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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800303325

感想・レビュー・書評

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  • 空飛ぶモンティ・パイソン観たかったなあ

  • タモリ読本

    洋泉社
    2014年3月14日発行

    文字が細かいので、読むのにとても時間がかかりました。

    タモリを論じている本は山のようにあるが、「いいとも」を辞めた以降も、本はもちろん、自身で語ることもしていないタモリ。もちろん、取材や番組で断片的に語りはするが、周囲でタモリ論をああだこうだと言っている名だたる連中を烏合の衆とばかり嗤っているかのうように静観している。

    昨年、「タモリ論(新潮新書、樋口毅宏)」というまるで独り言のような、しかもゲスな本を読んで、そうした本のひどさを知ったが、この「タモリ読本」は、これまでのタモリの歩みを時系列で整理しつつ、その時々に濃密に接してきた人たちの話をまとめているので、たんなる烏合の衆モノとは違う。

    とくに、古い時代の共演者の話は非常に興味深い。新しい共演者だと、もうタモリがおそれおおくて距離を置いて見ている人が多く、そういうのはまた烏合の衆なのである。

    小松政夫が初期のタモリと延々やったネタづくりなんか、とても面白かった。当時のディレクターなどのこぼればなしもよかった。現場を体験していないと、つまらない。

    多くの放送作家が、重箱の隅をつついたように過去のタモリについて書いているが、彼らのタモリ論は面白くない。しかし、こんな時にこんな事があった、こんな発言をした、という「事実」は興味深い。

    一言でいって、タモリはやっぱりすごい。

    “文化人”によるタモリ論のページはつまらない。
    一番期待した宮澤章夫(劇作家、サブカル論では第一人者)も、つまならかった。小説家の田中慎弥(直木賞受賞の時に石原慎太郎を批判した作家)も、まるでダメ。同じく作家の山内マリコもたんなるスペースつぶし。

    ひとりだけ、映画評論家の町山智浩が書いていた、オールナイトニッポンで聞いた内容についての事実紹介が面白かった。これは、私も聞いてはっきり覚えているし、学校で流行言葉にもした。
    ↓ ↓ ↓
    当時、タモリさんがものすごく攻撃したのがさだまさし。「二百三高地」(80年)って映画があって、彼はその主題歌「防人の歌」を歌った。当時「二百三高地」は日露戦争を賛美した映画だって言われてて~実際観ると違うんだけど、こういう戦意高揚映画にフォークシンガーが歌をつけること自体許せないって徹底的に批判したのね。・・・あの状況でさだまさし批判やった芸人はタモリさんだけだから。その流れで小林秀雄批判をしたのもすごかったよね。「無情という事」で「真珠湾攻撃は西洋文明に対する日本の逆襲で、感動した」と言ったことを批判したの。「オールないとニッポン」でだよ?
    そういう右翼的なものを批判する一方でタモリさんは左翼も攻撃してた。ニューファミリーって言葉があったんだよ。<♪チャーミーグリーンを♪>って潜在のコマーシャルがあって、電通クリエーターだったSF作家の鏡明さんが奥さんと子供と手を繋いで登場するわけ、ニューファミリーってのは友達夫婦みたいな漢字で、それまで家族ってものを解体してきたヒッピーを卒業した人たちがファミリーを作り始めたことで・・・タモリさんは、ふざけんじゃねえ、偽善だって言ってんだよ。つまり、それまでの左翼が被酔ったってことで攻撃してるわけじゃん?

    (メモ)
    いとうせいこうは、タモリのオールナイトニッポンで、ADだった。(6)

    タモリの芸は捨てる芸(いとうせいこう)(8)

    なぎら健壱は「タモリ倶楽部」の本番撮影の中で、仙台駅に着いたら電車から降りてキオスクにビールを買いにいったところ、袋からビールが落ちて、拾おうとしたら列車のドアが閉まった、浴衣姿で駅に一人取り残された。(13)

    タモリ倶楽部の「飲み」の回は6時間ぐらいカメラを回す、途中2時間はしょったら誰でも酔っぱらう。タモリはそんなにダメにならない。(15)
    タモリ倶楽部がはじまって「あ、これは密室芸とは違うけど、自分を出せるんだろうな。自然な気負わない形を見つけたな」となぎら健壱は思った。(17)

    大仁田厚は、全日本プロレスを辞めてFMWのデスマッチで復活するまでの間、小松政夫の弟子だった。(48)

    タモリのイグアナの原形は、谷啓の「ワニ」だった。(50)

    小松政夫の淀川長治とタモリの寺山修司のものまね。「いたいけ祭り」で二人とも車いすに乗り、やがて喧嘩をする展開に。寺山役のタモリが「この湯飲みというものは、お茶を飲むために存在するんだろうか」と延々つぶやいた。当の寺山から小松政夫に「あれは台本があるんですか?」と電話がかかってきた。(51)

    中村誠一と山下洋輔、森山威男が九州のホテルでごみ箱を頭にかぶって虚無僧のマネをしていたら、10センチぐらい開いていたドアのスキマからいきなりタモリが歌いながら入ってきた。(63)

    (今夜は最高で)原田芳雄と美空ひばりを迎えた回では、ひばりの歌はなんでも歌えると豪語する原田が、本人の前では借りてきた猫同然。対照的に、タモリはまったく動じる様子を見せない。(73)

    うわさのチャンネルでは、せんだみつお、タモリ、デストロイヤーが同じ楽屋(3人部屋)だった。タモリはデストロイヤーに「パスポートの写真も覆面被っているの?」と聞いた。(86)

    2010.10のいいとも終了宣言以降、タモリがしきりに使っている「なりすま」という言葉。「師匠もいない、キャリアもない俺はここまで“なりすまし”で乗り切ってきた。ゲストも年下なのに芸歴は上。大物司会者になりすますことで体裁を保ってきた」(98)

    山本晋也監督の流行語「スゴイですね~!」は、いいともで2人がしていた子供の質問に答えるコーナーで、山本監督の回答にタモリと同時に言った「スゴイですね~!」が始まり。(143-144)

    タモリは「一杯のかけそば」を「涙のファシズム」と切り捨て、ブームを終わらせるきっかけを作った。(169)

  • いいとも以前のタモリに力点を置いた当時の関係者中心にインタビューやタモリ論を展開するムック。

    ANNを聞いていた世代には垂涎かもしれない。しかし、ボキャブラ天国以降のタモリしか知らない世代には少々食傷気味になるかもしれない。

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著者プロフィール

1961年生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・テレビ・舞台など、様々な分野で活躍。1988年、小説『ノーライフキング』(河出文庫)で作家デビュー。『ボタニカル・ライフ―植物生活―』(新潮文庫)で第15回講談社エッセイ賞受賞。『想像ラジオ』(河出文庫)で第35回野間文芸新人賞を受賞。近著に『「国境なき医師団」になろう!』(講談社現代新書)など。

「2020年 『ど忘れ書道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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