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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784808310882
感想・レビュー・書評
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自分は東海地方に生まれ育ったので、少中学生時代には毎学期に避難訓練をしてきた。ちょうど本書が語るように、「東海地震説」が幅をきかせた始まりの頃の話だ。だが大地震はこれまで東海には訪れず、阪神、東北、熊本、能登と、危機を煽られなかった地域ばかりに起こった。政府や学者、マスコミたちの欺瞞には憤った。世界の地震の五分の一をひきうける日本で、地震の危険がない地域は、ない。下手に危険率ばかり説いて、油断する地方を生み出した罪は重いと思う。地震予知の確率も、降水確率も、同じ数字で表せても、実際に起こった時の被害は大違いだ。最近どこかで見たが、人間の脳は数字や確率を直感的に正確に捉えられるほどまだ発達していない。確率予測は捨てて、防災、減災に向けて、各地方で工夫をしていくのが、今取りうる一番マシな道だろうな。
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知之介さんいま高嶋哲夫の「チェーン・ディザスターズ」を読みながら感心しているのだけど、危機に備えるべき政治の構えが一番の問題だと思う。脅して自己責任だ...いま高嶋哲夫の「チェーン・ディザスターズ」を読みながら感心しているのだけど、危機に備えるべき政治の構えが一番の問題だと思う。脅して自己責任だけ煽る我が日本の中枢にある人は本書で学ぶといい。2025/03/18
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「南海トラフ地震の真実」 発生確率の「怪しさ」に向き合う 朝日新聞書評|好書好日(2023.10.07)
https://book.asah...「南海トラフ地震の真実」 発生確率の「怪しさ」に向き合う 朝日新聞書評|好書好日(2023.10.07)
https://book.asahi.com/article/15022981
予測モデルに重大欠陥 [評]奥野修司(ノンフィクション作家)
<書評>南海トラフ地震の真実:北海道新聞デジタル
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/945434/2023/11/28 -
「30年以内に70~80%で南海トラフ地震が発生」はウソだった…地震学者たちが「科学的事実」をねじ曲げた理由 行政の都合で「発生確率を下げる...「30年以内に70~80%で南海トラフ地震が発生」はウソだった…地震学者たちが「科学的事実」をねじ曲げた理由 行政の都合で「発生確率を下げる」は無視された | PRESIDENT Online(2024/03/11)
https://president.jp/articles/-/79308
南海トラフ 80%の内幕:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/f/series/trough_uchimaku
【第71回菊池寛賞】南海トラフ地震の真実:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/2655372024/03/13
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タイトルから南海トラフ地震の具体的な経過や被害等を主題にしていると思い本書を思い読み始めたが、南海トラフ地震の発生確率を利用した政治的な駆け引きの裏側を告発するような内容で、地震の経過や被害についてはほぼ書かれていなかった。
本書は新聞記者による政策や行政を批判した内容で、記者らしく客観的で分かりやすい文書であったが、内容そのものに興味を持てなかった。 -
2023年12月末に読んだのだが、読み終わってすぐの2024年元旦に、本書の指摘通り、地震発生確率が相対的に低くされて若干安心していた地域で大地震が発生してしまったのでそのタイミングに驚いた。
本書は、毎日新聞記者による「南海トラフ地が30年以内に80%の確率で発生」という予測数字の真実に迫るドキュメンタリー。この数字が科学的にはかなりいい加減であり、かつ政治的に決定されているのか、と言うのが明らかになります。いったん発表した高い確率を、その後の研究でそんなに大きくないと分かっても、下げて発表はできない、というのも大人として分からないでもない。中堅の研究者なら驚くよりも「ありそうなこと」と思えてしまう。
