ベスト・エッセイ (2024)

  • 光村図書出版 (2024年6月24日発売)
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  • 本 ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784813805861

作品紹介・あらすじ

闇の世の中を照らす文章の光。
人生の光がこの本の中にあります。
――本書編纂委員 町田康

日々の雑感、考察、失敗談から、亡くなられたあの方への追悼文まで…。
読む愉しみ、知る悦び。珠玉の随筆の数々をあなたに。
2023年に新聞・雑誌等の媒体に発表された中から選りすぐった、ベスト・アンソロジーです。

感想・レビュー・書評

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  • 2024年6月光村図書出版刊。2023年に各媒体で発表された79人79篇のエッセイアンソロジー。シリーズ27作目。毎度のことだが多彩さがうれしい。山田正紀さんのUFOを見た話、明和政子さん、北野勇作さん、青柳菜摘さん、伊藤亜紗さん、のペットの話が心に残る。

  • いやぁー、今回も盛りだくさん。盛りだくさんすぎて、なかなか感想をまとめられない。
    以前、ベストエッセイに対して「チョコアソートみたい」と感想を書いたけど、今回はバイキング的にお腹いっぱい。大学受験で国語の問題に出てもおかしくないような内容から、俳優さん、タレントさんなどなど、色々な人が選ばれていて、あれこれ食べられるのは本当に楽しい。

    2024と言いながら、書かれたのは2023年。世相を反映していて興味深い。ウクライナの方が書いているものもあった。もう完全にコロナ禍は終わったんだな、とも実感。時代を反映しているものとしては、AIに関するものがいくつかあったのが印象的だった。

    今回も「おぉー、これいいじゃん」と思う表現を盗もうと付箋を貼りながら通勤時間に読んだ。ただ、読み終わって目次をざーっと見ても、どんな内容だったか思い出せないことの、なんと多いこと。
    そして、思い出すのは案外付箋を貼ったエッセイよりも、貼らなかったほうだったりするという…。

    「付箋を貼るほどの表現はなかったんだけど、なんか心に残っている」というエッセイは、たぶん私の生活のどこかに、その話と結びつくなにかがある。
    バイキングで、珍しい名前の料理名を頑張って覚えようとしたけど、結局あとになって思い出すのは「あのオムレツはおいしかった!家ではできないよねぇ〜」という感じに似ている。

    去年、このエッセイ集の存在を知って2021年から2023年まで1年に3つ読んだ。
    毎号そうだったけど、今回も追悼多し。しかも大江健三郎と加賀乙彦が2つずつ。アントニオ猪木と瀬戸内寂聴が2つずつあった年に比べれば、私にとってあんまり馴染みのない方だからか「ま、いいんだけどさ」と流せるレベルのイマイチ感ではあるけども。目次に「追悼〇〇」って書いてあったのが、かえって目立って違和感あった。

    ついでに言うと、有名人に対する追悼ではない、身近な知り合いに対する追悼には「追悼〇〇」って目次に書いてないのは、なんだかな…それも追悼なのにな…と思ってしまった。
    石川直樹の、親しいシェルパに対する追悼文は相当グッときた。

    編纂委員の6人+73人分のエッセイ。
    てことは、編纂委員はひとり12個選んで持ち寄ってんのかな。毎月1個、自分の読んだものの中から「ベスト」なエッセイを持ち寄りパーティーしたら、「あれ、唐揚げいっぱいじゃん」「ま、いっか。どの唐揚げもちょっとずつ味違って、むしろ味比べで楽しいし!」みたいなことになるのかな。いやいや、それじゃぁ編纂の意味があんまりないような…とか思ってしまった。

    ふと、自殺した知人たちのことを思い出した。風のうわさで自殺だった、と聞いた程度の関係なので、追悼と言えるほど親しくないけど。

    世の中にはいろんな人がいて、いろんな考えの人がいて、その考えを文字にするのって、たしかに炎上だのなんだのリスクはある。それでも、その考えに、その言葉に、勇気をもらって生きていくことができる人もいるんじゃないかな、ってふと思った。

