もっと知りたいボナール 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
- 東京美術 (2018年8月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (79ページ)
- / ISBN・EAN: 9784808711153
感想・レビュー・書評
-
じつは十代の頃にボナールの絵を観て以来その絵が大嫌いだった。が、嫌いだからこそ気になる存在。
三島由紀夫の小説やショスタコーヴィチの音楽に対してと同じく、嫌悪感をもよおすのはきっと、「好き」と同じくらい自分にとって重要な意味があるからだ(精神分析的にいえば何かを抑圧してるのだろう)。
定期的に嫌い度を確かめたくなる。そのたびに「うわーやっぱすごく嫌い」と笑いながら読んだり聴いたり見たりしている。食わず嫌いではなく、食うたびにまずさを噛みしめる。
友人などにボナールが嫌いと言うと、なぜフランシス・ベイコンは好きでボナールは嫌いなのかと不思議がられる。自分でもわからない。
というわけで、なぜ嫌いなのか考えてみたくて本書を手に取った。相変わらず好きにはなれないけど、良い作品もあった。本書では、「乳母たちの散歩、辻馬車の列」、「田舎の食堂」の2作。
そうそう、自然を描く色彩はわりと良い。ボナールの描く”人間”は良くない、なんか目が死んでるし。ヌードもたくさん描いているけど、何が良いのか。
いつかボナールが大好きな人と出会ってその良さを力説してほしいと思いながらいまだ叶わず。教えてほしい。そしたらこちらの目も見開かれるかもしれない、と期待しつつ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自分用にメモ。
・生涯をざっくり綴ると…
初期:スーラやジャポニスムの影響、ナビ派時代。平面的な画面、抑制された色彩。
中期:ナビ派よりも印象派に近づく。色彩が開放され、戸外の光を取り入れる。自然、都会、神話的風景画など主題はさまざま。画家にとって身近で親近感のある題材(家族やペット)を選ぶようになる(親密派)。
後期:老いたマルトを若々しく描く。室内の絵、特に浴槽が多い。チカチカする煌びやかな光と、幻想的な寒色。マルト死後に完成した作品には、奥行きが復活した風景画が多い。
・感想雑多
中期以降の溢れんばかりの色彩感は、心躍る。私自身は中期が最も好みにあった。フォービスムの色彩至上主義の齎す快感に近いものを感じるし、やや歪んだ空間とか形態が不思議な安心感を与えてくれる。
また、初期から後期まで一貫している特徴があるように思えた。第一に、ぼやぼやした不明瞭な形態。第二に、現実的形態を超越した格子状の模様への執着。第三に、暖色を用いようが寒色を用いようが、絵画空間を流れている冷たい大気。
この情感は、ナビ派とか印象派とかの用語定義では、なかなか捉えきれなさそうなものだと思う。こういった特性、次行くボナール展でホンモノをじっくりと見て、考えを深めたいなと思う。 -
ピエール・ボナールの入門書として分かりやす。新国立美術館で開催中の展覧会の予習に最低これ一冊は読んで起きたい。
-
『もっと知りたい』シリーズは満足度が高く、少しでも興味があれば手に取るようにしています。
今回の画家はピエール・ボナール。ナビ派の大家…らしいです。ポスト印象派のゴーギャンから指導を受けたセジュリエと共に立ち上げ。
中に数点、浮世絵師・歌川国芳の影響のあるものがあり、驚きました。ジャポニズムって結構息が長いんですね。