本書の検証は、発生確率の数字の元になっている数字を、古文書なども調査して重箱の隅をつつくように検証している。正直、個人的には地震発生確率なんて信じられるような数字だと思ってないし、その検証は細かいことだと感じた。地震には事前に備えるしかない。しかし、その備えの基本となる国の政策に大きく影響を及ぼすものだ。
本書の指摘で重要なことは、「南海トラフ地震」ばかり強調することで防災予算は太平洋側に集中し、他の地域は相対的に安全なような錯覚を与えてしまうこと、それが被害を大きくしてしまう怖れがある、というものだと思う。東海地方や太平洋側の大地震の恐怖が叫ばれて約50年間、実際に日本で起きた大地震は、神戸やら北海道、新潟、東北、熊本、そして能登などそれ以外の地域ばかり。回の能登大地震でも、残念ながら本書の指摘がまさに的中してしまった。 -
南海トラフ地震発生確率が他に比べて高いことに疑問を持ち、その原因を追求した結果、ダブルスタンダードで算出された数値であり、その理由も突き止めた著者渾身の調査がまとめられています。衝撃の事実がわかりますが、地震は、いつおこるかわからないことを念頭に日々の準備を怠らないことが大事ですねー、
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中日新聞に連載されていた頃から興味津々だったこの話、今回本になったことでその内容がさらに明らかになった。南海トラフ地震の発生確率が非科学的なものだったなんて本当に驚き。科学的根拠が示せないならパーセンテージで煽るのも止めてほしい。
日本は何処で地震が起きてもおかしくない国なのだから、地震対策は国内でまんべんなく行うべきだと強く思った。予算の配分とか、いろいろ問題はあるけれど…
でもこの記者さんすごい。よくここまで突き詰めたと思う。これが本物のジャーナリストとなんだな、尊敬しかない。 -
2024年1冊目
日本のどこかで地震が起きるたびに「次は南海トラフ」、そう言われ続けてきたが、そもそもの前提として30年確率が言わば水増し状態にあったことを明かした本書。中日・東京新聞の記者が、本職の片手間で取材し尽くした。古文書も読むし、地震学にも触れるし、科学ジャーナリストというのは大変な仕事だなあと、、災害報道を専門にするには途方もない勉強が必要だと感じた。 -
著者の取材スタンスや書きぶりは公正で、なおかつ読んでいてわかりやすく面白い。科学と政治と報道の関係を考える上での基本図書にもなり得ると思う。
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これは大事な事が書いてある本だと思いました。文章も読みやすかったです。
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南海トラフでは昔から東海地震、東南海地震、南海地震の三つの大きな地震が繰り返し発生していて、2000年代にこれら三つが一緒となる連動型地震が起こるのではと危惧されていた。そこに2011年にM9.0という想定外の大地震が東北地方太平洋沖に発生、東北地方に甚大な被害をもたらした。この大地震をけて、南海トラフでもこのような想定外の地震が起こるのではと不安が高まっていた。
そんな時の2013年、政府の特別機関『地震調査研究推進本部』か南海トラフ地震の長期評価を発表、『30年で60〜70%』の大変高い確率値であった。
しかしこの数値は、今まで使われてきた単純平均モデルとは違う、時間予測モデルという方式で出されたもので、2013年当時はまだ信ぴょう性は担保されてはいたものの、2018年の長期評価の時は、これは信頼性に欠けるとして懐疑的な意見が多く出された。時間予測モデルではなく単純平均モデルで計算した確率を出すべきではとの意見が多かったが、その場合の確立は20%と大きく数値は下がる。
信憑性は高くはないが高い確率のを発表するか、今まで通りの計算モデルの低い確率のを発表するか…
最終的に発表された数値は高いままの「30年に70~80%」であった。政治的判断が大きく影響された結果であった。今までさんざんいつ起きてもおかしくないと国民を煽り、多額な予算が防災にあてられ上で、実はそんなに確率は高くなかったですとはなかなか言えないのである。それも分からないではないが、南海トラフだけが注目を浴びると、それ以外の地域では地震は起きないような気になる。次に起こるのは南海トラフ地震だから、私のところは大丈夫だとついつい思いがちになるあ。確かに道民である私は北海道に大規模な地震が起きるとは思っていなかったが、20Ⅰ8年に北海道胆振東部地震は発生し、全道大停電となったブラックアウトという未曾有の事態が起こっている。
ようはどんなに偉い学者でも、どんなにお金をかけて研究しても、地震がいつ起こるかは分からないのだ。せいぜい100年しか生きられない人間に、数千年、数万年単位でダイナミックに動く地球のことは謎なのだ。いつ起きてもいいように備えるしかないのだとつくづく思う。