万引き家族【映画小説化作品】

著者 :
  • 宝島社
3.89
  • (100)
  • (155)
  • (109)
  • (14)
  • (2)
本棚登録 : 1281
感想 : 164
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800284075

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 血の繋がりはないけど、一軒家で一緒に暮らす「家族」の話。

    日雇いの肉体労働やクリーニング工場での仕事、そして日々の万引きで細々と暮らす彼ら。
    ひとときの幸福な時間はあっという間に過ぎ、警察に罪を暴かれてバラバラになる「家族」。

    血が繋がった家族と一緒に暮らせば幸せになれるわけではないし、血の繋がっていないからこそ同じような過去を持った人たちが家族になれることもある。

    ---------------------------------------

    映画を観てから原作を読んだ。
    リリー・フランキーさんが演じた父親、治さんの考えていることが映画ではよくわからない部分があった。原作を読むと、なんとなく性交に対してコンプレックスを持ったまま大人になった経緯が書かれていて、納得。
    治さんと信代さんの濡れ場は官能的で素敵だった。二人でそうめんを食べている場面から、男女の関係に移っていく流れがとても自然でいやらしかった。

    家族ぐるみで万引きを繰り返す生活が良いわけはないけど、じゅりに戻ったりんちゃんが、悲しい日常のなかで暮らす姿を思うとなんとも言えない気分になる。

  • 映画はまだ見てない。見に行きたいけど行く時がなく・・・
    先に読んでしまったけど、登場人物の俳優さんが頭をよぎるので、見てる感覚で読んだ?っていうか。

    6人とも血は繋がってないけど、他人の方が絆が強いっていうのが印象的。
    正道から反れた人たちだけど、また一緒に住めたらいいのにって思う。

  • とある住宅街。柴田治と息子の祥太は、スーパーや駄菓子店で日々万引きをして生計をたてていた。
    ある日、治はじゅりという少女が家から閉め出されているのを見かねて連れて帰ってくる。
    驚く妻の信代だったが、少女の家庭事情を案じ、 一緒に「家族」として暮らすことに。
    年金で細々と生きる祖母の初枝、JK見学店で働く信代の妹・亜紀。6人家族として幸せに暮らしていた。
    しかし、ある出来事を境に、彼らの抱える 「秘密」が明らかになっていく―――。

    「家族」全員が血の繋がりがなく、ほぼ、誘拐と言えるような形の親子関係や祖母・孫関係。そこを繋ぐ絆として、万引きや年金の不正受給、さらには脅迫まがいのことが挙げられる。「息子」の万引きの失敗を境にその家族の秘密が明らかになっていき、いつしか「家族」はバラバラになってしまう。結局のところ、「家族」が一つになることもなく、微妙なかんじだった。

  • 『万引き家族』 是枝裕和さん著

    血は繋がっているけれど、全く関心を持たれず、親からの愛情も感じられないのなら、こんな“疑似家族” の方が良いのか…?と、もやもや感を抱きました。

    別丁扉の手触りにも、あるこだわりが。ちょっと泣ける…( ; ; )

    ちょっとネタバレですが……
    タイトルの「万引き」の意味は “モノ” だけでなく、”親の許可無しに子を ‘盗み’ 、一緒に生活している” ことも含まれるのでは…と思った。考えすぎかな?是枝さんに聞きたい!!

  • 「万引きしか教えてあげれるものがない」このセリフになんとも言えない悲しさと切なさを感じた。
    誘拐や万引きといった、犯罪である行為で繋がっている血の繋がっていない家族達だが、その中での温もりや優しさをみてると、法律って応用の効かないものだなぁと感じる反面、法律がないと人間って、人助けのつもりだったと何をしてもいいってことになるからなぁとモヤモヤした気分になった。

  • 是枝裕和監督が自らノヴェライズした『万引き家族』を読んだ。
    小説としても素晴らしい出来だが、順番としてはやはり映画を観てから読むべき本だろう。映画の中には直接描かれていない背景がくわしく描かれていて、映画がより深く理解できる。

