これは水です

制作 : 阿部 重夫 
  • 田畑書店
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本棚登録 : 499
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784803803532

作品紹介・あらすじ

副題:思いやりのある生きかたについて大切な機会に少し考えてみたこと

 卒業式スピーチとしては、2005年にスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学で行なったもの(「ハングリーであれ、愚直であれ」)が有名だが、同じ年にケニオン大学で負けず劣らぬ名スピーチをしたデヴィッド・フォスター・ウォレスという作家がいた。
 本書はそのスピーチ「これは水です」の完訳版である。作家としてはポストモダン文学の旗手として、アメリカの若者を中心にカルト的ともいえる人気を博しつつ、46年という短い生涯を自らの手で閉じてしまったウォレスだが、「考える方法を学ぶ」ことが人生にとってどれほど重要かを、平明かつしなやかな言葉で語った本スピーチは、時代を超えて読む者の心に深く残る。

感想・レビュー・書評

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  • 「銃で自殺する大人の
    ほとんどが
    撃ち抜くのは……
    頭部なのですが
    すこしもこれは偶然ではない

    こうして自殺する人の大半は、
    じつは引き金をひく前から
    とうに死んでいるのです。」

    そうか?そうなのか?
    強烈な違和感を持った。

    「大文字の『真理』とは
    死ぬ以前の
    この世の生にかかわることです。

    三十歳になるまで
    いや、たぶん、五十歳になるまでには
    どうにかそれを身につけて
    銃でじぶんの頭を撃ち抜きたいと
    思わないようにすることなのです。

    これが、ほんとうの教育の
    ほんとうの価値というものです。」

    なるほど、そうか。
    違和感が共感に変わった。

    語り手の自殺を知るまでは。

    魚にとって水中が「何もない」世界ならば、私が今生きている世界は、魚にとって「空気」のある異世界と言えよう。

    異世界では、己の機能や意思を改めて相対化出来る。
    そんな大層なものではなく、鏡一枚向こうにだって、広がっている世界がある。

    そして、この異世界があるから、私たちは考えることが出来るんじゃないかと思う。
    たった一つの物から、たった一人の他者から。
    その中で見出した自分自身が、生きることの価値を認めるのならば、確かにそれは教育の本望じゃないか。

    生きることが見えていなくても、考えることと向き合えなくても、人はその種を持ち続けている。
    だから、生きながらにして死んでいるということの意味を、私は受け容れることが出来ないでいる。

  • 初期設定、というフレーズにはっとさせられる。
    言われたくない現実を突きつけられて泣きそうになるけれど、そこから脱却できるかは自分自身。

  • 自分のこころの内側を見つめ直すきっかけになります

  • アメリカの大学の卒業記念講演。

    雑貨屋さんで面陳されており手に取った。
    装丁もよく読みやすい。

    内容は多面的な価値観の大切さを解きつつ
    「これから君たちを待つのは退屈な日々です」
    といいきる。

    自殺するような大人になるなと伝えながら
    本人は3年後自殺したという。。

    そのこと自体もいろんな捉え方がある、ともいえそう。

  • “ほんとうに大切な自由とは、(中略) 無数の取るに足りない、ささやかな行いを色気とはほど遠いところで、毎日つづけることです”
    はなむけの席のスピーチなのに、首尾一貫してリベラルアーツと、冷めた現実主義の世界が展開。
    「 これは水です」ー 見えない世間の「水」を、 さりげない言葉で見える言葉に綴り出して、見せてくれる。
    自殺をほのめかすような言葉も綴られていて、それが当事者自身に降りかかってしまったのが残念でならない。
    鬱病の希死念慮は、奇才をもってしても、考え方でどうなるものではなく服薬をやめてはならない、周囲は目を離してはならないと言う別の示唆も、訳者あとがきと著者の生き様から分かります。

  • 「学ぶこと、リベラルアーツ」についての1つの定義だと思う。

  • 自分史上のベスト10に入る内容の本だと思いました。

    何回も読み返しました。
    声に出しても読みました。

    息子にも読んでもらいました。彼も心に残ったようです。
    いつも読めるよう、読みかえせるようにに置いておいてくれ!と言っていました。

    自分の傲慢なデフォルトをどう調整するか?それが
    学ぶこと。。。
    とてもためになる話だと思いました。

  • 頭の初期設定を変える勇気を持ち、努力をすること。
    本当の自由を手に入れることは、規律を守り、努力を怠らず、真に他人を思いやることができえそのために一身を投げうち飽かず積み重ね
    無数の取るに足りない、ささやかな行いを色気とはほど遠いところで、毎日続けること。

    これを50歳までに身につけて、銃で頭を撃ち抜きたいと思わないようにすることと述べた本人が自殺をした。

    わたしにはこの人の言おうとすることがまだちゃんと理解できない。
    半年ごとに読み返すと良いかもしれない。

  • 青山ブックセンターでみかけた美しい装丁に目を奪われ、思わず手に取った。
    シンプルなタイトルと装丁に縁取られたこの短いスピーチは、その短さと深さにより何度も読み返したくなる。

    「ものの考え方」とはなんだろう。
    自らに問いかけ啓蒙する旅。
    卒業式というと学業からの解放、というイメージをもつが
    実はさにあらず、むしろ長い長い学びの旅が始まるのだ。

  • たまたま手に取った雑誌の中でおすすめされていて、読んでみました。

    スピーチの中で、彼が考える「ほんとうに大切な自由」について話をしているけれど、彼がこのスピーチの数年後に自ら命を絶ったということを思うと、胸が痛くなった。
    スピーチは卒業生に向けた餞の言葉であるはずなのに、彼自身が自分を奮い立たせる為の、自戒の言葉にも聞こえた。だから、胸が痛くなった。

    私たちは自由に考えることが出来るからこそ、何を選びとるかは自分が決めることが出来る。
    自分も、相手も、同じように思いやって生きるということは、とても難しくて、でもそうすることが人の幸せにも繋がるんだと感じた。

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著者プロフィール

イリノイ州で育ち、少年時代はテニス選手。アムハースト大学で様相論理と数学を専攻、25歳で書いた処女長編「システムの箒」で作家デビューする。アリゾナ大学創作学科で修士課程を修了、ハーバード大学哲学科に移るが、鬱病で中退。詩人作家メアリー・カーとの恋愛を経て、95年に1076ページの長編「無限の道化」を完成させた。ほか短編集「奇妙な髪の少女」「ビブリビオン」「醜男たちとの短いインタビュー」、超限数論の「万物とそれ以上」、エッセー集「ロブスター考」「僕が二度としない面白そうなこと」。共著で音楽論「ラップという現象」もある。未完の長編「蒼白の王」を残して自殺した。

「2018年 『これは水です』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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