アメコミ映画40年戦記 -いかにしてアメリカのヒーローは日本を制覇したか (映画秘宝セレクション)
- 洋泉社 (2017年1月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784800311085
感想・レビュー・書評
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これ一冊でアメコミ映画のすべがわかる!
アメコミ映画の誕生、冬の時代、新世代の台頭、そして世界的大ヒットジャンルとなるまで。
一部のマニアのものであったヒーローたちが、なぜここまで日本で定着したのかを追った、究極のアメコミ映画研究書。
アメコミの実写化は、テレビドラマから始まった。リチャード・ドナーが映画化した「スーパーマン」のアメコミ特有の荒唐無稽さとコミカルな描写を盛り込みながらぎりぎりリアリティを失わない作劇は、この後もアメコミ映画化する時のスタンダードとなった。
80年代からバットマンがDCコミックの人気ヒーローとなったきっかけは、フランク・ミラー作の「バットマン・ダークナイト・リターンズ」など警察や法律に頼らず自らの手で正義を行うスーパーヒーロー像が好評だったから。
そのダークでシリアスなイメージを押し出したティム・バートン監督の「バットマン」は大ヒットし、男心をくすぐるボディアーマー型のバットマンスーツやヒーローとヴィランが表裏一体という関係やストーリーは、バットマンだけでなくアメコミ映画に影響を与えた。
ティム・バートン監督版バットマンのテイストを盛り込みながら、バットマン本来の魅力を表現したアニメシリーズは好評で、後に「バットマン・ダークナイト・リターンズ」「バットマン・キリングジョーク」のアニメ化に繋がる。
クリストファー・ノーラン監督版バットマンが成功したのは、バットマンとブルース・ウェインの苦闘と成長を描いた地に足のついたストーリー、アメコミに詳しいデビット・S・ゴイヤーが選択した原作エピソードでしっかり練り込まれた脚本、アメコミファン以外の人にも説得力のある現代的でリアルな描写が受け入れられたから。
ただ同じセオリーでスーパーマンの苦闘と成長を描いた「マン・オブ・スティール」は人々に希望を与えるヒーローというスーパーマンのキャラクターの魅力にあっておらず、「バットマンVSスーパーマン」ではスーパーマンとゾッド将軍の戦いに巻き込まれたブルース・ウェインがスーパーマンの強大な力に脅威を感じる導入部や犯罪との戦いに疲れたバットマン像は魅力的だがスーパーマンの描写が足りず原作コミックから引用した多数のエピソードが整理しきれず混沌としたストーリーが賛否両論だった。
「ゴッサム」などテレビドラマのほうが、原作の魅力を表現し切れていた。
一方マーベルコミックの映画は、「Xメン」「ブレイド」の成功でコミックの映画化に光明が見えてきたが「デアデビル」などの失敗でマーベルが直接製作する必要に迫られたプロデューサーは自社のキャラクターを担保に融資してもらいマーベルスタジオを設立して「アベンジャーズ」を中心にしたシリーズを成功させた。マーベルコミックの映画化が成功したのは、単純にキャラクターの本質を映像化すること。アメコミを映画化する時の原作者と製作陣の一筋縄ではいかない関係での、「シンシティ」は好評だったけど「ザ・スピリット」は失敗したフランク・ミラー、「ウォッチメン」など映画化する度に賛否両論のアラン・ムーア、「キックアス」「キングスマン」などコミックと映画というメディアの違いを熟知して自身のコミックを映画化する時に上手く立ち回るマーク・ミラーの違いから、アメコミを映画化する時の課題と成功の秘訣が浮かび上がる。
アメコミ映画の隆盛の裏にある秘話や苦闘を知ることが出来るアメコミ映画入門書です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
友人のお勧めで読んだがとにかく面白かった。物事を歴史的な視点から理解する楽しさが込められてる。
本書はアメコミ自体ではなく、それを原作としたアメコミ映画を中心に扱う。
アメコミが映画化へ至るまでには様々な人間模様や社会背景が存在している。今までただの娯楽映画として楽しんでいたアメコミ映画にまた新しい見方を教えてもらった。 -
とりたてて面白い論考はないが、おおまかなアメコミ映画史を知るには充分かと。