保科正之 ~民を救った天下の副将軍 (歴史新書)

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  • 洋泉社
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800300348

作品紹介・あらすじ

会津藩領民に仁政を施し、江戸復興を成し遂げた正之の善政の根幹には、常に無私と慈愛の精神があった。東日本大震災後、危機管理が問われる今、卓越した判断力とリーダーシップで新時代を切り開いた彼の実像を直木賞作家・中村彰彦が読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • サブタイトルは「民を救った天下の副将軍」。しかし、副将軍という身分は江戸時代にはない。どうやら德川光圀を意識してのことのようだ。ただし、德川光圀が「副将軍」と呼ばれているのは、あくまで「水戸黄門」のドラマの中の話である。

    保科正之は第2代将軍德川秀忠の落胤。第3代将軍家光(異母兄)、第4代将軍家綱の2代に亘って幕府の輔弼役を務めた。この間に正之が関わった主な政策として、「末期養子の禁の緩和」「殉死の禁止」そして「大名証人制度の廃止」があり、これらは家綱政権の「三大美事」ともいわれている。その他、江戸の人口増大による水不足の解消のために玉川上水の開削したり、明暦の大火時には機敏に対応し、江戸の復興に向けて見事なリーダーシップを発揮したことなどでも知られている。

    一方、正之は会津藩主でもあり、藩政においても、殉死の禁止、減税、酷刑の廃止、孝子梶原伝九郎の採用の他、社倉制度によって領内に飢饉や餓死者を発生させなかったことや、90歳以上の者に老養扶持(今でいう「老齢年金」。但し、掛け金なし)を与えたことなどから、「福祉制度の父」ともいわれる。家康、秀忠、家光が武断政治を行ってきた時代から、文治政治(平和)への切り替えの基礎を見事に築いたといえる。

    正之の政治で徹底していることは、思いつきで政策を打ち出すのではなく、きちんと理論的に裏打ちされた政策であること、決して、幕府・諸大名・旗本・御家人の幸福ではなく、その下にいる「民」の幸福の実現に向けられていたことだ。それを、無欲恬淡な性格、優れたバランス感覚そして卓越した判断力で実行した。しかしもう一点重要なことは、正之がリーダーシップを発揮できたのは、確かに彼の資質・素質によるところも大きいが、それだけではない。将軍家綱との信頼関係、民・領民との信頼関係があってのことである。良い政治のためには、正之のようなぬくもりや思いやりのあるリーダーも必要だが、決して一人の優秀な人物の存在だけで実現するものでないことを改めて実感するのである。

  • パクス=トクガワーナの基礎は保科正之という副将軍がいたから可能になった。戦国時代からの転換点を導いた名君を語る。


     保科正之大好きおじさんが書いた本。書き言葉に感情がこもっちゃって冷静じゃない(笑) だからどうも信じがたい雰囲気が残る。残念。

     保科正之について、この中村彰彦以外の本を読みたくなった。

  • 保科正之という人物を俯瞰して眺められるのは良かったです。
    しかし主に巻末の対談中で、他の人物や現代の政治家を正之に比して貶める記述が多く、気になります。
    良くも悪くも、著者のこだわりや考えが良く見える内容です。

  • 政治はそれを司る人のセンスで大きく異なる。保科正之のように、良い政策を打ち出すには、頭脳、感受性が必要で、何を優先させるかという哲学が必要だ。保科正之は私心なく公平無私であったと評されるが、この点は難しい。私心なき為政者は、民の私心をどう取り扱うか。行き過ぎれば、にごる田沼の水よ恋しきの世界である。この点、歴史は必ず後からの評価であり、作為的であるからして、どうも人間離れした偉人伝をつくりがちであるが、果たして保科正之はどうか。

  • 将軍の実弟でありながら、当時の戦略争いの中で虐げられた境遇に育つ。何よりも民のために基づく大胆な政治手法を数々実行してきた人物。歴史的にもあまりスポットが当たってこなかったようであるが、一部の歴史家に絶大なる支持を得ている。学ばなければならない人物のひとり。事実のみが述べられていて、正之本人の人物像への切込みが甘い感がある。構成・文章力で△。

  • 作家の本。正之が偉大というのは解るが、他の人物を貶めるのはいかがなものか。

  • 「本好き」とか、題名に謳われているテーマに惹かれるという方“以外”の読者までも念頭に綴られた「保科正之の生涯と事績」というような内容の本書…或る意味では“決定版”かもしれない。多分、これ以上コンパクトに「保科正之の生涯と事績」を語ることは難しいであろう…
    「江戸時代にこんなに凄い政治家が居た」ということ…本書を通じて多くの方に知って頂きたいものだ…

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プロフィール

1949年栃木県栃木市生まれ。東北大学文学部卒業後、文藝春秋に勤務。87年『明治新選組』で第10回エンタテインメント小説大賞を受賞。91年より執筆活動に専念し、93年に『五左衛門坂の敵討』で第1回中山義秀
文学賞、94年に『二つの山河』で第111回直木賞、2005年に『落花は枝に還らずとも』で第24回新田次郎文学賞を受賞。また2015年には第4回歴史時代作家クラブ賞実績功労賞を受賞する。小説に『鬼官兵衛烈風録』
『名君の碑』『戦国はるかなれど』『疾風に折れぬ花あり』、評伝・歴史エッセイに『保科正之』『なぜ会津は希代の雄藩になったか』『歴史の坂道』『幕末史 かく流れゆく』など多数。

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