MINAMATA NOTE 1971-2012 私とユージン・スミスと水俣

著者 :
  • 千倉書房
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784805110041

作品紹介・あらすじ

公害病の原点であり、発生から60年近くが経過した水俣病は、これで本当に終わったのだろうか。40年にわたる取材を経たフォト&エッセイは、「何も終わっていない」水俣の過去と現在を写し出す。

感想・レビュー・書評

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  • 巻頭に池澤夏樹が書いている。
    2012年7月31日「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別処置法」の申請期限が打ち切られた。これ以降は、水俣病の救済申請ができなくなるのだ。そして、池澤夏樹は、「水俣病問題の解決」とはどう意味だろうと問う。そもそも、解決はあり得ないのではないかと言う。
    池澤夏樹は、「患者の訴えを無視し、原因をすりかえ、責任を回避し、謝罪を拒み、事態を矮小化し、補償の額を値切り、収束を宣言しようとしてきた」「水俣に解決はない」という。
    政府行政の責任回避と無責任さがMINAMATAで露出している。
    石川武志は、ユージンスミスのアシスタントとして、水俣で3年過ごした。その中で、フォトグラファとして有名なユージンスミスと一緒にいることに意味を見出す。沖縄戦で傷つき、固形物を食べることができない状況のユージンスミス。それでも、水俣に立ち向かい、そして石川武志にジャーナリストとは何か、撮ることの葛藤、そして現像することへのこだわり、さらに展示のこだわりなどを、そばにいて学ぶ。尊い経験だ。
    本書は、水俣でユージンスミスと一緒にいた1971年からの3年間と、40年すぎたMINAMATAの写真が
    並ぶことで、MINAMATAの時間の重さを感じるのである。水俣病であることの苦闘。
    ユージンは実子ちゃんを撮ろうとする。しかしうまく撮れないと泣く。
    「ジツコチャンは病なんだよ。年頃の娘なんだよ。好きな人に好きとも言えない乙女なんだよ」「私の写真にはその移ろいやすい乙女心の闇や奥底が写っていない」「私の写真にはあなたの乙女心や魂の叫びが写っていない。何枚も何枚も撮影したのにジツコチャンの深い心の奥の声を描くことができない」と言って、大粒の涙を流して泣く。ユージンの持つ写真というものへの
    思いがよく伝わる。
    本書を見て、読みながら、やはりMINAMATAは、終わってはいない。ユージンに合うことで、自分の人生が大きく変わった石川武志。多分、変わったことが、写真を撮り続ける意味があるのだと思う。
    排水でへドロが溜まったところは埋め立てられて、エコパーク水俣となり、バラが植えられている。

  • ふむ

  • 東2法経図・6F開架:519.2A/I76m//K

  • 資料ID: W0170635
    請求記号: 493.152||I 76
    配架場所: 本館1F電動書架C

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著者プロフィール

1950年生まれ。ユージン・スミスに師事したあと独立。『ヒジュラ──インド第三の性』(青弓社)ほかがある。

「1998年 『アジアの奇祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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