文豪たちの悪口本

制作 : 彩図社文芸部 
  • 彩図社
3.12
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本棚登録 : 1849
感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784801303720

作品紹介・あらすじ

Twitterで「1冊ほぼ悪口でできてて最高」と話題の一冊!

文豪と呼ばれる大作家たちは、悪口を言うとき、どんな言葉を使ったのだろうか。
そんな疑問からできたのが、本書『文豪たちの悪口本』です。
選んだ悪口は、文豪同士の喧嘩や家族へのあてつけ、世間への愚痴など。随筆、日記、手紙、友人や家族の証言から、文豪たちの人となりがわかるような文章やフレーズを選びました。これらを作家ごとに分類し、計8章にわたって紹介していきます。
川端康成に「刺す」と恨み言を残した太宰治、周囲の人に手当たりしだいからんでいた中原中也、女性をめぐって絶交した谷崎潤一郎と佐藤春夫など、文豪たちの印象的な悪口エピソードを紹介しています。
文豪たちにも人間らしい一面があるんだと感じていただけたら、うれしく思います。

感想・レビュー・書評

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  • 現代ならSNSで炎上騒ぎといったところか。

    太宰治の川端康成への抗議文はちょっと子供っぽさが見える。川端康成の方が大人だったということか。
    川端以外の人々への言葉から見るに、イメージ通りの太宰が見えてくる。
    中原中也は今で言えば毒舌キャラでバラエティに呼ばれそう。常時周囲に噛み付いてはいるが、それでも自分が噛み付いて良い人間かどうかを注意深く確認しているところなど、小心者振りが垣間見える。
    志賀直哉に噛み付く無頼派と呼ばれた面々も、今で言えば大物芸能人に噛み付いてなんとか爪痕を残そうとする新人タレントを彷彿とさせる。

    坂口安吾の『不良少年とキリスト』から抜粋した太宰評が最も理解出来た。
    坂口の、冷静で第三者的な視点と太宰への深い情を感じられる描写が良い。

    夏目漱石先生はまさに『吾輩は猫である』の苦沙弥先生そのもの。神経質でせっかちで、でも弟子や友人たちへのお世話振りは微笑ましい。

    菊池寛の嫌われっぷりがいっそ潔い。
    若手小説家たちから永井荷風先生まで、いくら反論しても更に大きく反発され、荷風先生に至っては徹底的に無視され嫌われている。一体荷風先生との間に何があったのか。

    最後の谷崎潤一郎と佐藤春夫との、谷崎の妻千代を巡っての愛情と友情のこじらせ具合がすごい。
    傍から見れば笑えるけれど、当事者としてはたまらない。
    さらに二人の間を行ったり来たりの千代さんは一体どんな思いだったのか。

    作家の人間性とその作家が生み出す作品とは全く別物なんだなと改めて感じる。だからこそ後世にまで名が残る作家になれるのか。

    • nejidonさん
      fukuさん、こんにちは(^^♪
      コメント欄でははじめまして、ですね。
      いつも「いいね」をくださり、ありがとうございます。
      このような...
      fukuさん、こんにちは(^^♪
      コメント欄でははじめまして、ですね。
      いつも「いいね」をくださり、ありがとうございます。
      このような本も読まれるのですね。新鮮な思いで読みました。
      いえ、いつも小説がメインなものですから、珍しく感じまして。
      ということは・・私のレビューーも相当珍しく感じながら読まれているってことですか・笑
      この本で初めて「同じ本」を読んだ者どおしということになったのですね。
      しかもそれが「悪口本」という(^^;
      楽しいレビューをありがとうございました!
      これからもよろしくお願いします。
      2020/03/22
    • fuku ※たまにレビューします さん
      nejidonさん
      コメントありがとうございます。
      そうですね、私が読む本は98%は小説、それもエンタメ系です(^^;
      たま~に、こう...
      nejidonさん
      コメントありがとうございます。
      そうですね、私が読む本は98%は小説、それもエンタメ系です(^^;
      たま~に、こうした本も読みます。
      でもフォロワーさん方のレビューで新たなジャンルの出会いもありますし、この本もその一つで、普段なら手に取らないタイプの作品を知ることが出来てありがたいです。
      こちらこそ、これからも宜しくお願いします。
      2020/03/22
    • moboyokohamaさん
      読んでみたいです。
      読んでみたいです。
      2020/03/29
  • 「〆切本」の後に読んだ本なので、どうしても装幀が簡素に見える。
    だがよく考えると「悪口本」が立派な装幀というのも変だ。
    だから、これで、いいのだ、たぶん。
    ベースはブラックだし、それに背表紙だけで薄ら笑いが浮かんでくる。
    太宰治の、あの有名な頬杖をついた憂い顔の画像が入っているのだ。
    書店の棚でこの本の書名を見た人は、「おお、太宰が誰かの悪口を言っているか、言われているかだな」と思われるだろう。
    訴求力の高さという点で、この背表紙は巧い。

