ヴィジュアル・クリフ 行動心理捜査官・楯岡絵麻 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 宝島社 (2018年4月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784800283153
感想・レビュー・書評
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タダで物を配って集めた老人に、高額の商品を売りつける。
悪徳商法のご長寿研究所・葛飾立石店の店長が、殺されて……。
シリーズ第6作。
嘘を暴くのではなく、嘘をついているサインがないからこその、不自然さを追求するとか。
大学時代絵麻が師事した、行動心理学の教授との対決とか。
いつもと違った切り口が新鮮。
男を転がすプロとしての矜持を見せるジャスミンも、痛快。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今回の題名は、魅力的な題名だ。視覚的断崖という三次元の感覚は生まれながらに人は持っているのだろう。YouTubeなどで見かける下がガラスで絶壁のところには、たとえ安全だと分かっていても、恐怖心から足を踏み入れたくないものだ。
題名だけでなく、登場人物にも魅力を感じる。6冊目にして最強のボスキャラが出てきたようにも感じる。私の恩師は他界したので、話すこともできないが、懐かしさが込み上げて来た。
催眠商法から始まり、その店主が殺害される。そこから事件がさまざまな方向に散らばっていく。読み応えがある作品だ。
SF商法と借りの心理、返報性の法則、なんだか私自身が引っかかった経験がある。同調効果は日常でも頻繁に経験する。プラシーボ効果は中学時代に保健の先生にやられた。
印象深い心理学の要素は「無意識の転移」、人の記憶を書き換えてしまう言葉は、催眠術にも応用される。心理学に興味のある私には、読んでいて楽しめる作品だった。 -
シリーズ第6弾。5作目が図書館で見つからなかったため、泣く泣く。
特に前作からの続きもないため、普通に楽しめました。
心理学を利用した記憶の書き換えが本作では多く書かれていて、嘘を見抜くのではなく、嘘を認めた上でのやり取りでした。
西野のキャバ嬢相手の心理学を駆使した駆け引きが楽しく、ためにもなりました。 -
佐藤青南『ヴィジュアル・クリフ 行動心理捜査官・楯岡絵麻』宝島社文庫。
シリーズ第6弾は初の長編。毎回どんな作品かと楽しみにしているシリーズ。
長編というだけに、これまでのシリーズに描かれた行動心理学の知識が総動員されている。何しろ今回の楯岡絵麻の前に立ち塞がるのは大学時代の恩師。一筋縄でいかない恩師を相手に苦戦を強いられる絵麻……
SF商法で老人たちに高額商品を売り付けていた店舗の店長が何者かに殺害される。捜査に駆り出された楯岡絵麻と西野は少しずつ事件の核心に迫るが、あろうことか事件に大きく関わると目される老人は絵麻の大学時代の恩師だった…… -
楯岡絵麻シリーズ6作目。今までは事件そのものが読み切りパターンだったが、本作では1冊でひとつのストーリ。絵麻の恩師との対決が見所ではあるが、落としどころが今二つで、シリーズで一番面白くなかった。周辺描写は結構良かったのに残念。
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シリーズ第6弾。
似非健康食品の店長が殺された事件について調査する絵麻達。
そこに浮上した、かつての恩師。
その恩師との関りを軸に事件解決へと進む今作。
かつての第一人者の成れの果て。哀しい物語でした。
彼はきっと心の弱い人間だったんでしょうね。
かつての恩師を超えた絵麻は、また次へと進んでいく。 -
シリーズ第6段。
久しぶりに読んだシリーズだけれど、キャラ立ちがしっかりしているのですぐに世界観に戻ってこれた。
かつての師との哀しい対決・・・コンセプトの面白さは十分だったが、動機と手法がね。。。
作中で駆使される心理テクニックがもはや、少年漫画主人公の特殊能力じみてきたなと。。。
とはいえエンマ様とそのしもべ達(?)の愉快な道中はまだまだ続く模様。
一応、まだシリーズは追っていく。
★3つ、7ポイント。
2023.01.29.古
※エンマ様と西野くんとの掛け合いもこのシリーズの醍醐味♫
(予想通りな)クスッとくるエンディングが◎。 -
これは本当に長編でした。
殺人事件の関係者として浮上するのが絵麻の恩師! 妻の病気で退官し、今は安アパートに一人住まい、詐欺紛いの健康商法の店の常連になっていた。誰よりも奴らの手口を熟知している教授がなぜ?
勝つのは、絵麻か、恩師か⁉️
この設定がおもしろく、一気読みでした。 -
人を観察して、その所作で考えてることがわかったり、自分の思うように動かせたりできたら幸せかなと思ってしまうけど、想像するよりもっと虚しいものなんだなと思った。
自分の信じたい過去を作り上げて、つい最近まで事実を語ってた昔の知り合いにも、やっぱりその偽りの過去を語るように、本当に人はなるのかな? -
心理学を応用して犯罪者を追い詰めて行く
「エンマ様」シリーズの第5弾(かな)。
操作する警察側は「お馴染みのメンバー」。
今回は、捜査線上に浮かび上がったのが
エンマ様の学生時代の「恩師」。
で、犯罪捜査を巡っての「師弟対決」なのですが...
