1996年公開のアメリカ映画を脚本家自らがノベライズ。アーサー王伝説をうまく引用した王道ファンタジー。
映画は未視聴。
ちょっと検索してみたのだが、神話や伝説などにおいて、ドラゴンスレイヤー、つまり竜殺しや竜退治の物語は古くからかなりの数があるようだ。最近のエンタメでもファンタジーものでは基本となるモチーフ。すでに30年近く前の映画だが、当時でも使い古されていただろう題材を、どう料理したのか。興味深く読んでみた。
※以下、ネタバレっぽいものを含みます。
序盤、主人公ボーエンが竜退治に専心することになった一つの勘違い。それと、あまりに急すぎるアイノンの豹変。これがちょっと、唐突すぎて人物描写的に無理があるように感じた。もう少し説明がほしかったかも?そこに若干の違和感を感じつつも、以後は魅力的なキャラクターが次々に登場し、軽妙な会話のやり取りが面白くて引き込まれていった。
暴君のような悪逆無道な王と、次第にまとまっていく反乱軍の戦いは本作の見所のひとつ。ちゃんとヒロインとのロマンスもある。また、アーサー王伝説を巧みに引用しており、一度どん底に陥ったボーエンの魂を蘇らせる騎士たちの亡霊には心が震えた。映画でどう表現されているかまだ観ていないが、文章だけで非常に美しいシーンだと感じた。
竜の返り血を浴びて不死身になったジークフリートの話を、逆手に取ったような設定は独特だ。この世界では実はドラゴンは善なのだが、人間がそれを誤解して悪と決めつけ、ドラゴンスレイヤーのような存在が成り立ってしまう。本作は、人間自身の心に潜んでいるモンスターとの戦い、つまりは人間どうしの戦いの物語である。ドラゴンハートの「ハート」は、ドラゴンが分け与えた心臓と、ドラゴンの善なる心のダブルミーニングなのだろう。ドレイコとボーエンの交流に「ハート」のあたたかさを感じた。
悲しくも美しいラスト。予想を上回る読後感に感動。
騎士道と竜退治の英雄譚を現代のエンタメとして蘇らせた力作。
映画はこれから視聴予定!何やら続編がいくつもあるらしい……?
※追記 映画版の感想
映画では、アイノンが最初からクズだったw
アーサー王のシーンは小説の方が感動がある。カーラとのロマンスもなし。どちらかというと、ドレイコとボーエンの友情が全面的に出ていて、CGのドラゴンが非常に愛らしい作品になっている。名作。