    今回は、解説は殆どない。悪口がエグすぎて、フォローの施しようがない。
    それでも笑ってしまうのが、文豪と称された人たちの凄いところだろう。
    実に嫌らしくしつこく下衆の極みで、それを名文で綴っている。
    「ペンは剣よりも強し」と熟知している人々だから、その筆致も鋭いことまぁ。
    今だったらSNSでたちどころに炎上騒ぎとなり、むこう5年くらいは顔出しNGかも。
    注意深く暮らしていても、知らず知らず人は間違いを犯すもの。注意しなければ尚更だ。
    しかもこれは誤作動ではない。
    相手を傷つけ打ちのめす目的で書かれた手紙や日記・随筆、友人や家族の証言などだ。

    更に開いた口が塞がらないのは、大正期の文藝春秋に掲載されたという、文壇を揶揄する「文藝書家価値調査表」というもの。芥川龍之介から始まる書家約70人の、「学殖・天分・修養・度胸・風采・人気・資産・腕力・性欲・好きな女・未来」がそれぞれ数値化されているのだ。
    製作したのは直木三十五らしいが、これはひとの道を外れている(でも可笑しい)。
    で、当然ながら文豪たちは真っ向から怒りを表明しているのだが、掲載したのが読売新聞や雑誌・新潮だったというのが、これまた凄い。
    編集の人たち、絶対面白がっていたよねぇ。
    ゴシップはこうして作られるというモデルケースを見るようだ。これは呆れる。でも笑える。
    笑って笑って、顔が元に戻らないのではと心配したくらいだ。

    坂口安吾の「不良少年とキリスト」の掲載もあり、その中で安吾は太宰治と志賀直哉を評しているが、それがこの本の白眉だろう。
    ここだけでもじゅうぶんなほどの読み応えで、後半に載せた夏目漱石や永井荷風、佐藤春夫や谷崎純一郎がむしろ愛すべき人にさえ見えてくる。

    誰かの悪口を言いたくなったら、思い切り紙に書きなぐってみると良いのかも。
    でも文豪でも何でもない凡人なのだから、そこは分をわきまえて誰にも見えないところに廃棄するのが良いのだろう。
    自分の悪口がたまたま耳に入っても、上手い言い方だとつい喜んでしまうワタクシ。
    どうせ悪口を言うのなら、ひねりの効いたスキルの高いものがいいよね。

  • 太宰治、夏目漱石といった文豪たちが残した悪口集。書簡や周りの人の残した記録、日記などに残っているもので、同じ小説家の対するものから、家族などへのものも含まれる。

    ちょっとわかりにくいものがあるが、永井荷風が、日記で事あるごとに菊池寛を嫌っていたり、夏目漱石の負けず嫌いな感じを芥川龍之介が書いたりと、人間性が見えてくる。谷崎潤一郎と佐藤春夫の話は、聞いたことはあったが実施の書簡で読むと、まじめに悩まれている上とは、わかるが何だかなぁと言う感じがしてしまう。

    太宰治や織田作之助から志賀直哉のようなベテランへの憤りもあれば、永井荷風から菊池寛の最初は、永井荷風が菊池を菊地と間違えたことを雑誌で批判した事だったりと事由も千差万別でわかるものもあれば、そこまでと怒るのかと思うのもある。