割と今回は全体的に地味な印象(^ ^;
テンポもやや一本調子な感じで、
「巧みな緩急でハラハラさせられる」感が薄い。
...何だ、その無理矢理な「感」は > 自分(^ ^;
謎解きや操作のピース一つ一つは、
きちんと説明されていて、納得できなくはない。
が、登場する「心理学のテクニック」も、
以前の作品に比べて「初心者レベル」な気がするし、
捜査を進める上でもの凄く重要な役割を担う人物が、
割とテキトーな人だったりして(^ ^;
言ってみれば「ネタ切れ感」があって(^ ^;
巻末を見ると、初出が割と特殊な発表みたいで(^ ^;
何か大人の事情があったのかも知れませんが(^ ^; -
初の長編?マジックにも見える絵麻の取調べだが、迷い、考え、導き出していく過程はいつも興味深い。
作家さんが同郷とわかってびっくり! -
シリーズ第6弾。昔の恩師との対決という設定ということもあり、エンマ様の毒はやや抑えめ。前半分はもう少し簡潔でよかったかもしれないが、事件解決の手法も含めて最終章はよかった。最後のオチも笑える。
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似非健康商品を売りつける「ご長寿研究所」の店長が殺された。別件で指名手配中の男が現場付近で目撃されていたが、絵麻は違和感を覚える。そして新たに捜査線上に上がった人物は、行動心理学のかつての第一人者で絵麻の恩師・占部亮寛だった。店の常連客らしい占部。絵麻が聴取に行くと、占部は心を読み取られないよう抗不安薬を飲み―。
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行動心理捜査官 楯岡絵麻シリーズ初の長編。
高齢者に詐欺まがいの健康機器を売りつける
「ご長寿研究所」の店長が殺された。
捜査線上に上がった人物は、楯岡の恩師だった。
ちょっとストーリーに無理があると思う。
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エンマ様と師匠の直接対決。
最後の最後にさすがエンマ様だわーという展開。
短編にせず、師匠とのやりとりや過去の描写が長編で描かれていたことでいつもより深みあり。
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はじめてシリーズものを途中から読みました。
それでもちゃんと中に入り込めるように作り上げてくれているのは
作者の優しさですね。
佐藤先生、ありがとうございました!
エンマ様好きになりました!
ミステリやサスペンスをあんまり読まないので、比較は出来ませんが
最後までドキドキしながら読めました。
私にはとても新鮮で面白かったです! -
楯岡絵麻の対決するのは、大学時代の行動心理学の恩師 占部教授。
相手は、最強とも言える存在であるが、変節していた。
長寿研究所の店長の殺人事件。
SF商法とは、催眠商法。「新製品普及会」が始めたことによる。
SF商法は、消費者にあたえることからスタートする。
ハズレなしのくじびきやモニターを募る名目で商品の無料配布。
消費者の心理的負債。その負債を返済しようとする。
返報性の法則。
借りを負担に感じない人間は、ほとんどサイコパス。
ローボールテクニックによって、参加者ははいをいう練習をする。
要求がエスカレートしていっても断るのが難しくなる。
ソロモン・エリオット・アッシュの同調実験。
クイズは、3問。3問目にサクラが誤答する。
会員だけの特別価格、今日だけの特別価格、限定何個。
人、時間、数の制限で、同調させる。
それが社会問題にならないのは、プラシーボ効果と防衛機能の合理化。
サンクコスト効果。
旺盛な批判的精神で客観性を担保し、物事の真理を見極める。
防衛機制は、自分の心を守ろうとする働き。
感情を押し殺すのは抑圧。医師を責めるのは置き換え。記憶を失うのは逃避。
真実を暴くことは、絶対的な正義とは言えない。
スタンレーミルグラムの心理実験。
人の心という宇宙をのぞいてみたいということが、行動心理学を学び始めた。
目の前にいる魅力的な女性が自分を騙そうとしている。
そう思いたくないから、あえて騙される。女性が嘘をついているという判断は、自分の愚かさを認めるものにつながる。他は、騙されているけど、自分だけは違うと思いこむ。
それは、根拠のない合理化だ。
埋め込み法。自分の創作した偽の経験を記憶の空白部分に埋め込むために、同じエピソードを繰り返し話をする。自分の過去を編集して、自分のものとして扱う。
スティンザー効果。正面に向き合わないで話をする。
ランチョンテクニック。食べているときに話をすると、心を許す。
占いなどで使われているコールドリーディングの話術。
指摘されたと思ってフォアラー効果で自分のことだと錯覚する。
今回の楯岡絵麻は 恩師との戦いで、それを追い越し、新しい地平にたった。 -
シリーズ第6弾にして、初の長編。
SF商法で老人たちに高額商品を売りつけていた店の店長が殺害される。
聞き込みに駆り出された絵麻や西野、筒井、綿貫だったが、3人もの人間が指名手配犯を見かけたと証言する。
その証言内容に違和感を覚えた絵麻が再度証言を聞いてみると、そこには印象操作を受けたと思われる根拠が。
