育てる力

著者 :
制作 : 小松 成美 
  • 宝島社
4.08
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本棚登録 : 44
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800280374

感想・レビュー・書評

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  • 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉のとおり、栗山監督は賢者である。だから好きなんだよなぁ。ビスマルク良いこと言うなぁ。

     北海道日本ハムがどうして育成がうまいのか。育てているからじゃない。選手自身が育つから、育成が成功するのである。

     その秘訣が歴史に学べる。日本資本主義の父である澁澤栄一から学べるのだという。オオターニサーンはこの本をもって渡米したらしいが、この本はどれだけ彼を救ってくれるのか。


     前々から冗談半分で日本ハムは牧畜業だから、選手を育てるのがうまいと言ってきた。経済動物の扱い方をよく考えている。それは利益追求という意味では全くなくて、価値の提供という視点で、育成をする哲学があると思えるから。牧畜業との関連もあながち冗談でもないのだと思う。
     畜産業は生命を売っている。機械、工場的に命を大量生産すれば利益は増える。でもそうやってストレスフルに育てた経済動物たちは、味が落ちて価値がどんどん下がっていく。食品製造で大事なのは、「価値の提供」ということを忘れてはいけない。おいしいものを売って儲けるから意味があるのだ。安かろう、まずかろうで儲けても意味がないのである。
     これは人材育成も一緒である。プレッシャーで鞭打って必死に働かせて、労働生産を向上させる。そんなストレスフルでしごいた人材が、生き生きとしたプレーをして活躍してくれるのか。いや、しない。内発的動機付けのないプレーでは、自分の限界を突破した結果は残せない。
     日本ハムという球団は、選手一人ひとりが最もおいしくなるように、こだわって育成している。餌にもこだわっている。本という心の栄養を十分に与えて、心身ともに大きく育つようにしている。
     その心を育てるこだわりの餌が『論語と算盤』なのである。

     そんなことは書いてないけど、そんなことを考えてしまった。ファイターズは奥が深い野球チームである。


     ファイターズは心の放牧をしているんだ。選手たちがのびのびと活躍できるように、心を育てている。どこかのウサギや虎の球団のようにプレッシャーによる締め付けでコントロールされないようにしている。


     p206からの栗山さんと渋沢さんの対談が面白い。

     「論語と算盤」だから良い。「●●か□□」だと、選別するだけで新しい何かは生まれない。「●●と□□」は組み合わせる。一見まったく混ぜられないものでも、創意工夫でうまく組み合わせて新しい何かを創造できる可能性がある。
     論語と算盤もそうである。道徳観と経済をうまくコラボレーションさせたその先に、深い哲学が生まれた。この「と」の字を大事にすべき。という発想は、良い。

     大谷翔平も「投手と打者」である。これをコラボさせたら、ものすごい価値を生み出せる。実際、日本では大活躍した。MLBでは。楽しみでしょうがない。
      
     「宿命と運命」のちがいとは。
     渋沢さんは、「宿命は宿った命だから変えられない。でも、運命は運ばれてくる命だから、変えられるはずなんです。じゃあ誰が運んでくるかっていうと「人」が運んでいるんですよ。出会いなんてまさにそうですよね。」 と言った。
     これいいな。運命は変えられる。人事を尽くして天命を待てば、運ばれてくるものは、変わるだろう、ってことだ。



     「コラボレーションとコクリエーション」
     渋沢栄一は資本主義の父と呼ばれるが、彼は資本主義のことを「合本主義」と訳していた。
     資本主義とは、資本を元手に資産に投資して価値を大量生産するということである。それはブルジョワが独占するみたいなイメージがあるが、そうではなくて、てんでんバラバラになっているお金を一か所に集めて、大きな装置を作って、より良い価値をたくさん生産することが、社会全体でみればよいのだということである。
     庶民がちまちま金をたんす貯金しても、だれも巨大な工場は作れない。でも、銀行に貯金して、銀行が集めた金で資本提供して巨大工場を作れば、製品が作れるし、雇用が生まれるし、需要を満たせる。
     このように小さな力を集めるシステムを作ることが大事なのである。それが合本主義だという。
     これはコラボレーションとコクリエーションの精神ということである。日本ハムもこれを大事にしている。選手にいろんなポジションを守らせて、技術を向上させているし、いろんな打順を組み合わせられるようにしている。最大のコラボは大谷翔平の二刀流だろう。
     こんなところにも澁澤栄一の精神が見え隠れ。

  • 栗山英樹監督が、愛読書としている渋沢栄一の「論語と算盤」をどの様に解釈し、自分の言動に移しているのかのエピソードを著した一冊です。かねてから、栗山監督の言動に感銘を受けていたので、その言動が「論語(道徳)」と「算盤(経済)」を基にしているということを本書にて知ることができ、渋沢栄一の「論語と算盤」を読んでみたいという読書欲が湧きました。巻末には、渋沢栄一の玄孫である渋沢健さんとの対談もあり、これもまた興味深いものがあります。

  • 2018/09/19:読了
     「論語と算盤」の教え、というより、渋沢栄一の教え。
     渋沢栄一が、プロ野球を経営したら、どうするだろうと常に考えている。
     姿勢がすばらしいので、素直に感情移入して本が読めた。
     カテゴリは悩んだけど「教育」にした。

  •  詳細なレビューはこちらです↓
    http://maemuki-blog.com/?p=13729

  • 「論語と算盤」を題材に選手を育て続ける栗山監督のチームを率いるリーダーとしての神髄を見たような気がします。多くのリーダーは相手に自分の意見を無理やり押し付け「説得」しようとするが、栗山監督は自分の思いを伝えるだけで「選択」は相手に任せ選手自身が「納得」するように試みる。大谷選手にもMLBで活躍するという彼の夢をかなえるためにはNPBでのステップが必要であるという意見は伝えたが、日ハムに入ってくれるように説得はしなかったという。大谷選手はMLBに舞台を移したが、今年は高校最多ホームラン記録を持つ清宮選手が入団した。清宮選手は13歳のときに日ハムの始球式を務めたことがあり、日ハムの監督は栗山監督だった。清宮選手が日ハムに入ったのは運命だったのかもしれない。栗山監督が清宮選手をどう育っていくのが楽しみで仕方がない。

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著者プロフィール

1961年東京生まれ。創価高校、東京学芸大学を経て84年にヤクルトスワローズに入団。90年、引退。引退後は、解説者、スポーツジャーナリストとして活躍。2011年、北海道日本ハムファイターズ監督に就任。

「2017年 『栗山魂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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