    ちょっとおもしろかったのは、永井荷風の日記に出てくる菊池寛の話。飲み屋の女給の人気投票で、ビール一本買うごとに一票入れられる仕組みで、菊池寛が投票するために150本購入したとの話。昔からこう言う商法はあったんですね。

  • 日本文壇の巨匠たちは、作品は素晴らしいが、中身はろくでもない奴らばっかりだなと昔から思っていた。
    他人の妻は平気で寝とる、誘惑する、捨てる、金はせびる、返さない、友をなじる、捨てる、嫉妬する......。
    しかしここまで悪口が達者だと、やっぱりすごいのかもしれない、大家とはこういうものだ、と思ってしまう。

    太宰治はまあコンプレックスの塊で、
    「いやしいねえ。実にいやしいねえ。自分が、よっぽど有名人だと思っているんだね」(24頁)
    と言ってみたり、川端康成に
    「刺す。」(16頁)
    と言ってみたり、いやいや、なんともあけすけ、露骨、大っぴら。

    私の大好きな谷崎潤一郎は、自分の妻が嫌で、妻の妹に懸想するが振られてしまう(当たり前だ)。
    しかしその後妻とよりを戻す。
    最低だなこのおっさん。
    そして恋敵の佐藤春夫とは丁々発止、
    谷崎はこういう。
    冷静ぶってないで言えよ、汚いところをむきだしにせよ(212頁)
    お涙頂戴なんてことをするな!
    という内容の書簡を送っている。
    あの美しい言葉遣いの、タニザキはどこへ?

    まあ文豪たちの口汚さったら!
    人間らしいというか、黒々として正視に耐えない。
    が、だからこそ文豪なのかも。
    清濁併せ持つから、他人の心を引きつけるのだから。

  • 「はじめに」には、
    『随筆、日記、手紙、友人や家族の証言から、文豪たちの人となりがわかるような文章やフレーズを選びました』
    と書かれている。

    ちょっと待ってーーーーー!
    何かの意図を持って面白いところを抜き出して切り貼りされてたりしたら、それで「人となり」なんか判断される文豪は気の毒、とちょっと思いましたが・・・

    読み終わって、自分が今まで作品を読んだことのある文豪に対してもない文豪に対しても、何か先入観を抱えてしまったのではないかと気がかりです。

    ・太宰の、芥川賞への執念は有名。
    作品はいくつか読んでいるから、彼のぐちぐちウジウジにはもう慣れている。
    いつもの太宰。
    ・中原中也の罵詈雑言は、その場限りのガス抜きみたいに思う。
    写真では結構なイケメンなのに、口と酒癖がとびきり悪いらしい。
    日記の中も罵詈雑言でいっぱい。夢の中でもバリってるかも。
    ・太宰の死後に書かれた坂口安吾の文は、悪口というよりは、「なんで死んじまったんだよう〜!お前のそういうところがダメなんだよ!」という、友情の裏返し表現な気がする。
    私の中で、安吾株アップ。
    ・夏目漱石は、家族からは怖がられていたようだが、家族に当たるくらいしかできない小心が可愛いと思う。
    ・永井荷風の「菊池寛だいっきらい」は徹底している。
    大人げない偏屈ジジイである。
    ・谷崎潤一郎VS佐藤春夫の手紙のやりとりは、小説のような読み応えあり。
    谷崎は佐藤より6つ年上。
    いい意味でも悪い意味でも「オトナ」と感じる。
    佐藤の言い訳っぽい書き振りは太宰と同類かなと感じたけれど、卑屈感とねちっこさがいまひとつ足りない。
    この戦いは長年かけて良いところに落ち着いたようなので、一冊の結びとしては良かったと思う。

    それとは別に、驚いたのが『滑稽新聞』や『スコブル』という、風刺ゴシップ誌での、文豪のネタにされっぷり。
    文豪ネタのアニメが出たときに「冒涜!」と騒いだ人たちもいたようだけど、あんなもんではない。
    『文藝春秋』大正13年に載った「文壇諸家価値調査票」というのもなかなかに酷い。
    財産→病気、とか、好きな女→妻君(人の)・・・などと書かれている。
    訴えてもいいレベル。