    是枝監督には作家としての才能も十分ある。弟子の西川美和も然り。

    とくに、安藤サクラが刑事の前で涙を流す場面と、リリー・フランキーと城桧吏が別れるあの場面では、細やかな心理描写が胸に迫る。
    「一度でいいから、『ママ』と呼んでもらうんだった。信代は、そう思った」……うぅぅ、泣ける。

  • 映画見に行けないので小説で。当て読みというか、キャストさんの顔が浮かびながら読みましたが、ぴったりですね。安藤サクラさんがきっと凄かっただろうなと思いました。
    まあ、これまでの家族ものを拝見してもハッピーエンドではないだろうと思いましたが、考えさせられる内容。
    また立場違えば違う見方でしょうが、母目線で見てしまいましたね。好きだったら抱きしめるんだよね。ママって呼んでもらう事もかけがえのないことだよね。
    こうやって背景が分かっているから警察の宮部にムカつくし、信代に感情移入してしまうけど、もし、これをニュースとして新聞で読んだら?自分はどう感じるんだろうか。誘拐されて犯罪に利用されてかわいそうって思うんだろうか。
    犯罪はいけない、それは確かなんだけど、だけど、そう言い切って、非難して。それはいつもの自分であるけどそれだけでいいのか?考えさせられた。それぞれに正義があり、視点が変われば何が正しいかなんて脆いものだと思わされる。
    家族ってなんだろうか。愛することってどういう事なんだろうか。親として出来ることってなんだろうか。

  • 『万引き家族』を見に行かない?って誘われて、「それって大画面で見る映画じゃないよね?DVDになってから見れば?」って、正直思ったんだけど。
    割引があったので、映画館で『万引き家族』を見た。

    く・・くらい・・重い・・悲しい・・。

    現代の日本が抱える家族の問題、高齢化、格差社会、子供の貧困、児童虐待、格差の世代間連鎖・・・様々な現実の問題が生々しく重苦しく描かれていて、見ていて胸が苦しくなって、死にそうになった。

    男も女も大人も子供も、それぞれに傷を負った弱者が身を寄せ合って生活している。
    しかもそれは、単なる作り話のレアケースではなく、年金をもらってるお婆さんに若い世代が寄生して細々と暮らしてるって実際にある話だし、子供たちの虐待も今現に起きてる話だ。

    祥太くんは多分、親が、高温高熱の車内に彼を置き去りにしたままパチンコに熱中していて、車上あらしにやってきたリリーフランキーが窓ガラスを割って助けたものと思われる。
    リンちゃんは、夫からDVを受けてるお母さんから虐待されていたのだろう。
    リンちゃんちの家庭事情は分からないけど、児童虐待の背景には、日本の離婚率、再婚率の増加がある。後から来た夫や妻や恋人は、前の配偶者との間に生まれた子供を虐待する危険性がある。たとえばオスのライオンは、メスと一緒に住む時、前のオスとの間にできた子供ライオンを全て殺すという。
    前のパートナーとの間にできた子供を虐待するのは、動物の本能なのかもしれない。
    だから、子供を守るためには、離婚した親が新しい恋人と住み始めたとき、再婚したとき、もし虐待が起きたら、すぐに子供を保護できる仕組みが絶対に必要。

    もちろん、実の親以上に子供を大切に守ってあげる人もいるし、実の親なのに我が子を虐待する人もいるから、一概には言えないけれど。

    それにしても、パルムドール賞をとった日本作品って、どれも暗くない?

