お皿の上の生物学

著者 :
  • 築地書館
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806715009

作品紹介・あらすじ

味・色・香り・温度・食器……。
解剖学、生化学から歴史まで、身近な料理・食材で語る科学エンターテインメント本。

大阪大学で行われた、五月病に感染しつつある学生のための講座(学問の面白さを伝え、受動的な「被教育」から能動的な「自己教育」への転換を目的としたリモチベーションのための科目)の実録と、未遂の講義(その講座は1学期開講だったが、もし2学期に開講するとしたらこんなネタでやろうかなと準備したメモ)と、学生実習「レポートの書き方」が1冊の本に。

お皿の上の料理について生物学する。
生物学を料理してお皿に載せる。
身近な料理や食材を通じて、この両方を試みた。

実験(料理)をしながら、いま鍋の中、フライパンの上で起きている出来事を解説する。料理ほど身近なイベントはないうえ、身近な科学体験はないだろう。
教科書の中の世界でしかなかった「科学」が、身の回りの至るところにころがっていることが実感できる。

五原味説/池田菊苗/旨味/味覚の個人差/ミラクル・フルーツ
青い食材/エディブル・フラワー/クロロフィル/カロテン/リコピン/イカ墨/古楽譜
嗅覚/消臭剤/加齢臭/フェロモン
料理の適温/蒸発熱/天かす火事/自励的反応/脂身と体温
ニッチ/ハンバーガーと牛丼とチェーン/牛丼の変奏/かつ丼が先かとんかつが先か
木器と漆/眞島利行/日本初女子帝大生
クリスマスにチキン/クリスマス・ケーキ/年越しそば/おせち料理/エビはなぜ赤いか
エンドウとメンデル/血液型性格判断/鍋料理/マチカネワニ/科学論文の話

感想・レビュー・書評

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  • まじめに、時にジョークも交え、語られる料理にまつわるあれこれが、理学部教授の視点で面白かった。
    新知識の取得、知識の深掘り、どちらも飽きずに楽しめる。

  • 加古大也先生 おすすめ
    10【専門】460-O

    ★ブックリストのコメント
    「実況・料理生物学」の実質続編にあたるもの。同様に、身近なものと科学とを結びつけた入門的な本です。

  • なんか変な語り口でなんだこれと思ったら「出張講義」? たしかにあまり勉強する気のない(?)学生は喜びそうだけれど、こういう本をわざわざ読むぼくにとってはちょっと邪魔だった。変なトリビアが満載で、そういう意味では面白かったけれど、まとまりはない。

  • 「料理は科学」を改めて認識する一冊。
    食事を美味しいと感じる味覚の仕組み。クリスマスとチキン。バレンタインデーとホワイトデーの始まり。職から派生した雑学が盛りだくさんな本。
    受験後の燃え尽き症候群を解消し、学ぶことは楽しいことを教える講座とのこと。こんな授業があったら、絶対に楽しい。

  • 文体は語りかけるような口調なので簡単だが、内容は少し化学的な用語があるので理解しにくいところがある。しかし、すべてを理解できずとも、語り口調で食事と化学をむすびつけて身近なものにするという本書は、十分読み物として面白い。また、本書にはうんちくが非常に多く紹介されているので、化学は苦手だという人でもうんちくの箇所は楽しめるのではないだろうか。

    KFCのチキンの骨から、ニワトリの骨格標本を作れないだろうかと以前より考えていたのだが、本書ではフライドチキン解剖学として写真つきでそれを再現しており、非常に嬉しくなった。

  • 【請求記号】5900:138

  • 請求記号 460/O 26

  • 2016年2月新着

  •  めっちゃ面白くて楽しい.生物学を縦横無尽に駆けめぐり,関連領域にも話が飛ぶし,生物学とは関連しないようなトピックにもつながる.これぞ講義というライブ感でいっぱいだ.

     著者は,大阪大学大学院生命機能研究科脳神経工学講座教授.

     著者のうけもった講義は「基礎セミナー」.阪大1回生前期の,著者曰く五月病予備軍のための,「勉強へ再動機づけ」を行うための講義だそうだ.私なりにパラフレーズすれば,大学に合格して「いやいややっていた生物とはおさらばできると思っていたのに,大学でも自然科学の講義が必修でユーウツ」と思っている文系大好き青年とか,「これで生物学をバリバリ教えてもらえると思っていたのに,高校生物の復習かよ」とか思っている思い上がった生物大好き大学生とかに「やっぱり大学の授業はすごいゼ,ベンキョーしよ」とか思わせるための授業らしいです.

     四回分の実際に行った講義の再現と,もしこの講義を後期にも行うことになったらという仮定の下での講義予定が三回分,および学術論文の構成と書き方講座の一回分.

     味の話は光の三原色との比較からumamiや閾値の話題へ.色については,いろいろな色を持つ食材の話から青いバラの開発物語まで.その他その他.知らなかったことがいっぱいです.前記の文系青年には身近な話題で興味をあおり,生物学生には最新生物学へのイントロと参考文献により自主学習をさりげなく薦める.楽しくてためになる講義だ.いまからでも受講したいと切に思う.この年の阪大の新入生はなんと幸せなことだと思うが,本人たちにそれが分かるのは,卒業してからかもしれない.

     私の個人的な収穫は,日本の暦には太陽暦と太陰暦が混ざっていたこと.二十四節気は太陽暦なので,年によって季節がずれないし,旧暦でも現行暦でも,春分は同じ日であると.

     この本を読むことで,ある程度の生物学の復習ができるし,昔の高校生物に,どれだけ新しい事項が加わったかも分かる.お察しのとおり,新しく加わった事項には現象の物質的基礎が多い.メンデルの遺伝法則にでてくる,緑豆と黄色豆,丸豆としわ豆に関連する化学物質が登場している.生物化学がそれだけ進んだことの証明だろう.

     著者は,この講義の事を「生物学というより,雑学・エピソード・トリビアです」と謙遜されるが,むしろ生物学を身近な料理や食材にまで,咀嚼し落とし込まれた日々の精進の結晶であると思う.

    2015.11

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著者プロフィール

大阪大学生命機能研究科脳神経工学講座教授

「2011年 『実況・料理生物学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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