どこかでベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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本棚登録 : 745
レビュー : 83
  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800271044

作品紹介・あらすじ

加茂北高校音楽科に転入した岬洋介は、その卓越したピアノ演奏でたちまちクラスの面々を魅了する。しかしその才能は羨望と妬みをも集め、クラスメイトの岩倉にいじめられていた岬は、岩倉が他殺体で見つかったことで殺人の容疑をかけられる。憎悪を向けられる岬は自らの嫌疑を晴らすため、級友の鷹村とともに"最初の事件"に立ち向かう。その最中、岬のピアニスト人生を左右する悲運が…。

感想・レビュー・書評

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  • 岬洋介エピソード0のようですね(このシリーズ、まだ読んでなかったので、これを機に読み始めたいかな)。地方の高校音楽科に転校してきた岬。のんびりとしたクラスの中で天才的な才能を発揮する。天災が起き、岬は危険を冒し救助のための行動に出るが、その時、岬をいじめていた男子生徒が殺され、容疑者とされてしまう。犯人は誰か、そして岬の将来を左右する病魔も襲いかかり…。ミステリーではあるけれど、才能が主題な気がする。圧倒的な天才がやってきたときの周りの反応。劣等感、嫉妬、自分の才能を自覚すること、それでも努力し続けること。社会的な問題を織り交ぜて書く中山さん、今回は芸術やらスポーツで頂点を目指そうとする世界の過酷さ、残酷さ、軋轢を描き、読ませました、音楽の流れに乗りながら、最後までリズム良く読めました、中山さんの作品をさらに読みたくなるような勢いです。

  • 天才ピアニストにして名探偵の岬洋介が、高校時代に遭遇し、その真相を暴いた最初の事件。
    メーンは殺人事件の犯人捜しだが、むしろ、転校した高校の音楽科で、岬とクラスメートとの間でその才能の違いによる諍いを巡る、青春小説の趣き。
    『連続殺人鬼カエル男』を読んだ直後では、これが同じ作者の作品だとは、とても思えない。
    そしていつもながら圧巻なのは、岬のピアノ演奏を言語で表す著者の語彙の豊潤なこと。恩田陸著『蜜蜂と遠雷』と比較してしまう読者も?
    彼が弾く『月光』と『悲愴』の場面では、家にあったレコード(ピアノ・フチードリヒ・グルダ)を思わずかけながら、読んでいた。
    しかし、演奏のどの部分が著者の文章に対応するのか、半可通の読み手にはわからなかったのが実情(笑)。

  • 【抜粋】
    知悉

    凡人がどれだけ努力し、どれだけの涙と汗を流そうとも、決して頂点に届かない最後の一歩。

    おそらく岬洋介という男は徹底的に無自覚なのだ。
    岬の周囲にはまるで結界が張り巡らされているようだった。嫉妬と憎悪、羨望と憧憬、排斥と白眼。様々な思惑が襲ってきても岬自身は何の痛痒も感じていないらしい。

    全員じゃなくたっていい。誰か一人でも自分を分かってくれて、感情を共有できる。それで充分じゃないか。

    孤独だから、自分の努力が形やカネで賞賛されないから縋りついた偏見

    逆に羨ましいとか他人が成功したとかの理由で選んだら苦労するし、正しい努力ができなくなる

    遥子の何が自分を惹きつけたのか、今となっては説明が難しい。己の持ち得ないものに憧れがあったのかもしれないし、あるいは魔が差したのかもしれない。確かなことは、遥子とともに暮らした十数年間が不思議に充実していた事実だった。

    本棚は持ち物の知性を表し、部屋の散らかり具合は精神状態を表す。

    【感想】
    岬洋介が魅力的。凡人が昏くショボすぎる。
    才能とは。。

  • 2017年300冊目!
    節目の作品に何を読もうか、悩んだが、読み慣れたシリーズものに。
    前作のショパンコンクールでの岬の様子を偶然目にした高校時代の同級生が、岬が高校時代に遭遇した事件を振り返る形で語られる。
    豪雨被害の中で、クラスメイトが殺害される。孤立した学校から救援を呼ぶ為、一人学校を脱出した岬は殺人の容疑をかけられる。その容疑を晴らすため、独自の捜査に乗り出す岬。そんな岬に振り回せれる語り部の「俺」。
    高校時代から、岬は岬らしい。事件そのものに派手さはないが、地方都市に強引に建設された高校の音楽科に通う生徒の心の闇が深い。その闇の深さに負けない岬と、その闇を問う担任の棚橋先生の言葉がとても重い。
    努力することさえせずに、諦めてしまう人生を送っている人に読ませたい作品。
    そして、ラスト。久々に「これぞ、中山七里!」と思わず声に出てしまった。中山七里はやっぱりこうでなくちゃ!

  • ■天才ピアニスト・岬洋介、最初の事件!

    加茂北高校音楽科に転入した岬洋介は、その卓越したピアノ演奏でたちまちクラスの面々を魅了する。しかしその才能は羨望と妬みをも集め、クラスメイトの岩倉にいじめられていた岬は、岩倉が他殺体で見つかったことで殺人の容疑をかけられる。憎悪を向けられる岬は自らの嫌疑を晴らすため、級友の鷹村とともに“最初の事件”に立ち向かう。その最中、岬のピアニスト人生を左右する悲運が……。

  • 『栴檀は双葉より芳し。』
    あの岬洋介氏の高校生時代を描く青春ミステリー。
    おそらく岬氏が、最初に手掛けた事件ではないでしょうか。

    まるで、小学生の運動会に、オリンピックのメダリストが参加したよう...
    彼のピアノの技術は、他の同級生と余りに桁外れであった。それ故に、彼は同級生のいじめの対象になってしまう。

    同級生を助けるため、豪雨の中、飛び出した彼に投げられたのは、感謝の言葉ではなく、犯罪者の眼差しであった。なんと、豪雨の中でいじめッ子の遺体が発見されるという異常事態が、...

