園子温映画全研究1985-2012

  • 洋泉社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800300393

感想・レビュー・書評

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  • 園子温映画には何度も同じ名前を持ったミツコが現れる。
    その事は昔聞いたら初恋の人の名前だと園さんは教えてくれたし、渋谷署のお偉いさんと飲んで一緒にいた女の子と写真を撮ってその子女子高生なんだけどさと言って取り締まりを緩くさせたり、明日は天皇誕生日だからやるなら違う日に東京ガガガやってくんないかなって言われたとかそういう話はこの所の『希望の国』に関するプロモーションや『非道に生きる』の中で披露されている。

    この本は初期の作品からピンクやAV、薔薇族的なものからオールアバウト園子温な作品を取り扱っている。

    ミツコが何人も現れるように園作品は一作ごとの強度や姿勢もだが過去の作品でのアプローチが後に活かされていたり続いていることに気付かされる。

    新作『希望の国』を観た時に園ファンならまず『ちゃんと伝える』が浮かぶはずだ。本の中でも語られているけど『愛のむきだし』と『冷たい熱帯魚』に挟まれているのであまり語られていない。父と子の関係性や距離はこの二作は繋がっている事に『希望の国』を観た批評家はきちんと気付いて語れているのか?

    『ちゃんと伝える』の主人公の名前が『自転車吐息』の北史郎と同じで園さんの出身地である豊中で撮られている事の繋がりからPFFのスカラシップ作品『自転車吐息』から最新作『希望の国』への流れをきちんと語れているのか、そういう意味でこの『全研究』はとらえて語れているから最近園作品にハマった人には過去作へのいいとっかかりになるはずだ。

    『うつしみ』が『愛のむきだし』にどう繋がるか、『自殺サークル』や『エクステ』がJホラーブームの中にあってどう異質なのか、『セカチュー』に始まった誰かが死んでそれを観て泣いてすっきりするようなあの一連の流れの時にあった『ちゃんと伝える』だったり。

    中学生ぐらいから園作品をリアルタイムで観ている松江さんと適度な距離感で作品を語るモルモット吉田さん、そして聞き手は園さんが売れない頃から互いに雌伏してる頃からの盟友である別冊映画秘宝の田野辺さんの微妙に違う園作品への距離感や感じ方も読んでいてすぅーと染み込んでくる。

    園作品をきちんと今まとめておいてさらに園さんに映画を撮ってほしいと願っている田野辺さんだからこそ作れた本だと思う。

    来年公開の『地獄でなぜ悪い』で二階堂ふみが演じる役もミツコだしね。

  • 2017/7/23購入

  • 今借りた2。がっつり読ませていただきます!

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著者プロフィール

1977年生まれ、東京都出身。99年、日本映画学校卒業制作のセルフ・ドキュメンタリー『あんにょんキムチ』が一般公開され注目を集める。その後OV『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズ、『セキ★ララ』、『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』『ライブテープ』などの作品を発表。

「2010年 『質疑応答のプロになる!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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