    1997年『うなぎ』は、TVでやってるのチラッと見たけど、暗すぎて気分が悪くなってしまって、途中で見るの止めたし。

    1983年『楢山節考』も、TVでやってるの見たけど、鬱々とした気分になった。

    黒澤監督の1980年『影武者』は映画館で見た。大画面向きのスペクタルで、アレは鬱々としなかった。傑作とは思えなかったけど。

    是枝監督の作品では『誰も知らない』が最高傑作だと思う。
    『万引き家族』も良い作品だけど、タブレットくらいのサイズで見るのがちょうど良い、こじんまりとした作品だ。

    祥太くんが走ってるシーンで、なんとなくトリュフォーの『大人は分かってくれない』を思い出した。
    低予算のフランス映画も、スペクタルじゃないし。
    アントワーヌくんには映画という救いがあったけど、祥太くんには、どんな救いがあるのか?

    祥太くんの演技は素晴らしかった。
    リンちゃんの演技も同じくらい素晴らしい。
    キキキリンも、まるでそこに実在してるフツーのおばあさんにしか見えなかった。
    リリーフランキーも、安藤も、みな、良い演技をしてる。

    自民党保守派の老人が言うような、夫が働いて妻が専業主婦で子供を3人くらい育てるという「伝統的な家族のあり方」みたいなのは、せいぜい第二次世界大戦後にできた家庭モデルに過ぎない。
    歴史的に見ても、家族の形態は変化してゆくもので、この映画のように、血の繋がった親兄弟よりも、より深い絆で結ばれた他人同士の共同体、というのも、あり得るだろう。

    フランスでは、制度上、事実婚が当たり前になってるし、アメリカでは、結婚と離婚を繰り返して家族関係が複雑になってる。
    日本でも離婚率は上昇して、晩婚化、非婚化、高齢化、少子化で、家族の形は変化していく。

    Phaさんなんか、血の繋がった家族よりも、もっとユルいつながりの仲間と一緒に暮らしたい、って実際にやってるけど、あーゆーのも新しい家族の形を実験してるんだと思う。

    柄本明が、駄菓子屋のお爺さん役で出てて、男の子が万引きして、幼い女の子も万引きしたのに気づいて、男の子にお菓子を2つあげて、「妹には万引きさせるな」って言うところで、ホロッときて、泣けた。
    それから、次に、2人が駄菓子屋に行ったときには、お爺さんは亡くなっていて、お店が閉まってたのは寂しかった。
    少子高齢化で、店の後継者もおらず、大店法ができて以後、サビれた個人商店は消えていく一方だし。
    日本全国にできたイオンみたいな大型店や、ヤマダ電器みたいなチェーン店でさえ、Amazonや楽天、価格.comみたいなネット通販に負けて、ツブれていってる。
    ネット社会になって、TSUTAYAもブックオフも、すごい勢いでツブれていってるし。
    どうしようもなく傾いていく日本経済の現在と将来を感じさせて、気分がドンヨリ重くなっていく。

    祥太くんは、駄菓子屋のお爺さんの言葉をずっと胸に受け止めていて、幼いりんにはこれ以上万引きさせちゃいけないって、心のどこかで思っていたんだと思う。
    だから、スーパーマーケットで、妹に万引きさせたくなくて、わざと、バレるような形で万引きして逃げたんだと、オレは思う。

    是枝監督の映画に登場する男の子は、なにか特別な魅力がある。いつも。
    なにかしら色っぽい、というかなまめかしいというか。

    是枝監督の映画に登場する女性は、ぜんぜん色っぽくもないし魅力的でもないのに、男の子が、なんと言って良いのかよく分からないような、特別な魅力を身にまとっている。これは、他の映画にはない、是枝作品の特徴だ。
    是枝監督って、少年愛の人なの?って思うんだよねー。
    なにかが違うんだ。

    亜紀が風俗店で鏡に向かって股を広げて、鏡の向こうにいる客と対話するシーンでは、『パリ・テキサス』を思い出した。似たような場面があったよね。
    亜紀が客と対面して、なにも喋らない男の怪我をした拳を見て、その後で、男を抱きしめるシーンでは、男が抱えている辛い現実を前にして、亜紀にも共感できる辛い現実があったことを伺わせる。

