- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784813804147
作品紹介・あらすじ
日本文藝家協会 編
編纂委員/角田光代、林真理子、藤沢周、堀江敏幸、町田康、三浦しをん
コロナ禍の中、表現者たちは、いったい何を見つめ、何を考えていたのだろうか。
この本を読むと2021年の空気が伝わってくる。
苦しいことだけではない。喜びやユーモアが、洗練された文章で綴られている。
日本語の美しさも感じとってほしい。
――本書編纂委員 林 真理子
日々の雑感、考察、失敗談から、亡くなられたあの方への追悼文まで…
さまざまな書き手たちが、「エッセイ」という枠組みのなかで書き記した2021年の記録。
この年に新聞・雑誌等の媒体に発表された中から選りすぐった、珠玉のアンソロジーです。
感想・レビュー・書評
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久々にベスト・エッセイを購入した。
というか、前はいつ買ったかなぁと思って棚を探したら、2011年だった。
表紙がなんだか良かった。
オビから虎が覗いている。
コロナ禍の昨今だから、今しか出会えないエッセイがあるんじゃないかなと思ったのだった。
いろんな人が悼まれている。
立花隆、さいとう・たかを、白土三平、河合雅雄、田中邦衛、那須正幹、安野光雅、瀬戸内寂聴。
著作が残ることだけでなく、誰かの言葉によって、語られ続けることもまた、痕跡の一つと思う。
私にとっては元々「会えない」人ばかりなのだから。
文章を書くことを生業とする人達のなかにあって、不思議と印象に残ったのが、加納愛子と田中卓志の芸人お二人。
Aマッソ加納さんについては、幼少期からの読書遍歴や大学で映画サークルに入る話が中心で、芸人転向が最後にやってきたので、あれっ?と思って、ああ、あのコンビか!と思った。
アンガールズ田中さんの「最高の食事」は、母親の作ったお弁当を巡るエピソード。
元になったバラエティー番組を見てはなかったはずだけど、私、この話どこかで見たなぁと感じていた。
田中さんのお母さんが作ったお弁当が酷評され、誰にも選ばれなかった、という話。
気持ちと仕事を両立させることは、難しい。
難しいことが出来る人だから、ずっとテレビに出続けているんだろう。
どこかで見たなぁ、は、寮美千子さんが奈良少年刑務所を訪れたときの文章。
「空が青いから白をえらんだのです」
初出は「東京人」1月号とあるけれど、絶対読んでない。であれば、どこで出会ったんだろう?
こういう意外な出会いが楽しめる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2022年8月光村図書刊。2021年に発表されたエッセイ75編を収録。いつもながらの多彩さが楽しい。コロナ禍の中のエッセイばかりなのだが、日常的なお話が多い。いつの間にかコロナ禍も日常に組み込まれたんだと再確認しました。
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選び抜かれた言葉と思い出。幅広い執筆者による珠玉のエッセイ集です。
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2014年からこのシリーズを読み始めて時々とばしてはいるけど毎回楽しみにしています。
(いま調べたら昨年読んでいなかった)
普通に面白かったのは
武田砂鉄『部屋にいる感じ』
二宮敦人『特に秘密、ありません』
岸本佐知子『雪原』
岸本さんは前にも面白いと書いていて
エッセイ集も読んでいます。
でも武田さん二宮さんは初めて(たぶん)
きっと面白い人なんだろうなと思うけど
先日朝井リョウさんのエッセイ集で笑って
小説と全然違うと思ったので
このお二方も小説を読んでみるまでは何も言えません。
興味深く読んだのは
奥本大三郎『ナマケモノ』
高見浩『『老人と海』をめぐる恋』
佐々涼子『この世の通路』
佐々さんは本屋大賞2020ノンフィクション大賞
『エンド・オブ・ライフ』を読んでいました。
このエッセイには驚きました!
ノンフィクション作家が、こんな大事件をエッセイ程度におさめて良いのでしょうか?! -
日常をサラサラ書いた(と思しき)ものもあれば,思わず涙が溢れそうになるものまで,2021年に書かれた珠玉のエッセイを集めた短編集.
やっぱり編集委員の人たちは別格だなあ. -
作家のみならず、幅広い職業の方々のエッセイ集。今回は追悼文が多かった。山本文緒さん、立花隆さん、瀬戸内寂聴さん、田中邦衛さん、田村正和さんなど…寂しい気持ちになった。
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・大人への扉を開けたのは
・我が町の「宝」
・そんな時代
・悪態俳句のススメ
・息子よ安心しなさい、あなたの親指は天国で花となり咲いている
の、5篇が特に好きだった。
ベストエッセイというエッセイ集なので、
好みなのもあれば好みじゃないのもあったけど、
そこを含めて、食わず嫌いをしてきた
自分の新しい好きを発見できるので大好物。
読み切りたい本だったので、消化できてよかった。 -
本書の存在を知らなかった。社会情勢を鑑みたエッセイが多いので,毎年読む恒例にしても良いかもしれない。
2022年は相変わらずコロナ禍の中にあり,かつ,著名人たちが亡くなったからか「○○さんを悼む」というエッセイが多く感じられた。
私の知識不足により追悼されている方もエッセイを書いている方もどなたか分からないときもあったが,楽しく,興味深く拝読した。
山本文緒さんの死は記憶に新しく,私も好きな作家であったので,新しい作品が読めなくなるのは悲しい。
角田光代さんは山本さんと20代の頃から親交があったらしく,彼女の作品はずっと読み返すことができるが,彼女の家にお邪魔することはもうできないと綴っている。
角田さんにとって山本さんの本は,ただの作品ではなく,故人を偲ぶものとなるのだろう。
飼っていたインコが亡くなったとき,家族で声を出して泣いたというエピソードを披露してくれた椹木野衣さん。
思わずもらい泣きしそうになった。別に読者の涙腺を刺激しようとして書いたのではないと思うが,奥様の指に止まってから段々弱弱しくなり,終にはくずおれるインコの姿を想像するだけで私はダメだ。
動物が死ぬとき,どのような記憶がその頭の中をめぐるのだろうか。
それとも何も感じず,眠りにつくのだろうか。
酒井順子さんは「ヤバイ」という言葉の汎用性について説いた上で,自らが昔使っていて大人にたしなめられた言葉を書いた。
「すごい」「素敵」がそうだと言う。知らなかった。「すごい」はまだ分かるけれど「素敵」が若者言葉だったなんて。
私は今でも「素敵」を使うが,相手にどう思われているのか少し不安になる。
言葉は時代の変遷とともにどんどん変わっていく。
いつも思うが,流行する言葉は最初は誰が使い始めたのだろうか。もし自分がそうであれば,ちょっと得意になってしまうかもしれない。
田中卓志さんは,母の弁当の話を綴る。当時看護師で多忙だった母が作ってくれた弁当には,冷凍食品が入っていた。人によってはそれを愛がないと捉えることもあるだろう。
しかし,田中さんは母に感謝し,「弁当おいしいよ」と伝えた。とある番組での企画で,田中さんはその場にいる全員の瞳を潤ませたのだった。
感動エピソードのあとに,自分のダメダメエピソードをすかさず入れてくるのが面白い。
謙虚な人だ。
著者プロフィール
青木耕平の作品
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