がん消滅の罠 完全寛解の謎 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)
- 宝島社 (2018年1月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
- / ISBN・EAN: 9784800279828
作品紹介・あらすじ
呼吸器内科の夏目医師は生命保険会社勤務の友人からある指摘を受ける。夏目が余命半年の宣告をした肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金を受け取った後も生存、病巣も消え去っているという。同様の保険金支払いが続けて起きており、今回で四例目。不審に感じた夏目は同僚の羽島と調査を始める。連続する奇妙ながん消失の謎。がん治療の世界で何が起こっているのだろうか-。
感想・レビュー・書評
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面白かった!
癌をテーマにした医療ミステリー。
第15回「このミステリーがすごい」大賞受賞作品
「このミス」受賞作品って当たり外れがありますが、これは、当たりだと思います(笑)
ストーリとしては、「がん」が消滅する謎を追いかける話となっています。
余命半年と診断された肺腺がん患者がリビングニーズ特約で生前給付金を受け取った後も生存し、癌が治ってしまった事例が発生。そして、同じような事例が4例あるということで、調査が始まります。
なぜ、余命宣告される様な癌が治るのか?
そしてそれにかかわる医療機関。
学会では無名のその機関が高額な治療費とともに癌治療の実績があることが明らかになっていきます。
背後には一体何が行われているのか?
といった展開です。
専門用語のオンパレードでちょっと厳しいところもありますが、ストーリ展開としてはわかりやすい!
黒幕は誰?っていうのは最初にわかりますが、その動機がちょっと理解できません(笑)。その理由でそこまでやる?(笑)
まぁ、本書では、黒幕やその動機がどうこうっていうようなものではないでしょう。
メインはやはり、どうしてその医療機関では癌が治るのか?っと言うところにあると思います。
本書で語られている手法がどこまでがフィクションでどこまでが今の科学で実現できるのか?はわかりませんが、説得力あります。
がんについて、とても勉強になる物語でした。
やっぱり癌検診って大事! -
呼吸器内科医である夏目は、保険会社の友人からある指摘を受けた。夏目が余命半年の宣告をした肺がん患者が生前給付金を受け取った後、がんが消えたという。しかもそれが何例も続いていて──。
「殺人事件ならぬ活人事件というわけだね」
という斬新な切り口で描かれる医療ミステリ!夏目は同僚の羽島とともにがん消失の謎へと挑む!がんとはそもそも何?治療法は?新薬承認とは?がん保険の内容は?など盛りだくさんで勉強にもなる。
知識の物量はあるものの、読みやすく嚙み砕いてくれて面白い講義を聞いているようだった。特に新薬承認の副作用を治験だけで正確に把握するのは難しいという部分はなるほどと。確かに1万人に1人という副作用を治験だけで検出しようと思ったら、承認されるまでに何十年とかかっちゃうもんね…。
「医師にはできず、医師でなければできず、そしてどんな医師にも成し遂げられなかったこと」をするために大学を出た恩師・西條。その言葉の意味とは?!がんを消滅させる治療というと希望に映るけど、秘められた謎と思惑の深さは絶望的。畳みかける終盤はがんのように闇が分裂していくようだった。
単行本で買った以来の再読を文庫版にて。その時より理解が進んだ気がする。犯人の動機がどうしてこうなった感があるものの、その過去を紐解くといろいろ考えさせられる。このまま文庫化された続編を読むつもり。読み返しておいてよかった!硬派な医療ミステリを求めている方にはお薦め。 -
岩木一麻さんの作家デビュー作となる「がん消滅の罠 完全寛解の謎」は、2016年の第15回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品でもあります。
ストーリーも凄いのですが、このトリックを考えるには医療に関する専門的な知識がどれだけ必要なのか...と思って著者の略歴を見てみたら、大学も大学院も医療系ではなかったものの、国立がん研究センターや放射線医学総合研究所でがんの研究に従事し、医療系の出版社勤務、とあり納得。
(現在もこの出版社に在籍しているのかどうかはわかりませんが)
実際の医療現場でこのトリックを模倣することがないことを祈ります。 -
すごく面白くて、読み応えのある作品でした!癌の病巣が消える‥それを生命保険面から見てみると‥この発想スゴい!と思いました。
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本当にできそうな恐怖心をあおる作品
さすが、その道のプロが描くとリアルでひきこまれた -
『このミステリーがすごい!』大賞、第15回大賞受賞作。
ガンが何故消えたのか、という今までにない角度の謎解きだ。
がんの最新研究についての記述は興味深い。
NHKスペシャル「人体」でも扱われていた、免疫系の力と、それを突破するがん細胞の巧妙さには驚かされたものだが、まさかここでそれを再度目にするとは!
124〜125頁を参照されたい。
さて、私個人が感じるに、各登場人物たちは際立って魅力的とはいえない。
特に主人公、夏目の花というか、オーラというか、そういったものが弱い。
あえていうなら宇垣医師とその患者柳沢は好きだが、とにかく主人公の影が薄すぎる。
「いい人」とは往々にしてそんなものかもしれないが。
物語は真犯人を追い詰めて、そして、死で終わる。
ネタバレするな!だって?
バラすわけがない。
そこで終わるんだったら、きっと「このミス」大賞ではなかっただろう。
結末はそんなわけで、一回で理解できなくて、少し前に戻ってもう一度読み直した。
とても、不気味な結末だった。
自分たちが目指す社会の実現、それはとても美しい言葉だし、理想を描く素晴らしさを説くが、一方で美辞麗句の後ろに隠された「正義」の危うさを考えさせられたのだ。 -
私のガンへの認識は、発生する場所と発見する時期により治療する事が出来ない病気。ルールを無視する増殖力の強い細胞。永遠の命へのヒント。
本書はガンにより余命宣告された末期癌の患者が死なないどころか完治する事で、世間を全く騒がせない関係者達に疑問程度の波紋を与える事件?が発生する!
主人公達はそのガン消失のトリックを探っていくうちにある組織が事件に関与している事に気がつく・・・
何を持って本格化とは置いといて『本格医療ミステリー』
解説にあった作者の次作も楽しみです! -
おもしろい。めちゃくちゃにおもしろい。
がんの仕組みがよくわかる。キャラクターも魅力的。
最後まで物語がもりもりすぎて、肝心の謎ときがあっさり行われたが、謎自体はすごく凝っていたからもっと時間をかけて解き明かして欲しかった。
続編もあるみたいだから楽しんで読みたい。