万引き家族【映画小説化作品】

著者 :
  • 宝島社
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感想 : 164
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800284075

感想・レビュー・書評

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  • 映画になったタイトルだと思って借りてみました。
    映画は見てないので原作のみの感想になりますが、物語は思ったより淡々と進んでいきます。
    その淡々と進む中に散りばめられた、たくさんの違和感を拾い集めながら、最後の大きな事件へと繋がります。

    —————-

    万引きを仕事にしている少年の翔太、それを教えた父、治。
    「店のものはまだ誰のものでもないから」と言って盗んでしまいます。
    それを悪いことだと思っていないのが治の怖い所。
    翔太は悪いことだと思っていますが、仕事をしている=家族のためだからと万引きを正当化して、悪いことだということから目を背けています。

    家族を守るために盗む。
    いとも簡単に「盗もう」という思考になるところに、読み手は違和感を覚えるのではないでしょうか。

    —————-

    翔太、そして治と集まってできた家族は、血の繋がりをもたない偽りの家族ですが、それぞれに事情があり行くあてがない人たちの集まりで出来たものでした。

    家族というものに苦しめられ、家族という集まりに理想を描いてできたのがこの一家です。

    —————-

    最後に子供は警察に保護され、治、そして信世はこれまでの罪を償うこととなります。

    やり方は間違っていたけれど、みんなこの家族に救われていた人達だと思うと、離れ離れになるシーンは少し切なかったです。
    最後はハッピーエンドではなかったけど、これから普通の生活が待ってるともいえない、少しザラついた終わり方でした。

  • これは単なる”家族ごっこ”だったのか。
    寄せ集めの”家族”。
    血縁関係もなければ法に縛られてもいない。けれど紛れもない”家族”だった。

    子どもは親を選べないし、親だって望み通りの子どもを産めるのかと問われれば、そんな都合良くはいかない。
    産まれた時に親から授けられた名前とは別の名前を持ち、僅かばかりのお金や物でその場をしのぎ精一杯に生きる。
    社会規範や法を犯しながらのその日暮らし。
    一見すると悲惨に感じるはずなのに、ひとつ屋根の下で直に触れ合う温かさを眩しく思う。

    この”家族”は、自分たちが望んで創り上げてきた結果。
    たとえ短い間だったとしても、つかの間の疑似家族から絆の何たるかを教えてもらえた。

    評判の映画の原作。残念ながらまだ観たことはないけれど、是枝監督の文章から映像が生き生きと浮かんできて胸がえぐられた。
    物語のラストで産みの親の元へ戻された”じゅり”の聴いた声にならない声に、僅かな希望を託して頁を閉じた。

    「私はあの子を産んではいない。でも、母だった」
    母役だった信代の言葉。
    私は娘を二人も産んだのに、ちゃんと母をやれているか。自分のこれまでの生き方に対して突きつけられた言葉だった。

  • 映画は観てないけどこの本を手に取ったとき妙に読みたい気持ちになった。
    本当の家族ではないけど、訳あって寄り添って暮らしている様子は本当の家族のように温もりが感じられたが
    いざというときは裏切るのではないかという脆さもあった。
    祥太とじゅりの将来が気になるラストではあった。

  • 私は、大家族をテーマにしたドキュメンタリー番組が苦手だ。
    この万引き家族も勝手にそんなイメージだったので毛嫌いしてたのだけど…テレビで放送された数分を見た時に、私の考えは間違ってたと思い、すぐこの本が読みたくなった。

    良かった。

    血が繋がっている事で子どもが小さい時は親が、成長するにつれ子どもの方にも甘えが出てくるのだと思う。家族のキズナなんて脆いものなのに。
    それを逆にしたのが?この家族なのかな。子どもを育てる環境は劣悪だけど、心育てる視点から言ったら寧ろ健全だとさえ思った。

  • 映像の小説化作品を読むのは初めて。ころころと視点が変わって慣れないうちは戸惑った。
    (ちなみに映画は観てないです)

