犬を愛した男 (フィクションのエル・ドラード)

  • 水声社
3.67
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本棚登録 : 47
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (674ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784801002692

作品紹介・あらすじ

世界革命を夢見るレフ・ダヴィドヴィチ(トロツキー)の亡命、暗殺者ジャック・モルナルに成り代わるスペイン人民戦線の闘士ラモン・メルカデール、そして舞台はメキシコへと至る。イデオロギーの欺瞞とユートピア革命が打ち砕かれる歴史=物語を力強い筆致で描く、現代キューバ文学の金字塔。

感想・レビュー・書評

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  • ぶ、分厚い。

  • 一ヶ月位頑張りましたが、全然進まず。ソビエト時代の事も勉強しつつ読んだのですが。スターリンの政策は考えの違う人々を粛清しまくり、トロツキーの思想も理想と現実がかけ離れすぎても、民にとっては、今日明日の生活が重要で、あっち派こっち派言われてもさ、生活が楽にならない限り、そんなん考えてる余裕ないわよ、みたいなー。ちょっとなー、もうちょい読みやすく短くまとめてくださいよー。

  • 全身革命家であるトロツキーと、彼を葬ろうとする暗殺者のそれぞれのパートが、史実と創作の区別がつきにくいほど非常によく描けている。とりわけ世界中を転々と渡り歩いた二人がメキシコでお互いに接近してからは、それぞれの場面が時間軸を微妙にずらして展開され、とてもスリリング。そのため最初は、現代につながる第三の視点がなぜ必要なのかわからなかった。がミステリー作家らしい、終盤のさらなる視点切替によって、現代キューバでこの物語を完成させる必然性を感じ、単なる歴史読み物を超えた文学に昇華させていると大いに感心させられた。

    Netflixにトロツキーのドラマがあるが、ロバート・サーヴィスの伝記によれば、まるで印象が違う。手に入れたパスポートからその名をとったと言われるこの男は、人生まるごとイデオロギーに奉じ、相手を射抜く狼の目を持つ。筆は立つし、論争も誰にも負けず、魔法とも賞せられるほどの演説で聴衆を魅了する。おまけに軍事的才覚も抜群で、革命ロシアで最高の万能活動家。だが一匹狼で、周りを軽視し、人の意見を聞かない。政治家としての能力は悲惨で、組織人とはなりえず、最後には友人でさえ見限る傲慢さも併せ持つ。

    シベリアに最初の妻子を置き去りにするは、平気で他の女に乗り換えるはと、だらしない。だがひとたび混乱が起きれば、率先して動き、トロツキーの前では、レーニンがかすんで見えるとまで言われていた。近づくことさえ困難だと思わせるこれほどの傑物を葬るのにスターリンは誰を選んだか。切り札がスペイン人と聞けば誰だって冗談だと思うだろう。「なぜスペイン人が必要なんです?」という問いかけにコトフは、「母語がスペイン語である必要があったため」と答え、度胸はあるが情にもろく、口が軽いので、スペイン人は本来なら秘密工作員に向いてないとまで付け加える。

    事実、暗殺者ラモンもことあるごとに仮面を捨て激情し、たびたび暗中模索に陥っている。そのたびにトムとカリダッドから叱咤激励され、本来の使命を取り戻すのだ。ただ本書を読むと、そんな彼だったからこそ、最後までやり通せたのではないかと妙に得心がいった。このカリダッドという母親の存在も絶妙で、疎ましいがいないと影を追ってしまう、そんな彼女がいるだけで、ラモンの人物描写がより厚みを増している。もし創作だとしたら見事な人物配置だし、仮に史実でも会話など文学的想像力でよくここまで肉付けできたものだと感心させられた。

  • 期待して読んだけど入り込めなかった。
    600頁超あるんだけど、6分の1の100頁辺りで断念。
    「トロツキーの吐息を首筋に感じたんだな」

  • スターリンとの政争に敗れ、メキシコに亡命していたトロツキーと、彼を狙うラモン・メルカデール。二人の時が重なる一点に向かって行くそれぞれの物語はハラハラさせつつとても面白い。
    本書の作者はキューバ人作家とのこと。中々手にしない書を届けてくれた訳者と出版社にお礼を言いたい。
    ただ、674ページの大作。秋の夜長に良いかと思って手にしたが、一気読みはさすがに無理だったかな(^^;

  • トロツキー暗殺

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著者プロフィール

1955年、キューバのマンティーリャ生まれ。ハバナ大学で文学を専攻、文学雑誌や新聞の編集に携わり、1990年から探偵小説の執筆に取り組む。〈マリオ・コンデ警部〉のシリーズによってキューバ国内で名を知られ、シリーズ第3作『仮面』(1995年)でカフェ・ヒホン賞を受賞。以後、スペインの出版社から長編小説の刊行を続けている。『犬を愛した男』(2011年。邦訳、水声社、2019年)はスペイン語圏全体で大ヒット作となった。2015年にアストゥリアス王女賞受賞。現在もマンティーリャで執筆活動を続けており、歴史小説『異端者』(2013年)、『透明な時間』(2018年)などで好評を博し続けている。

「2022年 『わが人生の小説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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