神の値段 (宝島社文庫)

著者 :
  • 宝島社
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感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800264893

作品紹介・あらすじ

マスコミはおろか関係者すら姿を知らない現代芸術家、川田無名。ある日、唯一無名の正体を知り、世界中で評価される彼の作品を発表してきた画廊経営者の唯子が何者かに殺されてしまう。犯人もわからず、無名の居所も知らない唯子のアシスタントの佐和子は、六億円を超えるとされる無名の傑作を守れるのか-。美術市場の光と影を描く、『このミス』大賞受賞のアート・サスペンスの新機軸。

感想・レビュー・書評

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  • また、美術とか分かってへんのに美術ミステリー読んでしまった…^^;
    何か、あらすじとか読んでると、つい…(^^;;
    なので、絵画に関する解説とかは、こういうもんか…としか分からない…
    でも、これは、オークションとか、アートのビジネス側からの話も多くて、結構、勉強になる。アートビジネスとか分かってない以前にそんなん買うお金が…

    美人でやり手のギャラリスト唯子さんが急に!
    犯人は、誰?
    基本、唯子さんしか会っていない芸術家 川田無名か?生きてるんか?
    ほんまに?
    絵の描き方も独特で、自分で描くより、指示して描かせるんやな。めっちゃ細かい指示みたいやけど。
    大きなお金が動くだけに、善人ばっかりの集まりではなく、怪しい(実際は分かりません〜)

    結局、芸術を愛する人とお金を愛する人との違いが、今回の犯罪を起こしたんかな?

  • 原田マハさんのアート小説が好きなので、他にもそういった系統の方はいないかなと思っていたところ見つけた著者。
    一色さゆりさんは藝大卒業後、ギャラリーや美術館で勤務しているそう。その著者が書いた現代アートミステリ。

    読みやすく、全く知らない現代アートの裏側をちょっと覗き見することもでき、またミステリとしても楽しめた。
    他の著作も読んでみたい。

  • 『アートは理解するものではなく、信じるものだと思います』

    『神の値段』の中にこんな言葉が出てきます。その言葉が出てくる場面を読んだとき、これまで生きてきた中で、なかなか理解しがたかったアートとそれを求める人たちの心情を、少し身近に感じられました。

    この言葉は初めて画廊で作品を買おうとする男性と、その作品を扱う画廊のオーナーの会話の場面で出てきます。
    感銘を受けた川田無名というアーチストの作品とはいえ、予算の10倍近くするものを買うかどうか迷う男性の客。その客に対し直感を信じるべきと促すオーナー。しかしこの作品を買った後に、もっと素晴らしいものに出会ったらと考えると……、と客は話して、なかなか決断しきれません。

    そこでオーナーは、自分も作品を買うときは同じ気持ちになるが、と前置きした上で、無名の素晴らしさを語ります。
    無名の作品を見る度に線や波のうねりを違うように感じ、そのたびに作品が好きになる。そこから作品との真の対話が始まる。そのような作品を自宅でいつでも目にすることができるなんて、究極の贅沢だと思いませんか、と。

    感情と本能の赴くままに読み進めてしまうような本やマンガ。あるいはこんなにも時間が経っていたのかと、見終えた後に時計を確認し呆然とする映像作品。そんな作品に出会うことがたまにあります。

    そうした作品に触れているとき、作品を理解しよう、なんて感情はありません。ただ感情や本能のままにその作品を読んだり観たりしています。そしてそうした体験にまた出会えることを信じ、本やマンガ、映画やアニメ全体が好きになり、そして好きな作家や監督、そして何度も読みたい、観たい作品が自分の中で出来てくるのだと思います。

    もちろん値段なんかを考えるとスケールは全然違うし、第三者から見たらこの喩えはあんまりピンとこないのかもしれないけれど、それでも自分はアートに魅せられた登場人物たちに共感を覚えました。

