ぼくの生物学講義: 人間を知る手がかり

著者 :
  • 昭和堂
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784812210437

作品紹介・あらすじ

人間はいったいどういう動物なんだろう?"日高哲学"ともいえる生物学が体系的に語られる、最後の講義録。

感想・レビュー・書評

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  • 更科功先生のにつづけて生物学講義の本。動物学が専門だけあって、分子生物学専門の更科先生とは違った切り口から生物学の面白さを語っていただいた。体毛の不思議、遺伝プログラムの学習の講が特に興味深かった。

  • 人間はいったいどういう動物なんだろう?
    “日高哲学”ともいえる生物学が体系的に語られる、最後の講義録。

    動物の中で人間が変わっている点を述べている。
    直立歩行に至る経緯はよく分ったが、
    どうしてそうなったかの構造的なところは、
    未だよく分らないことが多いらしい。

    今の生物学では、以前の種族全体の維持本能説でなく、
    自分の血のつながった子が欲しいだけという考えらしい。


    人はもちろん動物だ。
    だが体毛を持たず、直立二足歩行する。言語を操り、
    人間以外は持ち得ない財産継承のために結婚のような社会制度を持つ変わった動物である。

     変わってはいるものの、やはり人は動物の一種である。
    人にも生物としての遺伝プログラムによる基盤がある。
    まっさらの状態から何でも学べるわけではないし、行動にも一定の傾向がある。
    オスとメスは異なる基本的戦略を持っている。
    それぞれが独自に自分と血のつながった子孫を残すためだ。
    そのような基盤が底にあって、
    動物も、そして人間も、社会や社会制度を作り上げている。

     この本では動物行動遺伝学と呼ばれる分野の話が分かりやすく解説されている。
    文系理系問わず生物学の基礎知識がなくても誰でも読める本だ。

     この分野では子孫をどのくらい残せるかを「適応度」という概念で表す。
    特定個体が環境に適応しているかどうかではない。
    子孫を多く残せるかどうか、それが問題なのだ。
    未解明の謎も多いものの、適応度の概念を使うことで、
    動物、そして動物としてのヒトの行動の不思議もいろいろと読み解けるようになってきた。
    これが本書中盤の内容だ。

     だが人間はやはり変わった動物でもある。
    たとえば想像力と創造力と持っている。
    では人間という動物集団にあった社会とはどんなものなのか。
    昨年没した著者の講義は最終的にここへ繋がっていく。

     著者は、特に人間は「思い込み」が強い動物であり、
    対象を見るときにも、頭のなかを整理するときも「思い込み」を利用しているのではないかと述べている。思い込みがないと、ものは見えない。
    だが思い込みすぎても、ものは見えない。そういうものであるらしい。


    ■目次
    第1章 動物はみんなヘン、人間は一番ヘン
    第2章 体毛の不思議
    第3章 器官としてのおっぱい
    第4章 タイトル案:言語なくして人間はありえない
    第5章 ウグイスも「カー」と鳴く――遺伝プログラムと学習
    第6章 遺伝子はエゴイスト
    第7章 社会とは何か?
    第8章 種族はなぜ保たれるのか?
    第9章 「結婚」とは何か?
    第10章 人間は集団好き?
    第11章 なぜオスとメスがいるのか?
    第12章 イマジネーションから論理が生まれる
    第13章 イリュージョンがないと世界は見えない

  • 学生時代を思い出す。いかにも学者っぽいしゃべりが懐かしい。
    今ならいろいろ質問したいことあるんだけどな。
    文化人類学ゼミもっとまじめに勉強しとけばよかったな・・・。

  • 故京都大学教授日高敏隆先生の講義内容を収録した本。
    人間が他の動物と比較していかに不思議な動物であるかを淡々と説明していく。
    人間の背骨のS字の理由、利己的な遺伝子等を含めてる人が生活上で意識しない、しかし非常に大切な構造を分かりやすく解説している。
    内容的に生物学の表面を幅広く取り上げてる感じ。
    中でも、教育における集団制の重要性の講は面白かった。

  • 日高敏隆先生の最後の講義録.
    「人間はいったいどういう動物なのか?」をテーマに,生物学,特に動物行動学の視点から語られている.
    人間の社会や言語,コミュニケーションに関する見解は,日高先生らしく非常に面白い内容.

    いくつかの講義は,「よくわからない」で締めくくられている.
    こんなに面白い講義,ぜひ受けてみたかった.

    【メモ】
    ・デズモンド・モリス「裸のサル」
    ・チョムスキー,ソシュール
    ・アーサー・ケストラー「真昼の暗黒」
    ・ヴァン・ヴェーレン「赤の女王説」
    ・ギルバート・ライル
    ・イマジネーションとイリュージョン

  • 動物行動学の視点から、「人間とはいかなるものか」ということを語った講義録。
    哺乳類としての人間の身体的特徴、遺伝、言語、種と個体のあり方、社会、認識などなど、その範囲は広いが、どの章もわかりやすい言葉で語られていて、その内容も面白く刺激的だった。
    人間だけを取り上げるのではなく、他のさまざまな生物の事例と比較しながら、人間のあり方を浮き上がらせていく。その姿勢は、「人間とはいかなるものか」ということ以上に、「人間とはいかにあるべきか」ということまでも示唆しているように感じる。
    日常生活を送っていると、人間は特別な存在なのだという暗黙の了解がされているのではないかと思うことがある。確かに、人間は特殊な存在かもしれないけれど、あくまで動物であり生物であり、その点は他の動物や生物と変わらないのだという視点を忘れてはいけないのだと思った。

  • 請求記号: 460||H
    資料ID: 91113649
    配架場所: 工大選書フェア

  • 動物行動学の視点から人間を知る入門書。いかに人間が奇妙な動物かがわかる。

  • こんな「講義」受けてみたいよね
    難しいことを より難しく講義する教授は山ほどいらっしゃるようですが、
    難しいことをこんなにも興味深く、そして面白く語れる教授はそういらっしゃらないと思うのです

    あぁ 賢くなったなぁ

    と思わせてもらえる一冊です

  • 動物学の勉強をしていなくても見覚えのあった「日高敏隆」という名前。
    本書は、そんな著名な動物行動学者が晩年に精華大学で行った、
    半年間の講義を、講義口調で(これがポイント!)まとめたもの。

    博識豊かな先生が語ってくれる講義は本当におもしろい!
    という感想が素直に出てくる。
    親しみやすく、とてもよく出来た本。

    「人間ってどんな生き物なんだ?」というテーマで、
    生物学、言語学、社会学、いろんな角度から語られる話の数々。
    そのどれもが面白く、わかりやすく、特別な知識がなくても楽しめる。
    全13講が短く感じられ、もっと読みたいくらい。

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著者プロフィール

総合地球環境学研究所 所長

「2007年 『アフリカ昆虫学への招待』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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