道徳感情はなぜ人を誤らせるのか ~冤罪、虐殺、正しい心

著者 :
  • 洋泉社
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本棚登録 : 376
レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (535ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800307453

作品紹介・あらすじ

冤罪、殺人、戦争、テロ、大恐慌。すべての悲劇の原因は、人間の正しい心だった!我が身を捨て、無実の少年を死刑から救おうとした刑事。彼の遺した一冊の書から、人間の本質へ迫る迷宮に迷い込む!執筆8年!『戦前の少年犯罪』著者が挑む、21世紀の道徳感情論!

感想・レビュー・書評

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  •  まず,本書のタイトルに引きつけられました。
     正義を振りかざすとろくなことにならないのは歴史のいろいろな事実が証明してくれています。
     昨今の「道徳心がないから犯罪を犯す」なんて短絡的なこととは対極にあることが書かれているに違いない…そう思わせるに十分なタイトルです。
     そして,ネット上の本の紹介には次のように書いてありました。

    冤罪、殺人、戦争、テロ、大恐慌。すべての悲劇の原因は、人間の正しい心だった! 我が身を捨て、無実の少年を死刑から救おうとした刑事。彼の遺した一冊の書から、人間の本質へ迫る迷宮に迷い込む! 執筆八年! 『戦前の少年犯罪』著者が挑む、21世紀の道徳感情論!

     おお~,あの『戦前の少年犯罪』の著者か~とも思いました。『戦前の少年犯罪』は,「最近の子どもたちの凶悪犯罪が増えている」という偽善者やマスコミの煽りに対して,「決してそうじゃない。いまの子どもたちのほうがよほど落ち着いている…戦前の方(道徳心がないと騒いでいる老人たちの方)がよほどひどい世界だった」ことを証明しています。何か起きるとすぐに子どもたちに一定の価値観を押しつけようとする大人たちへの警鐘でもある本です。そんな「かんが えるろう」さんの書いた本なんだから,本書も,興味深いことが書かれているに違いありません。
     一読しただけですが,これって,本好きの人にはたまらない内容です。ある殺人事件の話から物語は始まりますが,それがあっちへ行ったりこっちへ行ったりと実にさまざまな模様を繰り広げます。あまり読書に間を置くと,話がつながらなくなるのではないかと心配になるくらいの縦横無尽さです。でも,この著者による揺さぶられ方が,わたしはわりと好きなんです。

    進化心理学、認知科学、政治哲学、倫理学、歴史、憲法、裁判、経済、数学、宗教、プロファイリング、サイコパス……。あらゆる分野を縦横無尽に切り裂き、新機軸を打ち出した総合知!

     著者のアタマの中はつながっています。一方わたしのアタマの中は,それぞれバラバラです。それが,著者の筆の力によってつながっていく気持ちよさ。「そこはつなげすきだろう」と思う部分でさえも,楽しむことができました。 
     実はこの本。読んだのが体調を崩していたときの週末です。何もしないでベットに横になっていたので,うとうとしたり起きたりしながら,一気に読みました。おかげで,熱も下がって体調も元通り。不思議な体です。

  • 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか。
    倫理を超えた大義名分として掲げられ、自己の行為を正当化するからだ。
    冤罪事件がテーマだが、ISの問題やブラック企業になんかも通じるところはある。

    面白い!

  • 社会
    心理

  • 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか ~冤罪、虐殺、正しい心

  • タイトルにある「道徳感情」についての理論的なところは第13章。スミスの道徳感情論と現代進化論の知見を結び付けていておもしろい。民主主義的な対話あるいは言論の自由を保障することが、冤罪などの誤りを防ぐことに役立つと述べている。一点気になったのは、「道徳感情」と「認知バイアス」の関係で、冤罪の問題が道徳感情によるのか、認知バイアスによるのかが明確ではないように思われた。両者の関係については自分でももう少し調べる必要がある。

  • 前半は実録事件物として一級品。特に、後に拷問王と呼ばれ袴田事件などの冤罪を連発する紅林刑事が名刑事扱いされるようになる浜松事件の顛末が興味深い。

    後半は、いきなり哲学書の様相を呈する。「道徳感情が冤罪をまねく」理由について、哲学や心理学を援用しながら、大胆な仮説を立てていく。この部分も著者の博覧強記がうかがえて知的好奇心を刺激するのだが、前半からの話の飛躍にかなりおどろく。2冊の別の本を、1冊に無理矢理まとめたような感じ。

    前半も後半もすごく面白いんだが、通して読むと「奇書」というか……。それも含めて、とにかく必読。

  • 少年犯罪についての論考で高名な著者なので、てっきりそれについての本かと思えば…看板に偽りこそなけれどそれのみにもとどまらず、縦横無尽に論を広げた力作だった。
    獲物を平等に分け合うことで生き延びてきた狩猟採集時代に培われた本能に端を発する、公正無私なる他罰心。それこそが冤罪からファシズムに至るまでの、人類の過ちの源泉なのだと説く論に説得力はあるが、いかんせんテーマが取っ散らかりすぎて散漫。誤字の多さといい、プロの編集者の手になる本なのか疑うレベルだった。

    2018/5/30~6/4読了

  • 宮崎哲弥が今この時代に読んでおくべき本というものがあるが、まさにこの本はそれだろう、なんて勧めるものだから読み進めたものの。戦前の二俣事件、浜松事件、の異常犯罪と紅林刑事と冤罪の話が延々続いて最後はアダムスミスが出てきて、ぼくみたいな馬鹿には理解不能、ひたすら苦痛でした。 宮崎哲弥は面白くて3回読み直したそうです。

  • 特に前半、やたらとあれこれが宿命的だとかドラマチックな風に書かれているのに辟易した。それは置いといて、包括的に物事を捉えようとする姿勢は好感が持てるし、面白かった。「評判」が落ちることを恐れる犯行が多いとか、お金が「評判」の包装紙(他人からよい「評判」を得ていることのバロメーター)というのも納得。

  • 冤罪の話かメインだが、内務省の話やら、戦争の話まで拡散しまとまりがなく、時間軸も前後するので読みにくい。著者が様々な知識を豊富に持っていることはわかるが、この内容を一冊の本に入れ込むのは無理があったのでは?それぞれ別の本にして、スッキリとした形で読みたい。

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