    警察の取調べのときに、リンちゃんが海の絵を描いてるシーンで、ウルウルきてしまった。
    海で、家族みんなで手をつないで、ジャンプするシーンがクレヨンで描いた絵になってるの。
    でも、おばあさんのことは聞かれても答えなかった。
    お父さんお母さんに言っちゃダメって言われてたから。

    んーーーーー。
    やっぱり、コレって、映画館の大画面で見たのはマチガイだったー。
    暑苦しくて狭苦しくい汚い部屋を大画面で見せられるのはつらい。

    でも、細野春臣の音楽は良かった。
    映画館の音質の良いスピーカーで聞く価値がある。
    『誰も知らない』のゴンチチより、ずっと良いなあ。
    まあ、個人的な好みの問題だけど。

    でも、是枝映画って、音楽は最小限だね?
    ガンガン前面に出てきて主張する音楽じゃない。
    映像の風景に、ほんのちょっとだけ添えられた、ミニマルでストイックな音だ。

    カンヌ映画祭の審査員たちは、なんでこんな暗い日本映画ばかりをパルムドールに選ぶんだ?
    連中は、日本人を含むアジア人に対して、偏見を持ってるだろう?
    つーか、日本映画は、もっと明るくて、気分がハレバレするような作品はないのか?

    映画館を出た後も、胸が苦しくて、つらかった。

  • 映画を観て、小説も読みました。
    カンヌ映画祭のパルム・ドールを受賞しただけあって、想像以上にいい作品でした。

    親による子供への虐待、親の死を隠しての年金不正受給、JKビジネス等々の現代の底辺を生きる人たちの貧困や社会問題を取り込んだ意欲作。

    6人の血の繋がりのない人達が、同居して疑似家族を構成している。
    彼らを繋げているのは、何なのか?
    金もしくは犯罪で結ばれたような疑似家族だが、そこには家庭の温もりがあった。しかしある事件をきっかけにバラバラになってゆく。

    物語の進行と共に家族の過去が明らかになってゆくストーリーはサスペンスのようであり、終わってみると「家族とは何か」を考えさせてくれる余韻の残る作品です。

    印象に残る場面も多々あります。
    〇ビルの谷間の家からは花火の音だけしか聞こえないのに、全員が狭い庭から懸命に空を見上げるシーン。
    〇海水浴で全員が手を繋ぎ、波が来るたびにジャンプする後ろ姿とそれを見守る祖母(樹木希林)。
    〇警察の尋問に頼りなげに答える父親(リリー・フランキー)と反対に開き直っている母親(安藤サクラ)も良かった。
    〇チョイト出ですが、ピリッとした味を感じさせる柄本明も良かった。
    演技らしくない演技が、家族の自然さを感じさせてくれ、実力派俳優陣が最高のパフォーマンスを生んでいます。

    ハッピーエンドにはならないのは辛いエンディングですが・・・もう一度見たい映画です。

  • 映画を是枝さんが小説化した
    作品らしい。
    監督だけじゃなくて
    小説も書けるのね、すごい

全164件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

著者)是枝裕和 Hirokazu KORE-EDA
映画監督。1962 年東京生まれ。87 年早稲田大学第一文学部卒業後、テレビマンユニオン に参加し、主にドキュメンタリー番組を演出。14 年に独立し、制作者集団「分福」を立ち 上げる。主な監督作品に、『誰も知らない』(04/カンヌ国際映画祭最優秀男優賞)、『そ して父になる』(13/カンヌ国際映画祭審査員賞)、『万引き家族』(18/カンヌ国際映画 祭パルムドール、第 91 回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)、『真実』(19/ヴェネ チア国際映画祭オープニング作品)。次回作では、主演にソン・ガンホ、カン・ドンウォ ン、ぺ・ドゥナを迎えて韓国映画『ブローカー(仮)』を 21 年撮影予定。

「2020年 『真実 La Vérité シナリオ対訳 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

是枝裕和の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×