- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784800271105
感想・レビュー・書評
-
『好き』のスタートはいつだって物真似から始まる。
僕も学生時代、いくつのスターたちに憧れ、なりきってきただろう(笑)
お腹に当てた両手の平を見て
『なんじゃ、こりゃぁぁぁーっ!』の松田優作。
『寝たふりぃ~してる間にぃ~出ていってくれぇぇ~♪』で
シルクハットを華麗に客席に投げた
スーパースター、沢田研二(ジュリー)。
くわえタバコで肩をすくめながら
ルーズにギターを弾く
ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズ。
ボギーに憧れ親指で唇を撫でる仕草が決まってた
映画『勝手にしやがれ』のジャン=ポール・ベルモンド。
『怒るで、しかしぃ』『メガネ…メガネ』の口癖が
クラスで大流行した
浪花の天才漫才師・横山やすし。
単身アメリカに渡り、お尻をぷりっと打者に向けるトルネード投法で
メジャーリーグ相手に三振の山を築いた野茂英雄。
『スコーン、スコーン、コイケヤスコーン♪』
『スコーン、スコーン、コイケヤスコーン♪』
『カリッと サクッと おいしいスコーン♪』その強烈なインパクトと怒濤の勢いに
誰もがワケも分からず口ずさんでしまった(笑)
いまや伝説の湖池屋『スコーン』のCM。
などなど。
(最後はシャレです笑)
そして…
そんな『好き』から始まる行為は
ときにオリジナルを凌駕することもあるのである…。
ということで、この本。
誰もが知っている文豪や著名人、ミュージシャン、Instagram風、雑誌風、迷惑メール風など、100通りの文体で
カップ焼きそばの作り方が書かれている。
(てか、ほんまにカップ焼きそばの作り方しか書いてない笑)
昔から、『好きこそものの上手なれ』とはいうけれど、
そんな好きからくる物真似がここまで完コピだと、
もはや笑うしかないし(笑)、
これはもう、紛うことなき『愛』なのだ。
好きな作家や馴染みのある作家なら
確実に笑えるし、
知らない作家であっても、
(たとえ下らない内容であっても笑)
文体から興味が湧いて
なぜかその人の作品を読んでみたくなるから、
あ~ら不思議(笑)
個人的にツボだったのは、
初期のニヒルな村上春樹になりきった
『1973年のカップ焼きそば』、
めんどくさいことをまた言ってる(笑)
星野源的ニュアンスが笑える
『焼きそば恥だがカップ立つ』、
ウキウキ通りをペヤング通りに変えた歌詞のセンスに唸った(笑)
小沢建二の大ヒット曲のパロディ
『痛快ウキウキ焼きそば通り』、
80年代に青春を送ったチェリーボーイたちなら
誰もが一度は読んだであろう(笑)
雑誌『POPEYE』の文体を真似た
『カップ焼きそばは、日本発の世界的大発明なのだ!』、
読んでてなぜかドキドキした自分が恥ずかしい(笑)
官能小説家・宇能鴻一郎のパロディ
『食欲の悦び』、
アララギ君の一人語りが脳内で繰り広げられる(声は勿論、神谷浩史!)
西尾維新の『食物語』、
学生時代、男の子ならお世話になった、
あの「週間プレイボーイ」がよみがえる!(笑)
『カップ焼きそばクン(18)』、
懐かしい文体に不覚にもちょっと泣きそうになった (汗)
中島らもの
『カップ焼きそばよりもトリスください』、
かな~。
それにしても、下らない(笑)
しかし、ここまで様々な作家の文体や
創作者の醸し出す雰囲気を模倣できるということは
すべての作品を読みこみ、
文学や本という表現が好きじゃなきゃ到底できないこと。
(その労力たるや!)
それに僕は、下らないことに全力を懸ける大人がけっこう好きだ。
くだらないことに
一所懸命になれる心が好きだ。
カッコ悪いということは、実はカッコいいのである。
やっぱ、
『愛なんだよ、愛!』 -
私はものすごく面白かった!
すごい笑った!