    ミステリーの要素は少ないですが、彼の際立つ才能の萌芽や、突然の難病で苦しむ姿など、人としての面も描かれており、胸を打ちます。

    また、最終章では、検事である父親の難問をスラリと解く聡明さも見せています。

  • 新設高校の音楽科クラスに天才的なピアノの才能を持つ生徒・岬洋介が転校してきた。
    彼は卓越したピアノ演奏でたちまちクラスメイトを魅了するが、その才能は羨望と嫉妬をも集めてしまう。
    ある日、豪雨により土砂崩れが起き音楽科の一同は校内に閉じ込められてしまうが、岬の勇気ある行動によって全員救助される。
    だが同級生が死体で発見され、岬は容疑者となってしまう・・・。

    高校生時代の岬の初事件を描いたストーリー。

    このシリーズはいつもミステリ部分はおまけで、素晴らしい音楽描写を楽しむことがメインとなっています(そういう方は多いのではなかろうか…)。
    なのですが、今作はそれに加え、「才能」を持つ者と持たざる者の葛藤を執拗に描いており、読み応えがありました。

    凡人がどれだけの努力をしても到達できない境地に、生まれながらの天才である岬は軽々と達しているという現実の残酷さ。
    無自覚な岬にそれをまざまざと近くで見せつけられた同級生たちの嫉妬と劣等感について丁寧に描かれています。

    作中の同級生たちは圧倒的な才能を前にした時、嫉妬して岬をいじめたり距離をおいたりするのですが、愚かだと思いつつ、自分もそんな場面に直面したら平静でいられるかはわからないなと思いました。
    己を客観視して折り合いをつけるというのが正しいやり方なのでしょうが、それができる人間ばかりとは限らないですよね。
    10代の多感な時期に味わう挫折の味はさぞかし苦かろう…と思うけど、若いから違う道を模索できるし立て直しも早いよね…と、岬よりもついつい同級生たちへ同情してしまいました。

    また、天才である岬にも彼なりの悩みや不幸があり、タイトルの「ベートーヴェン」が示すような展開になるにつれ、読んでいてやるせなくなりました。
    「夢をあきらめるのも勇気がいる」という言葉が胸にしみます。

  • 生まれながらの天才も、天才として生きていくには当人にしか解らない挫折や苦悩がありました。病気、確執、殺人容疑、渇望と迫害。ある有名画家は最大の武器である目を失明した。岬洋介もまた音楽家として致命傷である難聴に悩まされた。優越感と劣等感。芸術の世界は美しくも醜い。誰かの失敗を笑った者をまた誰かが踏み付けていくのである。それでも難聴になったルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは作曲家として多くの名曲を残した。岬も幾度の試練に絶望しようと、必ずまたどこかで不死鳥のごとく異彩を放つ。彼のピアノが世界を人を救うことを、まだこの頃は誰も知らない。

  • 岬シリーズ第4弾。
    高校生の岬の話。
    視点は岬の同級生。冒頭でショパンの一幕があって、思い出してうっかり涙がにじむ。。。

    高校生とは思えない洞察力とピアノの技術。
    無自覚な岬の才能に打ちのめされ、嫉妬と絶望に抗うクラスメイト達に目の敵にされる岬。
    よく無事に今まで学生生活送ってきたな…!
    というくらい周りから浮いている高校生だ。

    所々で出てくる、才能と努力の話。
    皆オンリーワンだけど、世界に出れば、夢物語や綺麗事が通じない、運や実力、才能の差に直面する。

    芸術の世界では協調性よりも個性が重視されるけど、それでも才能と、それを磨くために厳しい訓練をし続けること、どちらも持たなければ生き残れない。

    脱出不可能な陸の孤島で起きた殺人ミステリーのはずなのに、なんだか途中までアスリートの自伝や、自己啓発本を読んでるような気持ちになった。

    岬の耳の話がキーなのに、岬の絶望より、クラスメイト達の葛藤と人間臭さにより注視してしまった。

    あとは、岬のピアノを弾くシーンを読みながら、ベートーヴェンの月光を聞くと、その曲表現描写がとっても細やかだと発見できる。

  • 岬洋介シリーズのエピソードゼロ。クラスメイトの殺人事件に巻き込まれた岬先生の話で、何故『ベートーヴェン』なのか、勘が鋭い人は察することでしょう。ミステリーというよりは、音楽科という特殊なコースに通う学生たちの青春ものとして楽しめました。また文庫版には岬先生の父親、岬恭平が主人公の書下ろし短編『協奏曲』もあり、御子柴礼司が名前だけ登場というサービス満点仕様になってます。

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著者プロフィール

中山 七里 (なかやま しちり)
1961年生まれ、岐阜県出身。男性。幼少の頃から読書が趣味で、高校時代から執筆を開始。花園大学文学部国文学科在学中に江戸川乱歩賞に応募したこともあった。
就職後は執筆から離れていたが、島田荘司を生で見た体験から執筆活動を再開。2009年、第8回『このミステリーがすごい!』大賞で『さよならドビュッシー』と『災厄の季節』の2作が最終選考にダブルエントリーされ、前者で大賞を獲得して48歳で小説家デビュー。後者も、「読みたい!」との声が続出したため、『連続殺人鬼カエル男』と改題し、2011年に文庫本として出版される事となった。
代表作に『さよならドビュッシー』などの「岬洋介シリーズ」、『贖罪の奏鳴曲』にはじまる「御子柴礼司シリーズ」。多くの作品が映画・テレビドラマ化されている。

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