月岡芳年伝 幕末明治のはざまに

著者 :
  • 中央公論美術出版
4.00
  • (1)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 16
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784805508541

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 丸尾末広×花輪和一『新・英名二十八衆句』で
    初めて名を知り、
    後にテレビ番組で荒俣宏氏が激賞しているのを観て
    興味を持つようになった浮世絵師・
    月岡芳年(1839-1892)。
    その芳年の、
    美術史家による評伝が出たので読んでみた。

    様々な題材を扱っていたにもかかわらず
    「血みどろ絵」「無惨絵」が
    枕詞のように定着したのは、
    美術史家以外の言論人
    (三島由紀夫、澁澤龍彦、種村季弘……)が
    芳年画の血腥い部分を
    殊更にクローズアップして紹介したのが原因だったと
    初めて知って目から鱗。
    芳年は潔癖症ではあったが
    温情家で弟子の面倒見もよく、
    決して変人ではなかったそうだ。
    そうしたバランス感覚のいい絵師が、
    己に厳しく芸術と向き合い、
    先行作家の模倣なども踏まえて
    多様な作品を残したものの、
    明治期の浮世絵師に対する美術界での評価が
    高くなかったために
    これまであまり研究が進んでこなかった由。

    死去を受けて、
    当時の読売新聞(明治25年6月13日付)に
    掲載されたエピソード、
    芳年が門人に向かって告げたとされる言葉が美しい。

    > 人若し画に衣食せんと期すれバ
    > 初めより学ばざるに如かず
    > 画を鬻ぐハ只練磨の餘徳に過ぎず

    ところで、この本は装幀も凝っており、
    カバーにおいて、血飛沫の表現に当たるところが
    穴開きになっていて、
    本体表紙の赤が浮かび上がっているのだった。

  • 練馬区立美術館で2018年夏にやっていた展覧会を見に行った人は、できるだけ早く(会場でみた浮世絵の記憶の新しい内に)この本を読んだ方が、より本書を楽しめると思います。
    タイトルが「~伝」となっているのでよくある浮世絵師の人となりや逸話をまとめた伝記の本かと思いきや、そうではない。この本では芳年の『画業』について時代およびその時期ごとのテーマを整理しながら、芳年の大量にある浮世絵のシリーズを丁寧に解説した論文です。
    展覧会の各キャプションに書かれている解説をさらに詳しくしたような内容で、芳年の人生や人となりが余すことなく理解できるというより、シリーズ毎の画題について、時代的な背景や当時の評価、モチーフの意味や同一構図・画題の先行例など、一つ一つ丁寧に解説したモノという印象。(その結果、透けて見えてくる芳年の人となりや人生といったものは確かにありますが)
    本書を書くに当たって、大量に整理された参考資料とそれに対する分析。あとがきでも触れていますが長い時間をかけて整理された労作だと思いました。
    そして本文中に潤沢に引用されている図版、口絵のページ数の多さとその印刷の美しさ(下手な図録より美しい口絵の印刷クオリティです)。表紙のレーザーカットで表現された血糊と装丁も凝った美しい仕上がりになっていて(これは実物を手に取ってみないと、画像ではわからない仕様なんですが、あの真っ赤な血糊は表紙カバーを切り抜いた結果、本体の表紙が真っ赤になっててその色が抜けて見える仕様なんです)、大変良い本でした。

全2件中 1 - 2件を表示

菅原真弓の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

ツイートする