    一、太宰治の章
    二、中原中也の章
    三、無頼派×志賀直哉の章
    四、夏目漱石の章
    五、菊池寛×文藝時代の章
    六、永井荷風×菊池寛の章
    七、宮武外骨の章
    八、谷崎潤一郎×佐藤春夫の章

  •  太宰が出てくる時点で、「あっ、川端康成に喧嘩吹っかけた話か志賀直哉disだな」と分かってしまった私ですが……。志賀直哉に怒っていたのは織田作も坂口安吾も同じくしてだったようで。死にものぐるいで今を生きろっていう安吾の考え方は好きだし、太宰に対する捉え方も好き。
     
     対して中原中也はだいたい多くの人に喧嘩吹っかけてるようなので、「あーまたっすか」って感じが。でも太宰は尊敬してたんだなあ。初対面でへどもどして、ずいぶんコテンパンにやられた様だけれど。

     夏目漱石の話や菊池寛の話は初めて知った。佐藤春夫と谷崎潤一郎の話は秋刀魚の件でなんとなく知ってはいたけれど、いろいろあったんだねえ……。
    直木三十五が作ったとされる諸家価値調査表、腕力1にされてる泉鏡花が不意打ちすぎて吹いてしまったww

  • 作家ってさ、生きる全てのものが叙情的な文学で、死ぬことも恋も作品なのかもしれない。今ならウハウハの印税生活だろうになぁ。

  • 自粛により閉館中の図書館で待機していた予約本。まるでゴシップ好きのような私。文豪たちのインタビュー記事や手紙や日記からの出典の他者に対する悪口集。菊池寛と志賀直哉が嫌われ過ぎ(笑)。菊池氏はともかく、志賀氏は仕方ないと思ったのは太宰亡き後の坂口安吾のエッセイに説得力を感じたから。同じく志賀氏と対立していた織田作之助の小説も読んでみたいし、それと同時に太宰、織田、安吾の感想を確かめるために読みかけたままのちくま文庫の志賀直哉集を読もうかなとも思った。夏目漱石は『吾輩は猫である』のくしゃみ先生そのままの印象で佐藤春夫vs谷崎潤一郎はどうでもよかった(私見)。作家のゴシップが雑誌に掲載された時代があったのね、と少し切なくなった。

  • さすが文豪、悪口も格調高い・・などということは全然なく、グダグダで目もあてられない。そこがいい。
    相手への怒りと憎悪と必死に節度を保とうとする葛藤がむき出しになっている文章だけが並ぶと、宮武外骨だけが面白く感じられないことが発見だった。逆恨みで怒りすぎて自分でもわけわからなくなってる様子に比べると、権力を選び意図的にこき下ろすという読者の目を意識した劇場型の怒りが興冷めしてみえるのかもしれない。
    無頼派の若手(織田作之助、太宰治、坂口安吾、平野謙)が4人で志賀直哉を批判している対談、太宰治の如是我聞が面白い。有名な佐藤春夫と谷崎潤一郎の書簡集も、通して読むと実に興味深い。

  • これもアメトーーク読書芸人で知った本。文豪の本をほとんど読んだことがなく、歴史的なことも知らないので、そういう諸々を知っていれば、もっと面白く読めたかなとは思う。菊池寛と永井荷風のとこは読み飛ばしちゃった。今、目次のとこ、菊池寛の池→地になってるのを発見。あんなに名前の漢字を間違われるのに文句を言ってたのに、ここ間違えるかね。わざとなのか?坂口安吾「不良少年とキリスト(より)」が一番ぐっときた。太宰治が自殺したのを受けて書いたもの。『いつでも、死ねる。そんな、つまらんことをやるな。いつでも出来ることなんか、やるもんじゃないよ。』ちょうど引きこもりと自殺念慮の本を読んだ後だったし。坂口安吾は読んだことあるし、一番親近感を持っているのもあるだろう。最後の谷崎潤一郎と佐藤春夫の、けんかして和解して、結局佐藤は谷崎の妻のお千代と再婚したんかい!ってのは驚いた。やっぱ人の色恋は分からんものだ。

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