エルフランドの王女

  • 沖積舎
3.88
  • (4)
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 42
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806030263

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 再読。
    たしかこの本で沖積舎を知った。いつかサトクリフの『ベーオウルフ』を入手したい。『トリスタンとイズー』と並べたいんだ……。

    目次を見直して、各章が細かく分けられているのに気づく。しかも全部タイトルつき。多作でうち多くが短編だからか、長編の構成も短編が基礎になるのかもしれない。既読のところだと『夢源物語 ロリ―とブランの旅』は全35章、『魔法使いの弟子』は全30章だった。他未読の長編も気になるところ。
    エルフランドの薄明、その永遠のまどろみを歌う筆致がとても好き。あらゆる夢が生まれ、還っていく場所。思い出の在り処(失われるものはすべて美しい)。エルフランドが地上を離れていた間、そこに取り残された物をアルヴェリックが見出す場面の切なさが胸を刺してやまない。
    エルフランドが去ったことを目の当たりにしてリラゼルを偲び、さらに思い出されるのが序文。劇中ではほかならぬエルフランドの王女そのひとが、人間世界の美しさを見出している。そして彼女を求めてエルフランドへ足を踏み入れたのはひとりアルヴェリックのみ。ふたりの出会いと結婚、あらすじにすると呆気ないはじめの数章にしてすでに、夢を見るひたむきさで世界を慈しむ、著者の限りない愛が満ちているのだと思う。続く数章にはきっと、それを貶めるつまらない社会への非難も。
    魔女ジルーンデレルはミステリアスに美味しい立ち位置。物語りの魔法を行う人は皆、彼女あるいはその弟子なのかもしれない。

  • どこを切り取っても立派な短編として成り立ちそうな作品。全体を覆って流れている「黄昏」の雰囲気がいい。

  • 文章が最後までずっと説明文的で会話文が無いに等しく、メリハリが無かったので飽きが来てしまい読み通すのに苦労しました。自然描写など幻想的で美しいものの、結局何が言いたかったのか掴み損ねてしまいました。身勝手な人間が物質面と精神面の調和を望み、より良い世界を願ったものの共倒れってこと?

  • 初ダンセイニ
    夢のように美しい……。
    ロード・ダンセイニに恋してしまった♡

    (訳者あとがきより)
    ファンタジーの真の巨人であり、稲垣足穂氏はじめ多くの異端の美食家たちが絶賛するロード・ダンセイニの傑作「エルフランドの王女」(The King of Elfland’s Daughter)は、1924年に発表された。
    ダンセイニ卿は、アイルランド屈指の名門貴族であった。
    「明暗交錯の愛蘭土、ダブリン西北約40キロ、タラの山近くに残っているダンセイニ城の西向きの居室からは、夕焼ぞらを背景にして伝説の山々が見え、幼ない第18代城主に『世界の果』への夢想を培った」(稲垣足穂)

  • 丁寧に綴られた言葉によって、我々の知る野原や歌の中にだけ語られる蒼い場景がありありと脳内に湧き出る美しい作品だった。
    確かな文章力に裏打ちされているからこそ、p.47の後半の次の表現に説得力があり印象に残った。

    「それまで気付かなかったきんぽうげの美しさや、今まで考えてみもしなかった荷車の面白さなどをわかるようになった。一瞬ごとに彼女は、今まで彼がそれと気づかなかった地上の宝を発見して、喜びの声をあげた。」

    私は普段見落としてしまっている当たり前の美しさに気付かせてくれる作品が大好きです。
    ただ私は我々の知る野原の美しさは、慌ただしく過ぎ去る時や季節の中の一瞬のきらめきから成ると考えているので、最後は少し納得いかないところがあります。
    でも黄昏の光とともに大切な想い出が戻ってくる場面は別の美しさがある。何故人間は大切な想いですらすぐに失い忘れてしまうのでしょう… やはり時が原因なのだろうか。

    しかしそう考えるとエルフランドはいずれ神々に牙をむく〈時〉もいなければ、カイの洞窟に想い出が積もることもない。さらに伝説以外の何ものでもなくなってしまった。これってマーナ=ユード=スーシャーイが目覚めた場合どうなるのでしょう。 もっとも他作品の内容だから考えても仕方がないか

  • 寓話…だが、入り込めなかった。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

本名はエドワード・ジョン・モートン・ドラックス・プランケット(1878‐1957)で、第十八代ダンセイニ城主であることを表すダンセイニ卿の名で幻想小説、戯曲、詩、評論など多くの著作を発表した。軍人、旅行家、狩猟家、チェスの名手という多才なアイルランド貴族だった。『ペガーナの神々』をはじめとする数々の著作により、その後のファンタジイ作家たちに多大な影響を与えた。

「2015年 『ウィスキー&ジョーキンズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ロード・ダンセイニの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
スタンダール
皆川 博子
マルセル・シュオ...
山尾 悠子
アンナ カヴァン
エラ・フランシス...
ロード・ダンセイ...
サン=テグジュペ...
ヴィクトール・E...
ロード・ダンセイ...
ジェフリー フォ...
山尾悠子
山尾 悠子
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×