秀吉の出自と出世伝説 (歴史新書y 38)

著者 :
  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800301178

作品紹介・あらすじ

卑賎の出身、異様な容姿、残虐行為、謎の出世譚-史実と伝説の間で揺れ動く、天下人の「闇」のベールを剥ぎ取り、「人間秀吉」の生涯に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • なかなか面白かった。
    これまでの秀吉像を信頼に足る史料を元に見直してみようというもの。

    たしかに、秀吉の印象というのは、小説だったり、ドラマだったりで取り上げられている明るい部分が多い。
    それは総じて信長や家康との比較という意味で多分に強調されすぎてきたところでもあります。

    用いる史料の信頼性を考えるというのは、歴史学的な検証の際に絶対的に必要なことなので、その通りだと思って読む部分も多数あったが、実際、引用している史料など、そのあたりの史料はどういうものですか?と思うことも多々。
    専門外の人間としては、史料名を出されても、いまいちわからず、せっかく史料の重要性を説いているのだから、史料の位置づけ部分もしっかりと説明があってほしかった。

  • 面白くて一気に読んだ。

    豊臣秀吉の人生を、最新の歴史研究と一次史料を元に俯瞰して、人間秀吉に迫る一冊。下賤の身分から織田信長の元で栄達し、果ては関白太閤にまで昇りつめた男の、イメージと実像の違い、栄達のために勤しむ努力と野心が語られている。


    戦国時代は本当に日本の歴史の中では「伝説」的な時代で、虚実入り乱れた話が今も語られている。秀吉もその戦国時代の主役の一人として、下克上の究極として、様々な研究があるけれども、この本では流行の学説(秀吉は実は新奇な出自を持っていたとか)には否定的な立場で、本人の貧しさや卑しい身分から抜け出すための野心と努力によって栄達が成し遂げられた……としている。


    私はこういう視点は一周回って新鮮だったし、歴史学者として真摯な歴史上の人物との向き合いかただと思う。軍事的才能については、かなり控え目に書いているけれども、虚飾を剥いで考察したところを読んでもなお、秀吉の軍事的才能は疑い用もない。残酷さも含めて、当時では傑出した英雄だったのは間違いない。


    秀吉のような人でも、晩年は孤独だったという結びは、人生の虚しさを感じた。ただ、彼の今太閤というイメージは後世まで受け継がれて、明治維新などに、身分を超えた立身出世の肯定的イメージに結びつくので、歴史的役割は低くないと思う。

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著者プロフィール

(株)歴史と文化の研究所代表取締役。専門は日本中近世史。
『豊臣五奉行と家康 関ケ原合戦をめぐる権力闘争』(柏書房、二〇二二年)、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』(星海社新書、二〇二一年)、『関ケ原合戦全史 1582-1615』(草思社、二〇二一年)、『戦国大名の戦さ事情』(柏書房、二〇二〇年)。

「2022年 『江戸幕府の誕生 関ヶ原合戦後の国家戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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