    そして芸術なんてまったく分からないのに、たまに美術館に行ったりするのも、すごいな、上手いな、というところを越えた、そういう体験に出会えるかもしれないゆえなのかも、と思ったりもします。

    マスコミどころか関係者もほとんどが姿も顔も知らない、世界的なアーティストの川田無名。そんな無名の正体を知る画廊経営者であり、無名とタッグを組み作品を売り込んできた、ギャラリー経営者の唯子が殺害される。
    そして唯子のアシスタントの佐和子は、事件に迫る一方でやり手の経営者だった唯子の仕事を引き継ぐことになります。

    正直言うと、ミステリとしての完成度は決して高くないと思います。アート世界ならではの犯人の迫り方だったり、芸術家とアトリエの職人たちの関係性の話は面白かったものの、
    展開はゆっくりで、殺人事件が途中で脇に置かれた展開が続くように感じ、結末でどどっと帳尻合わせのように謎解きが始まるのは、ミステリとしてはちょっと寂しい感じがします。

    ただ、アートに関わる人々を描いた作品としては面白い。アートと相成れないように見えるマネーゲームのからくりであったり、現代アートの創作の仕組みや、アーチストのブランドを作り上げるための、売り方の工夫であったりと、知らない世界や知識を作品に織り込んでいく書き方が上手かったと思います。

    姿を現さない無名の個性を、伝聞や彼の描いた作品、彼の文章から浮かび上がらせていくのも、想像力をかき立てられるようで面白く、そして佐和子が苦労、奮闘しながらも画廊の仕事をなんとか成立させようとする描写も、一種のお仕事小説のようでこれも面白い。

    終盤で佐和子は、アートフェアとオークションに参加するため香港へ行きます。しかしフェアに向けてのブースの設営はトラブル続きで、佐和子は弱気になりながらも、なんとか無名の作品を配置し終えます。そして改めてブースを眺めると……

    この場面が最もこの小説の中で好きでした。ある瞬間に突然に作品の見え方が変わり、そして佐和子の胸に押し寄せてくる感情と思い、そして決意。
    無名の作品の描写が素晴らしかったので、佐和子がそれに感情を揺り動かされるのも、アートなんてとんと分からない自分でも、なんとなく納得してしまいます。

    そして、無名の作品がオークションにかけられる場面も面白かった。オークションに出版される作品の描写が丁寧でリアルなので、それを競り落とそうとするオークション会場の興奮も想像しやすい。
    そして徐々に値段がつり上がり、オークションの会場中が不気味な静けさに包まれていく。そんな様子も自然と浮かんできました。

    ミステリとしては物足りなさはあるにはあったのですが、それを上回る著者の一色さゆりさんのアートの知識、そして愛や情熱、思いが感じられ、それが自分の中にも同調し大きな波を起こしたような、そんな作品でした。

    第14回このミステリーがすごい!大賞 〈大賞〉


  • その姿を見せない謎の画家、川田無名。

    その無名と唯一会うことができる唯子は、
    無名の画家としての知名度を上げて、
    その絵を売ることに心血を注いでいたが
    突然死んでしまう。

    唯子のギャラリーに勤める佐和子は、
    彼女が殺されたと知り愕然とする。

    佐和子は唯子がいなくなったあと、
    その意思を継ぎ残された業務に忙殺される中、
    何故、唯子が殺されなけばならなかったのか
    犯人は誰なのか知るために無名という
    画家の秘密に近づいていく。


    絵画の世界、アートオークションなど、
    見ることのない世界が描かれるので、
    馴染みが無さすぎて途中読み疲れしたが、
    犯人、動機、方法など最後後味はよかった。



  • 何気なく手にした作品
    大それたトリックがある訳でもなぃしミステリー要素も少ないのに、全く無知なアートの世界を垣間見る事が出来てあっと言う間に読めた。

    画家-ギャラリー-コレクター 勿論 ほんの一部 の話だろぅけど 1つの作品に群がる魑魅魍魎 ((( ;゚Д゚)))

    世間の表に出てくる事のなぃ 天才画家はいかにして【神】になりうるのか?

