- 本 ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784808711016
感想・レビュー・書評
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超絶素晴らしい本。明治になって始められた新版画の味わい深さが堪能できる。作家もかなりたくさん取り上げているのも、それぞれの個性が味わえていい。
明治になって廃れてしまった木版画を渡邉庄三郎が復興させたのだが、洋画の遠近法や色の微妙な変化の技法などを取り入れ、決まった名所ではない何気ない風景や風物を描いているのが新しい。素材を無限に広げたのである。この本では、質量とも川瀬巴水の版画が圧倒的に心を惹きつける。木版画の良さを十二分に生かした味わいのあるノスタルジックな木版画なのだ。まさしく古き良き時代の日本である。表紙は川瀬巴水の愛知の半田を描いたもの。ごんぎつねの故郷。
石渡江逸 伊藤深水 伊藤孝之 笠松紫浪 川瀬巴水 高橋松亭 土屋光逸 楢崎栄昭 吉田博 エリザベス・キース チャールズ・バーレット フリッツ・カペラリ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最近毎日、友人に川瀬巴水の版画の画像を送っている(と書くと迷惑行為みたいだが、ちゃんと友人の同意を得ている笑)
かつてあった、しかしかつてあったためしさえないのかもしれない日本が描かれている版画。
本書を手に取ったのも川瀬巴水の版画が見たかったからなのだが、今回ページをめくりながら目にとまったのは、吉田博の版画ばかり。
静的な風景を描かせたら川瀬巴水の右に出るものはいないが、水の表現の豊かさ、そして華やかさは、吉田博が群を抜いている。
さざなみがほんとうに丁寧に描き込まれている。静けさと水のダイナミズムの対照がとてもいいのだ。
彼の、海外の風景を描いた版画もまた楽しい。
構図も大胆で、ときに抽象的ですらある表現がかえって風景のリアリティを増幅させる。 -
とにかく、見応えあり。
日本の美しい景色、懐かしい景色が
見事に描き出されている。
これまで知らなかった新版画の世界の
魅力に溢れた一冊。