    あんな環境にいるのに祥太がまともな倫理感を持っているのに驚くし、大人たちの思考回路にはついていけなかった。

    印象に残ったフレーズ↓(ページ数メモするのを忘れていました)
    私たちがいったい誰を捨てたというのか。(略)それがもし罪に問われるのだとしたら、彼らを捨てた人々はもっと重い罪に問われるべきじゃないか。

  • 最後じゅりちゃんで終わって、昔見た映画『禁じられた遊び』を思い出しました。

    でも、じゅりちゃんと最近の悲惨な事件が重なります。

    そして自分は山戸のじいさんのような大人になりたいと思いました。

    映画を見てみたいです。
    ふたつの雪だるまはどんなふうに表現されているのだろう。

  • 映画撮って、それを書籍化して面白いって凄い才能ですよね。どっちかだけでも充分なのに。「そして父のなる」の本も映画も両方とってもよかった。この本はまだ映画は見ていないけれど早く見たいと期待を抱かせるいい本でした。
    だらしない倫理観の大人達が寄り集まって、血のつながらない子供たちもなんとなく家族のように過ごしていて、いつまでもこんな状態続くわけないし、子供に悪い影響が有るのも分かるのに、キラキラしたモラトリアムの日々のように見えてしまうんですね。
    ニュースの一部としてこの状況を見たらば、子供が保護されて良かったって思うよなあ。裏側にそんなドラマが有るかもなんて思わないし、こんな愛ある犯罪生活もそうそう無いだろうし。
    最後は子どもたちが最後は幸せになれるのを祈りました。特に本当の親に虐待されていた女の子がこれ以上虐げられませんように。

  • 映像でパルムドール賞を受賞したけど、先に映画を見たので作中人物と俳優陣が重なってしまうのが残念ではある。やっぱり本を読んだあとに観映した方が良いね。それでも活字のほうも十二分に面白いし余韻も大きかった♪ この本を活かしきった俳優陣には拍手を贈るけどね。

  • …映画は観ていないです。万引きをして生活している家族の万引きのお話かと思っていたら、違いました。万引きはするんだけれど、家族に血の繋がりがなく、その事情、心の内を語ったものでした。誰もが事情ありなんだけれど、誰もが正しいことではないけれど寄り添うことで愛を感じたかったのでしょう。この家族になる前は辛いものであったし。子供の場合は放置や虐待。この家族が正しいとは言えない、しかし、そういった子供や大人を出してしまった元家族、背景も悪いのだ、その苦しさ。母としての役割を持つ信代の運命を背負う強さと、子供であるじゅりを思う時の弱さ、そして、祥太の賢さ強さが印象に残ります。悲しい物語でした。

  •  正しいことと親切なことなら、親切なことを選ぶ――『ワンダー』にそんな台詞が出てくる。
     この映画は、情に篤く生きていても、どうしても抜け出せないものに捕まってしまった人たちが出てくる。じゃぁ一体どうすればいいの。そう思うことが生きてるとたくさんある。どうすればいいのかなんて答えは出ないから、せめて、安易に白黒つけるのだけは控えよう。そのくらいしかできないけど、それくらいはできるかな。ひとのことも。自分の中のどうしても受け入れられないことも、そんなふうに。

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著者プロフィール

著者)是枝裕和 Hirokazu KORE-EDA
映画監督。1962 年東京生まれ。87 年早稲田大学第一文学部卒業後、テレビマンユニオン に参加し、主にドキュメンタリー番組を演出。14 年に独立し、制作者集団「分福」を立ち 上げる。主な監督作品に、『誰も知らない』(04/カンヌ国際映画祭最優秀男優賞)、『そ して父になる』(13/カンヌ国際映画祭審査員賞)、『万引き家族』(18/カンヌ国際映画 祭パルムドール、第 91 回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)、『真実』(19/ヴェネ チア国際映画祭オープニング作品)。次回作では、主演にソン・ガンホ、カン・ドンウォ ン、ぺ・ドゥナを迎えて韓国映画『ブローカー(仮)』を 21 年撮影予定。

「2020年 『真実 La Vérité シナリオ対訳 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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