    アート業界に対する愛も感じる。
    美術館に行きたくなる作品でした♪

  • 現代アートとミステリーを題材にした「このミス大賞」。姿を見せない作家の謎に引っ張られて一気に読みました。ギャラリーと作家の関係性や、アートビジネスについても勉強になりました。
    しかし、作品を描かない作家って…映画の監督みたいなものなのでしょうか。それを何億円で売るというのがギャラリーの手腕なのでしょうか。よく分からないのでもう少しこの業界について知りたくなりました。
    もし、ピカソやゴッホの作品がアトリエのスタッフによって描かれたらそこまで値段がついたのか…

  • 現代アートの裏側を描く美術ミステリー。

    現代アートって、幅が広すぎて僕には難しく、守備範囲でないのですが、この小説は楽しく読めました。
    アート小説と言えば、原田マハさん!
    な僕ですが、昨年くらいに読んだ一色さゆりさんの「熊沢アート心療所の謎解きカルテ 絵に隠された記憶」が良かったので、今回はデビュー作でもあるこちらの小説を読んでみました。

    アートは、純粋に観て楽しむものというだけでなく、ビジネスとの繋がりも強く、特に現代アートでは、レディメイドやアーティスト自身が手掛けていない作品など、言いようによっては、芸術的価値があってないようなものに目の回るような値段がつけられたりするようです

  • ミステリー…?
    アート業界は馴染みが無く、こういう仕組みなのかと勉強にはなったけど、、、アートの世界の方が強くて、ミステリー部分が薄く感じた。

  • 美術・アート業界という、一般にはあまり馴染みのない世界が舞台。世界的に評価の高いアーティストの、何億という高値で取引される作品たち。大きな金額が動けば、そこには必ず人の欲やエゴが絡み、不穏な輩も現れてくるのは世の習い。その「やばい部分」に果敢に足を踏み入れ、テーマとして取り上げた意欲作である。

    もちろんフィクションでアリ、虚実ない交ぜではあろうが、参考とした美術品のオークションや、怪しいアジアの大富豪とのやり取りなど、知らない者にも「ものすごいリアリティ」を感じさせてくれる。

    「人前に姿を現さない」孤高の天才作家と、そのマネジメントを一手に引き受けているやり手美女。その美女のアシスタントを務める若い女性が主人公で、「大きなうねり」に翻弄される様がまたリアル。

    ミステリなので殺人事件が起こるが、その「謎解き」がメインのテーマではない...のではなかろうか。アート業界の表裏を描く「お仕事小説」でもあり、最後の最後で気づかされるが、主人公の「成長譚」でもあるのだ。

    「狐と狸の化かし合い」のような緊迫したストーリーの中で、読者へのちょっとした「プレゼント」のようなエピソードも挟み込まれていて、盛りだくさんであり、かつ抜かりがない(^ ^

    本作がデビュー作らしいが、とてもそうは思えない「手練れ」と見た。他の作品もぜひ読んでみたくなる(^ ^

  • 美術界ミステリー。作者が美術系に造詣深いから、その世界の詳細がありありと紡ぎ出されてる感じ。
    謎に包まれた画家、川田無名の作品をめぐるミステリーだけど、オーナーの唯子や主人公の佐和子のキャラも良かったし、無名の作品が文字でしか想像できないけど、どんな作品なのか見てみたいなと思わせられた。

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著者プロフィール

1988年、京都府生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。香港中文大学大学院修了。2015年、『神の値段』で第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞して作家デビューを果たす。主な著書に『ピカソになれない私たち』、『コンサバター 大英博物館の天才修復士』からつづく「コンサバター」シリーズ、『飛石を渡れば』など。近著に『カンヴァスの恋人たち』がある。

「2023年 『光をえがく人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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