イグノランス: 無知こそ科学の原動力

  • 東京化学同人
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784807908486

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  • 大学院生の嘆き「自分たちは良いように利用されている」「自分には興味のない、重要と思えない課題を強制されている」といった話は、海の向こうでもよくある話らしい。

    『何が分かっていないのか』
    『解るべき事柄はその問いで本当に掴めるのか』

    そうした問いの立て方が重要であり、さらに『暗い部屋に黒猫は居なかった』という結果が返ってきたとしても、その『データから解る無知(まだ知らない領域)のカタチ』を資産とせよ。

    こうした態度は、理学・数学のみならず人文系にも重要な科学的態度といえる。
    本書を読んで改めて、整理された思いだ。内容がUSAの科学者事例にだけだとしても、何の不都合もない。
    躊躇せず、星5つをつける。

    後半の対談にあるように、日本の学術研究は『できあがった体系に則ってその中でインパクトファクターのある学術雑誌に論文を投稿するのがいいことになっている』(P212、8-9行。佐倉氏の発言)。
    ただ、対談相手が茂木健一郎氏の如く「軽快に」発言する学者というのは考え物である。

    本書『イグノランス』末節でファイアスタインが謙虚に認めた事実。
    すなわち、学者といえど
    「他分野については一般人と同レベルに知らない」
    のだ。その謙虚さは、「軽快に」というか「軽率に」発言することを慎む方向に働くはずだが、ハテ、茂木氏の発言は……、と首をかしげざるを得ないためである。

    科学者が
    「何が分かっていない事柄であるか」
    より、
    「何が分かっているのか」
    を語りたがる。
    聴衆や一般人も、「何が分かったのか」を知りたがる。
    報道/広報メディアの姿勢もこの循環を強化する方向に動いている。むしろ「よく分かってないけど、科学者の話からウケそうな部分を切り取る」方向に悪化している。例えば放射線の話ひとつを挙げても、文科省が無料公開した『小学生のための放射線副読本』レベルすら理解していない。

    どこかで悪循環から離脱するには、誰かが『イグノランス』を読み、基本は同じ、だが今言わないと図書館の肥やしになる『知識を共有』してゆくしかない。
    学部一年生の基礎読本どころか、小中学生のうちから読んでおく(末尾の対談はまぁお好みで)ことをお勧めしたい名著である。

  • 2015年7月新着

  • なぜもっと早く読み終わらなかったのか‼︎

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