風姿花伝・花鏡 (タチバナ教養文庫 31)

  • TTJ・たちばな出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784813324171

作品紹介・あらすじ

父観阿弥との共著とも言える、総論的な『風姿花伝』、能の書き方の秘訣を親切に解き明かした『能作書』、四十代から六十代までの熟慮の成果を集成した『花鏡』。世界に誇る世阿弥の美学のエッセンスが満載。現代語訳・原文・詳しい語注つき。

感想・レビュー・書評

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  • 世阿弥の3冊の解説書

    世阿弥は室町時代の人 1363年生まれ1443年没
    幼名を、鬼夜叉といい、足利義満の寵愛をうけ当代の能役者となる。
    しかし、息子など次々に後継者がなくなると、晩年、都から佐渡へ流されてしまう

    能の達人であった世阿弥が残した書の内の1つ

    風姿花伝 同じく達人であった父の観阿弥の教え、口伝をまとめたもの
    能作書 新しい能を書くにあたっての心得をまとめたもの
    花鏡 世阿弥自身が気がついたものを後世へ残すために記したもの

    いずれも、相伝といって、門外不出、室町時代から、明治時代まで、世にでることはありませんでした。
    他にもこういった奥儀書というか、失われたノウハウがあったのでしょうね。感動しました。

    ■風姿花伝

     申楽の道を後世へ伝えようとして表した教育テキスト 7巻からなる

    1 年来稽古条々 年代別の教育方針を記したもの
      子供の成長に従って、教える内容を次第に変えていくもの、成人してからは、成長するために必要な事柄をポイントとして説明しています。
    2 物学条々 演じる対象ごとに、記したもの
      老人や、女性、神などになるときの踊りのポイントが書かれています。
    3 問答条々 Q&A集
      父への質問なのでしょうか。亡父の遺訓とかいてあり、その大要を記したものとあります。
    4 神儀伝 申楽の始まり、歴史を記したもの
      神代からの能のおこりと歴史がつづられています。天竺から伝わり、聖徳太子のときより広まった話、世阿弥の誇りを表しているのでしょうか。
    5 奥儀讃歎云 申楽の秘訣を記したもの
      芸の心得がのっています。どうやったら、「花」をもった優れた役者になれるかが書いてあります
    6 花修云 能の新作の書き方を記したもの
      能の新作の書き方について。最上、次善、相応といった3つのレベルで書かれています 
    7 口伝 奥義、真髄を花と称し、その日の出来不出来の処し方を記したもの
      花とは何か、「秘すれば花」、調子のよい時悪い時の過ごし方「男時、女時」などの解説。

    ■能作書
    種、作、書の三道が出発点である
    ・種 ある曲の典拠となる話においてその主役となる人物をさすものであって、舞歌にとって非常に大きい働きをするものであることをまず知らなければならない。
    ・作 能の素材を具合よく求めて、次にその舞台的表現を適切に決定することである。序1段、破3段、急1段、合計5段となる。
    ・書 その能で最初に出る役者をはじめとして、後シテの種類により、この人体の物にはどんな文句で書くのがよいかということよく把握しなければならない。能の様式にそって、いろいろなおもむきにふさわしい縁のある詩や謡の文句をそれぞれに配当して書かなくてはならない。
    ・後段に、老体の能、女性の能、軍体の様式、などが人物別に解説されている

    ■花鏡
    ・心を十分にはたらかせ、身体を七分に動かせ
    ・まず聞かせ、後で見せるようにせよ
    ・演じるにはまずその役になり切る工夫をして、然る後にその演技をする
    ・我見 自分が意識する自分の姿
    ・離見 離れて自分を見ること、観客の意識に同化して自分をみる
    ・離見の見 観衆と同じ目で自己の姿をながめ、肉眼でみえないところまでを見極める。見えない自分の後ろ姿をも見る
    ・担板感 板を担ぐと片方しか見えないことで、偏見のことをいう。
    ・序 はじめのこと、すらりとわかる能で、あまり手のこんだ技巧はいらない
    ・破 まっすぐですらりとした演じ方をこまかな方面へ転じて表現をする
    ・急 その日の締めくくりなので、終曲にふさわしい演じ方をする
    ・習道を知る 師についてよく学習した後に模倣すべきであって、しっかり学習しないうちに模倣してはならない
    ・第一人者になるためには、
     ①素質的に見込がある天分をもつ
     ②ほんとうに好きでこの道に専心精進する心がけをもつ
     ③この道を正しく教える指導者がいること
    ・舞や動作は技、技を支配するものは心、能は悟りを開いた位。
    ・能を知ること 専門外の事すべてをなげうって、能だけに没頭して、順序を追いかけながら休むことなく習いきわめて、年功を重ねていった結果、自然と心の眼がひらけてくる時に能を知ることができる
    ・初心忘るべからず
     批判基準となる初心を忘れず
     自分のそれぞれの時期における初心を忘れず
     老後の初心を忘れず

