J2&J3 フットボール漫遊記

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  • 東邦出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784809414961

感想・レビュー・書評

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  • Jリーグは93年に10チームでスタートした。以降、大きな変化を経て現在の形になっているが、現在の形自体が安定したものではない。
    99年に横浜フリューゲルスと横浜マリノスが合併。合併と言えばきこえが良いが、実際にはフリューゲルスのメインスポンサーの佐藤工業のJリーグからの撤退が理由である。バブル破綻の後の経済低迷期であったこの頃、スポンサーの撤退や、クラブの経営破綻のニュースが多かった。読売新聞の撤退によるヴェルディ、フジタ工業の撤退によるベルマーレ、清水エスパルスの経営危機等。
    また、同じ99年にはJ1とJ2の2部制がスタートした。J1が16チーム、J2が10チームの計26チームである。2014年には、J3を創設。2021年シーズンは、J1が20チーム、J2が22チーム、J3が15チームの計57チームのJクラブが存在している。
    Jリーグは当初からチーム名に企業名をつけることを禁止していた。プロ野球が、読売、中日、ヤクルト、ソフトバンク、日本ハム等の企業名をチーム名にしていたことと対照的であったが、Jリーグ設立当初は、それでも、Jリーグを企業PRの場として参入してきた企業が多かった。それが、上記のようなバブル崩壊後の景気低迷により、いくつかの企業がチームを持ちきれなくなり、撤退をしていった。
    しかし、それは、Jリーグにとって、結果的に悪いことだったわけではない。多くの地域で、市民クラブ的な動きが起こり、上記のように、現在では日本全国に57ものプロサッカーチームが存在している。ただ、それは簡単にそうなった訳ではないのだよということを含めて、筆者はJ2・J3の18クラブを本書で紹介している。
    Jリーグファン、というか、サッカーファンならとても面白く感じる本だと思う。

  • Jリーグの下部カテゴリのクラブを取材した、宇都宮さんらしい本。付記でその後の情報が乗ることで取材時の目標や期待が実現したかどうかが分かるのがよい。
    全国各地を取材して回っているだけに各クラブの差が見えて興味深い。こういう本がどんどん増えてくることで、サッカーが日本に文化として根付いていくのだろう。
    これだけの本なのに、なぜ編集部は山形の位置をしくじったのだろうか。

  •  ディス イズ ザ デイと並行して読む幸せ。

  • 今やJ3にまで拡大し全国津々浦々に根を下ろしつつあるJクラブだが、各地域の取材を通して日本社会の縮図が見えてくるという著者の実感は、それこそJリーグ百年構想を良し悪し含めて体現しているよう。地元にスポーツという楽しみが生まれ、それを基軸とした人の集まりと交流が地域を活性化させる。サッカーは街おこしの有力なツールになり得、中都市はもちろん人口減少(少子高齢化)が進む地方にも切実なニーズがあったりする。そこには行政側とのタッグが必要不可欠だが、彼らの理解と動きは大抵ひたすら鈍い。縮図という言葉からは、Jリーグが持つポテンシャルを活かそうとする人達がいる一方、スタジアム問題に象徴されるように、その価値に気付く気さえない旧き日本も垣間見られる思いがした。今後ダゾーンマネー効果でライト層の目を再び向けさせる事が出来たら、その時漸く次の一歩に進めるのだろうか。ところで本書の記事内容は数年前のもの。末尾に後日談が付記されているが、各エピソードによってせっかく未知のJ2クラブに関心を持てたのだから、もっと最新トピックのボリュームを増やして、18年度開幕直前に出版してくれたら、すぐに観戦という導線ができたかもしれず、少し勿体無かった。ただ欠点というほどでもない。

  • サッカーを主戦場とするスポーツライターで、写真家でもある宇都宮徹壱さんが、J2とJ3のうち18チームの取材をまとめたもの。『スポーツナビ』に掲載されたものもあるので、何カ所か既読感があった。

    宇都宮さんのかかれたものを読んでいつも感じるのは、厳しい批評をあえて押さえた温かいまなざしだ。経営基盤の弱いところもあると思われるJ2、J3チームの運営会社。取材経験豊富な宇都宮さんなら、「おや?」と感じるところもおそらくあるのではないかと穿ってしまうが、そんな視線はほとんど書かれていない。これはどの原稿にも共通する姿勢だ。だからいつも読後感がとても良い。新刊が出ると、ついつい手にとってしまうのだ(メルマガ登録は今のところまだ悩み中だけど……)。

  • 宇都宮さんの新著、すぐにAmazonでポチり買いしましたが


    やっぱりおもしろい。

    これだけ丁寧にJ2、J3のチームを取材され、取り上げられている本もないと思います。

    J2降格時のジュビロもしっかりと出ています。

    2014年降格1年目。

    圧倒的な戦力が擁しながらも、なかなか波に乗れず

    最初は湘南、続いて松本山雅の後塵を配し、最終的には千葉にも抜かれ4位。


    さらに昇格プレーオフで6位の山形に敗れ、昇格を逃すという全く散々な年。

    そんな年で、もうね、懐かしいというよりは思い出したくない黒歴史(;´Д`)


    しかもちょうどシャムスカ体制で勝てなくなってきた頃の取材内容で

    余計きついです。ただインタビューを受けている小林選手はめっちゃポジティブです。

    ブレイク前夜、今から思うとよくぞこの位置から代表、そして世界へと羽ばたいたな、と思いますね。

    やっぱよき指導者の出会いは大きいですね。



    そんな現在はJ1に返り咲いているチーム(C大阪、札幌、清水)から

    なかなか上がれないかつてのJ1チーム(大分、千葉、京都、横浜FC)

    地域リーグから昇格してきたチーム(秋田、鹿児島、山口、金沢)

    などなど18チームのJ2、J3チームの現状をとっても丁寧に描いた名著です。



    5年後また読んでみたい。その時にこれらのチームの現在地はどこなのかと。

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著者プロフィール

写真家・ノンフィクションライター。1966年生まれ。東京都出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、テレビ制作会社勤務を経て、1997年に「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追いかける取材活動を展開。2010年『フットボールの犬 欧羅巴1999‐2009』でミズノスポーツライター賞大賞、2016年『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』でサッカー本大賞を授賞。現在、個人メディア『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信中。

「2022年 『前だけを見る力 失明危機に陥った僕が世界一に挑む理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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