カップ焼きそばの作り方でしかないのに確かに書きそう!って思わせてくれるリアリティと、それぞれの文豪や雑誌やよく見かける文章が、すなわち文章が本当に好きなんだなと思わせてくれて幸せになれる。
-
タイトルと表紙で面白そうな予感。
知ってる作家や人物には、それっぽい!雰囲気出てるー!と、にまにましながら楽しんだ。
元ネタというか、下敷きになった作品がわかると猶楽しめる。
1人だけ物申したい。
ホームズは紅茶の国の人だから、あの推理では甘い。ワトスン君、感心してる場合じゃないよ。 -
もし、文豪がカップ焼きそばの作り方を書いたら。という設定で、1~2ページの短文で表現されている。
とにかく、ぷっと笑ってしまう可笑しさ。
文豪だけではなく、雑誌の文面やブロガーまで多種多様。
「女性向け自己啓発エッセイ」とか、「自己啓発本」とかあるあるの感じが良く出ていて笑ってしまう。使い古された定型フレーズにあふれてるんだなと。
これは、仕事においても編集者など文章に関わっているからこその鋭い観察眼なのでしょう。
「カップ焼きそばの作り方」という題材の取り方、企画が絶妙なのだろう、手順が多い、麺、かやく、ソースというシンプルな登場人物たち。湯切りという行為。意外と物語性を高められる。文学だろうが、週刊プレイボーイだろうが表現できてしまう。
大学の先輩で、色々な雑誌の文体を縦横無尽に真似できる人がいたが、それを思い出した。言葉に対する感覚が優ってるんだなと、しみじみ思う。
また、物まね芸人と一緒で、基本的には対象のことを好きなのだと思う。(時に毒のある、バカにしてるなこれ、というようなものもあるが、親しみ込めて、愛憎半ばで表現しているのだろう。)
蓮実重彦や村上龍と坂本龍一の対談における難しい言葉が空回りしている感じも本人が自信満々だけに面白い。
『暮らしの手帖』の少し思いつめたラディカルさ。又吉は完コピなのではと思った。
自分が親しみ深い(思入れが深い?)、志賀直哉、ドストエフスキー、rockin'onなどは、不思議と違和感を感じてしまう。
ただ、田中圭一の漫画カバーはどれも秀逸。西原、青木雄二など、本物みたい。さすがプロ。 -
2回目。
ビジュアル系と女性向けエッセイと、求人広告と、インスタがすき。 -
文体模写による、100通りのカップ焼きそばの作り方。当初は「ふーん、売れてるなぁ」と横目で見ている程度だったが、試しに手に取ってみたら、その乗り移りっぷりが面白くて!決定打となったのは星野源だった。文豪から雑誌の文体、ビジネスメールや迷惑メールまで、多彩な憑依っぷりがお見事です。元ネタを知らないと楽しめないかもしれないのと、延々カップ焼きそばの作り方が続くので胸焼けしそうになるのが難点だが(だから読了まで時間がかかった)、軽い気持ちで楽しめる。田中圭一さんのイラストもさすがの似せっぷり!
ラストで、各社のカップ焼きそばの作り方が載っていて、ちょっと驚く。(そもそものオリジナルなんだけど。)そういえばこれまで各社の文体の相違など気にも留めなかったなと…新鮮な気持ちになった。
くだらないけど、ちょいちょい読み返したくなるかも。 -
もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら
著作者:神田桂一
発行者:宝島社
タイムライン
http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
読めば爆笑執達の文体模倣連発。 -
地下鉄で読んでいたけど、これは危うく人前で噴き出しそうになった。
この著者のような人たちが、将来AIクリエーターになるんだろうな。この本に取り上げられた文豪達をすべて知っていれば、もっと面白いんだろうけど、読んだことがなくてもモノマネがうまい事が想像つく。このような特徴を抽出できる人が、人の特徴をAIに教え、その人の成りきりAIを生み出すんでしょう。
ともかくサイコーです。 -
目の付け所!
