もっと知りたい田中一村 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

著者 :
  • 東京美術
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784808708764

感想・レビュー・書評

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  • 表紙を見てこれは買わなきゃと思った。田中一村、名前すら知らなかった。惚れ惚れする絵ばかり。

    1908年栃木生まれで、東京美術学校で東山魁夷、橋本明治、加藤栄三、山田申吾らと同級(東山魁夷しか知らないけど)。
    が、3ヶ月足らずで退学して以後は、独学の人生をあゆむ。中国の「南画」に学び、それをいったん捨てたあとは千葉に転居。琳派へ傾倒する。
    その後なんと、一村は奄美大島へ。そこにある小さな家を終の住処とする。「日本のゴーギャン」なんてひどい呼ばれ方をしている。

    彼の画風の変遷は3つに分けられる。まず、とても主観的な南画の時期があり、その後、観察と写生に徹した客観・科学的な時期があり、奄美で島の自然を描いた後期にいたると、客観的な絵にふたたび主観がじわりと滲み出す。初期中期が統合されたかのような絵。

    個人的に、中期後期がほんとうにすばらしいと思う。
    中期は、竹や南天、紅葉を描いたものも良いが、「白い花」のめくるめく迫力、そして「秋晴」の息をするのも忘れるほどの荘厳さ!

    後期はゴーギャンよりむしろアンリ・ルソーを彷彿とさせる。パパイヤ、ソテツ、アカショウビン、ビロウ、ハマユウ、ダチュラ、ガジュマル、ブーゲンビリアなど、むせかえるような生命が描かれる。著者はこの時期を「南の琳派」と呼ぶ。なるほど。
    そもそも南の植物は葉も広く厚くて存在感があるのだけれど、田中一村は晩年、そこに何かを託している気がしてならない。

    奄美の田中一村記念美術館に行かなきゃまとまった作品は見られないのか……うん、いつか行こう。

  • 田中一村の作品を見るために奄美まで行こうと思っていたら、今年は佐川美術館と岡田美術館で特別展が催されます。この機会に一村の画風の変遷をおさらいしました。南画を基礎に、後期の琳派風を経て、奄美でオリジナルなモチーフに出会います。「アダンの海辺」「ビロウとアカショウビン」など奄美での作品はもちろん、若い頃の花鳥画からして、色使い、デザインがみずみずしくて現代的です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      myjstyleさん
      行けないけど、本年(2021年)は、
      美術館「えき」KYOTOで
      https://kyoto.wjr-isetan.c...
      myjstyleさん
      行けないけど、本年(2021年)は、
      美術館「えき」KYOTOで
      https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_2105.html
      2021/05/03
    • myjstyleさん
      猫丸さん

      このご時世で、さすがに京都までは行けませんね。
      ただ、私は去る1月に千葉美術館の「一村展」に行きました。
      「アダンの海辺...
      猫丸さん

      このご時世で、さすがに京都までは行けませんね。
      ただ、私は去る1月に千葉美術館の「一村展」に行きました。
      「アダンの海辺」が見れてよかったです♪
      2021/05/03
  • 美術は詳しくないけれど、その緻密な絵は素人目でも言葉にできないほど凄い。ただ、本の中で紹介されている様々なエピソードなどから察するに、人としてよほど気が強かったのな、他者とのコミュニケーションが苦手な人物だったのかな?という印象があり、それが奄美時代の作風(奄美なのに暗い絵)に繋がっているのかなぁ、という印象。最晩年の作品はそういった暗さが無くて、また色々とその生き方に思いが巡る。

    本としては、そういった様々なエピソードはもちろんのこと、その生涯がとてもわかりやすく、かつ詳細に追われており、作品も年代を追ってわかりやすい解説付き紹介されていて、田中一村を知る上で素晴らしくわかりやすい本。

  • S図書館
    1908~1977年、父は彫刻家
    東京美術学校入学、すぐ退学し独学の道へ
    中国のモチーフ、千葉から1958年奄美へ移住

    1947年39才「白い花」個人蔵
    デビュー作
    きれいなみどりと白のコントラスト
    アンリールソーを思い出す
    1956年「ニンドウにオナガ」個人蔵
    「ビロウとブーゲンビリア」田中一村記念美術館

    この本で初めて知った
    色彩があでやか、大胆な構図が持ち味
    日本人離れしているけど西洋とはまた違う
    稀有な存在だ
    鳥好きということもあり一瞬で心を捕まれた芸術家だ

  • 表紙の絵のような静謐な南国画をイメージしていたので、初期の力強い筆致に驚く。
    南画(水墨画)と琳派の技法を合わせた全盛期の作風は、抑えた色味が良い。
    特に、奄美での作品は南国の風景なのに静けさと寂寥感が漂う。
    最晩年は身体の衰えからか、筆致がプリミティブになり、逆に力強さが増している。
    すごく好きになった。

  • p.2021/6/6

  • 去年、地元の千葉市美術館で田中一村展があり、なんとなく行ってみて、いいなと思ってショップで購入した本。

    この時の展示では、「千葉にいた頃は下積み時代で奄美に行ってから大成したんだな」って思っていたのだけれど、この本を見て、若い時の花鳥画もかなり鮮やかでインパクトが強く、奄美に行く前から一村らしさはしっかり発揮されていたことがよくわかった。

    生きている間にあまり評価がされなかったのが残念。
    奄美の田中一村美術館にぜひ行きたい。

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著者プロフィール

安野光雅美術館館長

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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