耳鼻削ぎの日本史 (歴史新書y)

著者 :
  • 洋泉社
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本棚登録 : 121
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800306708

作品紹介・あらすじ

平安時代から戦国期にかけての日本では、刑罰として、また戦功の証明として、耳鼻削ぎが広く行われていた。中世の日本人が耳と鼻に託していた象徴性を解き明かしつつ、実際に各地の耳塚・鼻塚を訪ね、伝承の真実に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 日本社会は古代において中華文明の強い影響のもと脱耳鼻削ぎの姿勢を貫いていたが、独自の政治・文明路線を歩むや、中華文明の周辺地域として、耳鼻削ぎ刑を採用した。中世においては、死罪より一つ低い刑罰として、主に女性や僧侶に執行されていた。中世から近世に移り、秀吉や江戸初期の政治がまだ盤石でなかった時代には、耳鼻削ぎ刑は見せしめの意味が大きくなる。この刑がほとんど執行されなくなったというか、禁じられるようになったのは、徳川綱吉の時からである。生類憐みの令は、無益な折衝や流血を厳しく戒めるものであったのだ。殺伐とした戦国の遺風を断ち切り、平和と安穏の時代を開いたのである。秀吉の朝鮮半島での耳鼻削ぎは、日本のことを他国に持ち込んだということで筆者は批判している。また、全国に残る耳塚,鼻塚は、歴史名的な根拠には乏しいそうである。古墳がそう言われたり、耳がよくなるなどという民間信仰から来ているようだという。
    しかし、鼻削ぎってなんかグロイよなあ。実際には、鼻梁は削がず、小鼻と鼻の頭を削ぐだけのようだが、でもねえ。
    それにしても、清水克行さんは面白いことを研究する!

  • HONZ 麻木久仁子

  •  恐ろしい題名だが、実際に頻繁にあったと知るとゾッとする。多くの文献を渉猟し、耳削ぎ鼻削ぎの行われた背景というか状況を時代ごとに紹介し、この行為の持つ意味が変化していることを知った。理由が何にしろ、このような残虐な行為が長くあったことは、それぐらい殺伐としていたことだし、徳川中期には無くなったようなので、やはり平和というか文明の発達は偉大である。
     興味深いのは、中国には去勢の習慣があったのに耳鼻削ぎは紀元前に無くなっていて、周囲の国々にはあったというところである。
     耳鼻削ぎが、暴力が幅を効かせる世界ではどこにでもあったつまり誰にでも思いつく普遍的な肉刑行為であるならば、今後もどこかで発生する可能性があるわけで、時代が逆行しないことを願うだけである。

  • 現代人だから、命は助かってもやっぱり耳鼻削ぎは嫌だな…

  • 現代の目線で過去を見ると本質を見失う。理不尽な死と常に隣り合わせであった中世、耳鼻削ぎは「命だけは助けてやる」宥免措置だった。しかし助けられるのは本当に命だけ、最早人間としては扱われない。それでも人々は人としての死よりも獣としての生を選んだ。

    論理と立場が明快でたいへん理解しやすかった。本書の中ではとりわけ、耳や鼻を欠く姿がハンセン病患者と重ねられた、という指摘が衝撃。罪人と宿痾者(と見られていた被差別民)の織り成す差別再生産機関……。地獄だ。『徒然草』で有名な、戯れで鼎を被って耳鼻を失う僧の話も、耳鼻削ぎの意味がわかった今ブラックユーモアで済ますには余りにむごい。五章で示された事実根拠のない耳塚たちにも思わず手を合わせてしまいそうだ。

  • 古式ゆかしくもグロテスクな日本の「伝統」である耳鼻削ぎの変遷。死刑の減免という意味合いから、首実検の代用、見せしめになり、17世紀末を境に無くなるまで。独特なテーマは新鮮で読みごたえがある。
    現代に残る耳塚には実際に戦国時代まで由来を遡れるものは無い。形状などから名づけられたものに後世の人々が慰霊・治病の物語を仮託していく。ストーンヘンジのごとくか。
    一方、中国では紀元前の前漢・文帝の時代に耳鼻削ぎは廃止しているという。あちらはあちらでもっとエグイ刑罰があるが。

  • 中国では前漢の時代には肉刑が廃止されていたが、日本ではその後1500年近く行われていた耳鼻削ぎは何のために行われていたのか、時代とともに変化した耳鼻削ぎが書かれている。

  • 新書の一番大事な事はタイトルであろう。その次は?と聞かれたら間違いなく序文であろう。数ある新書の中でタイトルに惹かれ、1ページ目からめくっていくときにワクワクするか。それだけで購入は決まる。
    そういう意味であれば本書は非常に優秀である、全く専攻の違う素人を食いつかせるさわりはよく書けている。
    しかしその期待に全く答えられていない。冗長な文章は明らかにページ数を稼いでおり、内容は著者の専門分野のみに留まっている。序文の内容であれば、もう二三人の共著者を加える必要がある。専門分野に囚われてしまい新書の立ち位置が分かっていないと言わざるを得ない。
    しかしながら著者の誠実な論理展開には好感を持て、この分野への興味が沸いた事から一定の効果はあったと言える。

  • <目次>
    はじめに 耳塚・鼻塚の伝説を訪ねて
    第1章  「ミミヲコイリ、ハナソソギ」は残酷か?
    第2章  「耳なし芳一」は、なぜ、耳を失ったのか?
    第3章  戦場の耳鼻削ぎの真実
    第4章  「未開」の国から、「文明」の国へ
    第5章  耳塚・鼻塚の謎
    終章   世界史のなかの耳鼻削ぎ

    <内容>
    前半は間違いなく面白かった。柳田国男、南方熊楠の論争から教科書の「阿氐河荘民訴状」や山上憶良の貧窮問答歌などの話、「耳なし芳一」の耳もそこに関連するなど。中世までは男は斬首のところが女性は耳鼻削ぎになる、という話には納得した。戦国期以降はわかる感じ(でも、削ぎ方が鼻全部ではなく、頭骨の部分を避け、口髭の部分を含んで削ぐ、というのは目から鱗…)。江戸期の話で、会津藩が保科正之の決定故、その残酷さを残し、岡山藩が池田光政の決定で早くにこれをやめた、というのは面白かった。

  •  日本と(世界の)耳鼻削ぎの歴史と全国に散在する耳鼻塚調査。

     中世までの「女性や宗教者に対する死罪を免ずる刑罰」から近世の「見せしめ」へ。過剰なまでの乱用への反動と文明化で収束。残る戦国の記憶。

     方広寺耳塚のみ由来が確実という調査結果で全体の盛り上がりが欠けてしまったのは残念。

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著者プロフィール

1971年生れ,明治大学商学部 教授[主な著書]『室町社会の騒擾と秩序』(吉川弘文館,2004年)『喧嘩両成敗の誕生』(講談社選書メチエ,2006年)『日本神判史』(中公新書,2010年)

「2014年 『戦国法の読み方 伊達稙宗と塵芥集の世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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