そして、すぐ近くには絵麻の大学時代の恩師が住んでおり、店長が殺害された店の常連客だった…果たして、恩師は事件にどう関わっているのか…
作品ごとに手法を変えて来るのが楽しい今シリーズ。
今作は満を持して、長編と言った感じ。
今までのライトなノリも残しつつ、恩師との対決を心理戦で描いており、今回もまた違う意味で楽しめた♪ -
今まで連作短編だったのが、今回初長編。殺人事件に関わりで浮上した男は絵麻の行動心理学の師匠。足で捜査する筒井コンビ、行動心理学を用いて追い詰める絵麻コンビが協力。西野のキャバクラネタが今回は役に立ちましたね。
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似非健康商品をお年寄りに売り付ける「ご長寿研究所」の店長が何者かに殺された。
その現場からの目撃情報として別件の指名手配中の男が挙げられた。
しかし、どうも様子がおかしい。
そして、次に捜査線上に上がった人物が、なんと絵麻の心理学の恩師だった。研究所の常連でもあったという。
絵麻は同様を隠しながらも真実に立ち向かう。
2019.9.18
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2019/05/30 読了。
図書館から。
今回は長編一遍。
作中にいろいろ心理学の方法が
出てくるので読みつつ勉強になりますね。
西野がいい役してるわー。
キャバ嬢強い笑 -
エンマ様シリーズ第6弾。
エンマ様の恩師なる者登場。
行動心理のスペシャリスト対決のお話。
簡単には自白がとれないことに四苦八苦するエンマ様がみどころです。 -
殺人事件の現場近くで目撃された指名手配犯。しかしそれは誰かに刷り込まれた偽の記憶らしい、というなんとも謎に満ちた幕開け。そして関係者の中にいたのは、絵麻のかつての恩師。もしそんなことをできるとしたら彼しかいない、ということで、かつての恩師と対決する絵麻。いつも以上の心理合戦が読み応えたっぷりです。
でもまあ事件の構図自体は最初から見えているし、心理対決のハラハラ感だけでも充分に楽しんで読めるけど、なんて軽い気持ちで読んでいたら。ラストで愕然。思い込みに囚われていました。そして今回一番の驚愕は、ジャスミンちゃんの有能っぷりでしょうか(笑)。 -
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似非健康商品を売りつける「ご長寿研究所」の店長が殺された。別件で指名手配中の男が現場付近で目撃されていたが、絵麻は違和感を覚える。そして新たに捜査線上に上がった人物は、行動心理学のかつての第一人者で絵麻の恩師・占部亮寛だった。店の常連客らしい占部。絵麻が聴取に行くと、占部は心を読み取られないよう抗不安薬を飲み―。相手のしぐさから嘘を見破る“エンマ様”シリーズ第6弾。
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今回の捜査は、エンマ様こと楯岡絵麻にとっては、辛いものだったことだろう。というのも、捜査対象が、かつての恩師・占部であり、絵麻に行動心理学を教えてくれたその人だったのだから。とはいえ、胸の裡はともかく、捜査に手を抜くことはないのがエンマ様である。占部と絵麻の駆け引きから目が離せない。相棒の西野も、ずいぶん頼もしくなっている。彼以外ではエンマ様とのコンビは成り立たないのではないかとすら思わされる。今回、西野も贔屓のキャバクラ嬢の真実の姿に目が覚めたようでもあるし、今後の展開も愉しみである。じっくり味わいたいシリーズである。 -
安定の面白さ。
師をこえていくという流れですが、
師の心理がちと弱い気も。
同情しきれない、悲壮感がもっと欲しい。 -
シリーズ6作目、今回は長編だ。
今回対峙するのは、なんと、エンマ様の恩師!?
しかも、高齢者をカモにした、悪徳催眠商法に騙されているって?!
いつもは、犯人は誰か、ということに主眼が置かれることが多い(who done it? フーダニット)だが、今回は犯罪の理由(why done it?)に主眼が置かれる。
真犯人は誰か、というのも最後まで確信が持てないのだが、二つの謎が絡み合って面白い。
シリーズ初めから、面白い内容ではあったが、本作はここまでの作品の白眉かと思う。
キャバ嬢が活躍するところ、エンマ様も認める実力にちょっと驚きだ。
確かに、ローティーン向け雑誌にも、単純接触効果、とか、ミラー効果とか、好意返報性の法則(もう少し優しい言葉の場合も含め)書いてあるが、彼女らはそれを自然とやってのける。
確かに、人たらし、と呼ばれるような人やプロのお姉さんは知ってか知らずか、こういった方法を使う。
あえて術中にはまりつつも、疑似恋愛と割り切れるのならそうした時間も楽しい時間なのだろうが、残念ながらそうとは限らないのが、人の常。
さて、話を戻すと、占部教授がなぜ、この行動に出るのかがわからない。
しかも事実と異なることを繰り返し語る…彼は何を隠しているのか。
何が原因なのか。エンマ様のたどり着いた先が、悲しい。
でも、いつもの場所で労をねぎらうのが、彼女の救いなのだろう。
安心できる場所の大切さも感じさせる。