、金髪美少女の妖艶さ、少女性もドキリとさせられるし、そこここに吸血鬼を彷彿とさせる出来事が散りばめられ不穏な空気が高まる。何より上品で読みやすい日本語ながら翻訳小説的なひっかかりもある独特な文体が心地良い。
    現代の感覚で言うと薄味ではあるが、これならではの魅力も確かにある。

  • 文体は幻想的で、妖しく、古めかしい。

  • 復刊ありがとうー! タイトルからもちょっと彷彿とさせますが、吸血鬼をメインモチーフに置いた、ミステリ+ホラーな作品(帯に謳っている、警察小説、サイコパス辺りの要素は、そうかなぁ?と思う程度にしかないので期待しない方がいい)。
    作中、少年期~青年期と回想が進むにつれ、最初は匂わせる程度だった吸血鬼ネタがジワジワと現実味を帯びて迫ってくる感じが凄くイイ。(この情報を出していく塩梅が絶妙)
    某国大使館に住む美しい兄妹。東京の空襲、広島と生き抜いた「運が良い」主人公のぼく。読み方によってホラーにもミステリにも取れる。サクサク読めるしさすが小泉喜美子。

    『ダイナマイト円舞曲』もいつか復刊されるといいなぁ。

  • 1982年に刊行されたものの復刊。カバーに『幻の名作ベストテン』とある。
    傾向としては典型的な『好きな人はとても好きになるだろう』タイプだった。
    そういえば、著者の訳書は何冊か読んだことがあるが、小説は初めて読んだな〜。

  • 再読。
    以前は吸血鬼モノとして読み、まあまあ面白かった記憶があった。
    そういう知識があると楽しめるけど、まったくそういうのに興味がない人が読むと、最後のネタ明かしの部分をどう感じるのだろう。
    ○○かもしれないとあやふやにされると謎めいた雰囲気が出て面白いと思うけど、結局ファンタジーかよっと怒る人もいるかもしれない。自分は前者。もっとどっちかに振り切れていてもよかったのかも?

  • 青山墓地で起きた幼女殺害事件。収容された精神病院での容疑者の独白と、執念の捜査を行う刑事のストーリーが交互に展開する。容疑者の戦前の幼児期における当時は物語や映画の中でしか知らなかった青い瞳、金髪の可愛らしい外国人の幼い兄妹たちとの夢の様な交流と、その後の戦時下での悲惨な体験。ノスタルジックな回想を語る容疑者は知的でアンニュイな風貌で常に落ち着いているが、精神鑑定の結果に責任能力の有無が問われる。そこにドラキュラ伝説が絡んでいく。ラスト一行にゾッとした!だから土葬なのか…。ドラキュラ伝説を信じそうになってしまう。著者の文章がつくづく美しかったのが印象的だった。復刻版だからこその仄暗さもストーリーに陰影を与えている。

  • 精神科病棟に収容された囚人の幼年期から現在にいたるまでの独白と、幼女惨殺事件の犯人を追う警部の捜査過程とが交互に展開していく構成となっています。
    囚人の幼年期と、警部の捜査(現在)と時間帯のずれがあるため、この二つの話がどう組み合わさっていくのだろうと考えながら読み進めて事になるかと思います。
    全般を通し、あまり急展開といった場面は無いため、人によっては面白みに欠けると感じるかもしれません。
    最後の最後で、こういう展開に持っていったのかと思わせる内容だったため、事前に本作のテーマについては情報を入れずに読んだ方がより楽しめると感じました。

  • 青山墓地で起きた幼女惨殺事件。被告人は独房で奇妙な独白を始める。
    戦前、戦時下と金髪碧眼の兄妹と遊んだ思い出はいつの間にか狂気と魔性の物語になっていく。ミステリとホラーの噛み合わせが見事にマッチしており、長すぎず、短すぎない程よい小説となっている。

  • 実は読んでから20年以上経ち、その時めちゃくちゃハマって、それ以降、著者の作品を片っ端から探して読んでいたけれど、この本は貸したまま返ってこず。その後、絶版になっていたのが再販され、すかさず購入したものの、まだ読んでない。ゴシック、吸血鬼、そういうキーワードだけれど。

  •  1982(昭和57)年作。
     帯の宣伝文句に「復刊希望! 幻の名作ベストテン第2位」「ホラー×ミステリの隠れた大傑作がついに復刊」と書かれていて、「ふうん、そうなんだ」と買ってみた。
     通読してみて、なるほど、これは面白い。
     まあ、確かにミステリにもなっているが、それよりもホラー小説としてよく出来ている。ヴァンパイアという、確かに日本の風土には相性の悪い主題を使いながら、戦時に青春期を迎えた主人公の追想がなかなかの深みを持って描かれ、説得力があった。
     昭和20年春の東京大空襲の場面もなかなか鮮烈だ。あとがきを読むと、1934(昭和9)年生まれの作者も同様に空襲を体験したようだ。どうも私が最近読む小説にはしばしばこの「東京大空襲」の場面が登場するのは奇妙な暗合だ。
     この衝撃的な空襲と、そこに至る時代の暗がりとが、物語が暗みへと墜ちて行くプロセスとが同期して、見事な効果を生んでいる。
     良い小説。しかし、この作者は「これ1作きり」の人だったのかもしれない。

  • 幼女誘拐殺人を追う警察の視点と犯人の独白で進むストーリー。
    「このミステリーがすごい! 2014年版」の企画第2位の復刊。

    ミステリーともホラーともなんとも分類できない世界観。
    というより、少年時の耽美な回顧録といった印象が強い小説だったな。

  • 記録

  • 「犯人」の回想シーンや逮捕につながる経緯など、物語部分は普通。種明かしというか、推理パートの運び方はちょっと目新しくて、おっ、と思ったけど、それだけで、何だか物足りない感じで終わった。
    200906

  • 3

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著者プロフィール

1934 - 1985。推理作家、翻訳家。1963年に『弁護側の証人』でデビュー後、多くの作品や翻訳を手がけたほか、ミステリーに関するエッセイなども。歌舞伎好きとしても知られ、論考を残している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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