    目次

    文庫版へのまえがき

    風姿花伝

     序
     風姿花伝第一年来稽古条々 上
      七歳
      十二三より
      十七八より
      二十四五
      三十四五
      四十四五
      五十有余
     風姿花伝第二物学条々 中
      女
      老人
      直面
      物狂ひ
      法師
      修羅
      神
      鬼
      唐事
     風姿花伝第三問答条々 下
      問答〈第一〉座敷を見て、吉凶をかねて知ること
      問答〈第二〉序・破・急をば何とか定むべきや
      問答〈第三〉猿楽の勝負の立合ひの手立てはいかに
      問答〈第四〉はや劫入りたる為手の、しかも名人なるに
      問答〈第五〉能に得手々々とて
      問答〈第六〉能に位の差別を知ること
      問答〈第七〉文字に当たる風情とは
      問答〈第八〉常の批判にも、「潤れたる」と申すことあり
      問答〈第九〉能に花を知ること
     風姿花伝第四神儀伝
     奥儀讃歎云
     花伝第六花修云
     花伝第七別紙口伝

    能作書

      能作書条々
      三体作書条々 老・女・軍、これ三体なり。

    花鏡

      一調(いっちょう)・二機(にき)・三声(さんせい) 音楽開口初声(おんぎょくかいこうしょせい)
      動十分心(どうじゅうぶんしん)、動七分身(どうしちぶんしん)
      強身動宥足踏(ごうしんどうゆうそくとう)、強足踏宥身動(ごうそくとうゆうしんどう)
      先聞後見(せんもんごけん)
      先能其物成(せんのうごもつせい)、後能其態似(ごのうごたいじ)
      舞声為根(ぶしょういこん)
      時節当(レ)感事(じせつかんにあたること)
      序・破・急之事
      知(ニ)習道(一)事(しゅどうをしること)
      上手之知(レ)感事(じょうずのかんをしること)
      浅深之事(せんじんのこと)
      幽玄之入(レ)境事(ゆうげんのさかいにいること)
      劫之入用心之事(ごうのいるようじんのこと)
      万能綰(ニ)一心(一)事(まんのうをいっしんにつなぐこと)
      妙所之事(みょうしょのこと)
      批判之事(ひはんのこと)
      音習道之事(おんしゅどうのこと)
      奥段(おくのだん)

    ISBN:9784813324171
    出版社:たちばな出版
    判型:文庫
    ページ数:347ページ
    定価:1200円(本体)
    発売日:2012年03月01日第1刷
    発売日:2014年01月31日第2刷

  • 作曲生活において一生モノと言える本に出会った。六百年前から在った。

  • 歳を取ると物事を何でも結びつけて「それはあれと同じ。何故なら〜」みたいになると聞く。
    世の中があまりに多様で何一つ不変がなく依るべきところがないから、行きすぎた単純化や自分勝手な法則を作り出さないと怖くて生きていけないからかな。
    で。私もジジィの仲間入りの年齢になりまして風姿花伝くらいは目を通さないとなと購入。
    数百年前に書かれたものであれば、行き過ぎた単純化も勝手な法則も、触れる幻に感じますよね。
    どうせ長生きしても100年ぽっちなら、これこそがルールだ、としてもいいのかも。

  • 一つの物事を極める事の大変さ、謙虚さを実感。
    偶然できた事を、自分できる!やれる!って思ってはいけないですよね。
    実生活でも、取り入れられそうなところが多々ありました。

  • 話鏡ははじめてだった

    ところどころ、それで本当に訳はいいんだっけ?と疑問を感じるところもあったので、もうちょっと解説いれて欲しいんだけども、とてもよかった

    秘すれば花
    離見の見
    初心わするあべからず

    世阿弥素晴らしい
    日本にはこれがある!!

  • 訳が読みやすい。
    観客の心を惹きつける“花”を追求し続ける
    姿勢からは現代も学ぶものが多い。

  • 小西さんが関わっている本は何冊か読んでいますが、いずれもとても気に入っています。風姿花伝は違う本で読んでいますが、今回読み終わって、この本が一番気に入りました。読みやすい。私にとっての最高の啓発本です。

  • 花鏡が収録されているのが嬉しい。

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