発売後から話題になっていましたが、思い立って今更ですが読了。全ての元ネタを知っている訳ではなかったのですが、知らないものでも「あぁ、こういう文体なのか」とわかって面白いですね。
「小説+モノマネ」という組み合わせを発想したところが第一ですが、意外性があって怒られにくい(笑 カップ焼きそばの作り方という題材を選んだところや、キャッチーで幅のあるモノマネ相手の選択(文豪だけだと文学好きにしか受けないですからね)もまた上手い。
モノマネ相手へのリスペクトが実際あるのかどうかは不明ですが、ちゃんとしたモノマネだ!というのが感想。元ネタに忖度し始めると途端につまらなくなるもので、そんなコトないプロの作品でした。個人的に大好きなオザケンのくだりはやっつけ感がありましたが…。
読み終わって思ったのは、「元ネタに触れてみたい」よりも「カップ焼きそば食べたい」の方が強いなぁと(笑
それでも、普段本を読まない人にも手に取ってもらう効果はあるんじゃないかと。たとえ継続的な読書週間にはならなくても。
(誰かの文体をマネして感想が書ければ良かったのですが、難しいですね。そう思うと、やっぱ本著は凄いんだなぁ) -
文豪からヒカキン、インスタグラムまであらゆる文体で綴られるカップ焼きそばの作り方。このコラボレーションを考え出した才能に乾杯(^-^)v
読んだことのない作家やジャンルにも興味が湧く、新しい形のブックガイドとも言える。
先程はいいね!だけでなく親切にコメントまでありがとう御座いました。
こちらもご挨拶したく、お邪...
先程はいいね!だけでなく親切にコメントまでありがとう御座いました。
こちらもご挨拶したく、お邪魔させていただきます。
ブクログでは、読ませるレビューが多く、また人と出会い、さらに新しい本とも出会える場でもあり、すごく気に入っています。
それにみなさんいろいろな語り方をされていますよね。
円軌道の外さんのレビューも面白く読ませて頂いています。なので、いいね!しました。
本というのは、人の性格やバックボーンすら見せてしまうかもしれません。
小生からすると周りは個性豊かな人たちばかり。
円軌道の外さんも個性的に見受けられました。
この作品もとても面白そうに思います。
松岡正剛氏の千夜千冊で取り上げられていましたが、まるでレーモン・クノーの文体練習の実践編のようです。
文体によって人が出てくるのをこの本は教えてくれそうですよね。
まったりレビューしたためてゆくつもりです。
豆腐メンタルなのでたまにネガティブになったりポジティブになったりですが、いろいろに書き方ができるのではと僭越ながら実験的な試みもしてゆきたいと思っています。
よろしくお願いいたします。
それでわんこ!
今週は東京は久びさに大雪が降ってうちの町でも
25センチほど積りました。
僕は昼間は便...
今週は東京は久びさに大雪が降ってうちの町でも
25センチほど積りました。
僕は昼間は便利屋の仕事をやっているのですが、
今週は雪かきの依頼や夜逃げの引っ越し仕事や遺体の出た部屋の掃除など、かなりバタバタと忙しくしておりました。
たくさんのポチを頂きながら、
お礼が遅くなりホンマすいませんでした!
読書猫さんの仰有る通りだと思います。
僕も『文体こそが人なり』と常々思っています!
過ごしてきた環境や今までの経験や人との触れあいの記憶が、
その人を作るし、
書く人それぞれの文体を作るのではないでしょうか。
ブクログは本当にいろんな人と交流ができるし、単純に楽しいですよね(笑)
なんと言っても自分の『好き』がカブる人たちばかりなので、
お互い共感もしやすいし、
やっぱ好きを語る人たちの文章を読むのは、嬉しくなります。
それに僕は『我以外みな師なり』と思っているので、人が書いたレビューを読んだり、考えかたを聞いたりするのは
すごく勉強になるんです。
あはは(笑)、いやぁ~、僕って個性的ですか?
自分では分からないし、そう見えてるならとても嬉しく思います(笑)
レビューなんて、人と違ってナンボだし、
逸脱しなきゃ、個性とは呼べないと思って生きてきたので、
表現者としては、迎合するのではなく、
常に『逸脱すること』を意識しながら今も文章を書いてます。
読書猫さんの文体も充分に個性的だし、
僕は好きですよ。
正直だし、血が通ってる文章だと思うし。
何より、レビューを見ただけで、
コレは読書猫さんが書いたものだって分かりますよね。
あはは(笑)、僕もすぐにレビュー書けなくなるし、
大丈夫ですよ。
落ち込んでいたとしても、自分に正直に書いた文章の方が
実は読む方も共感できるのです。
逆に読む人を意識し過ぎて
体裁を整えた文章は、心の深いところにはまったく響かないですし。
実験的な試みにも期待してます!(笑)
ではでは、これからもよろしくお願いします!