    死にたいほどつらい思いをしている人に、迂闊なことは言えないな、って思う。
    死にたいときに、本なんて手にする元気はないかもしれないな、って思う。
    そうは思うけど。
    「エッセイ集って、なんだかんだけっこういいですよ」って。「いろんな考えがあるってこと、書きたいこと書いていいってこと、知って生きてく力になったらそれはそれでアリかもですよ」って思う。まぁ文豪たちも自殺してんじゃん、と言われればそれまでか…。

    救難信号の話が最終的に一番印象に残っている。
    「助けて」という救難信号は、大きな音とは限らないんだよなぁ。どんな音なのか、どんな大きさなのか、どんな風に鳴らしているのかは人それぞれ違う。聞き逃さないようにするのって、並大抵のことじゃないんだよなぁ…。

    「人のことはどうでもいい!周りを気にするな!」と夫は娘によくキレる。オマエはもう少し周りを気にしろ、と夫に対して私は思う…。そういう夫こそ、本当は救難信号を出しているのかもしれない。

    来年も、どんな『ベストエッセイ』が集まるのか、楽しみにしている。願わくば、「唐揚げばっかり集まってんじゃん」な感想にならないといいのだけど。

  • 星3.5という感じです。
    たくさんの著名人のエッセイがこんなにお手軽に読めるのは初めてで、全て短編なのがまた読み易く、途中で止める時もすんなりと。

    興味深い:明和政子、宮下奈都、北野勇作、合田文、本谷有希子、小佐野彈、植本一子、中村和恵

    面白かった:浅田次郎、伊藤理佐、千住真理子、俵万智、西川美和、ブレイディみかこ、燃え殻、三浦しをん

    心にのこる:斎藤真理子
    内田樹、「助けて」というシグナルを聴き落とすなという話。大切にしたい。

  • 「ベストエッセイ」は2024の本作が初めて。
    タイトルが示す通り、秀逸なエッセイの数々。
    自分にとって「どなたですか?」という著者が多く、意外性を楽しめた。
    笑ったり感心したり、とても充実した内容だった。
    今後、継続して読んでいきたい。

  • 毎年必読だ!と思っている、光村図書のベストエッセイ2024年版。やっと読みましたぁ!
    過去の巻は、タイムリーじゃなかったのでけっこうとばして読んじゃったりしたけど、今回は知らない作家さんのもだいたい読みました。(だいたい、というのは、「〇〇さん追悼」みたいな文章は、追悼されている方のことを全く知らない場合は読まなかったから)。
    今回も素敵なエッセイばかりでした。特に良かったものを記録↓

    合田文「土鍋の蓋が割れて」
    私も含めて人は誰もが「無意識の偏見」というものを持っていて、脳みそはストレスをなるべく避けるために自分の考えや行動を「正しい」と解釈しやすいらしい。たしかに毎回「私の行動、まずかったかも?」と考えてばかりでは息がつまるけれど、誰かと関わるときに、相手との相対的な立場を考えるというのはやって損がないことじゃないだろうか。

    内田樹「救難信号を聴き落とさないで」
    私が高校生たちに言いたいことはたくさんある。孤立を怖れるな。多数派に従うな。自分の直感に従え。愛と共感の上に人間関係を築くな。ものごとを根源的に思考しろなどなど。でも、私がした話の中で高校生たちが一番はっきりとした反応を示したのは、「助けて」というシグナルを聴き落とすなという話だった。/「助けて」という救難信号を発信している人がいる。君はそれを聞き取った。周りを見渡すと誰も気づかないらしく、そ知らぬ顔で通り過ぎてゆく。でも、君は「助けて」が聴こえた。だとしたら、それは君が「選ばれた」ということである。だったらためらうことはない、近づいて、手を差し伸べなさい。

    俵万智「下げて上がる 一言マジック
    優しさにひとつ気がつく ×でなく〇で必ず終わる日本語

    植本一子「一緒に生きていこうぜ」
    『愛は時間がかかる』という著書のことが書かれていて、読みたいと思った。

    いつも、手当たり次第にいろんな本を読んでいるけれど、自分で何気なく選んだ本が、どこかにつながっていてびっくりすることがある。今回は、娘と息子が交代でインフルエンザにかかって仕事を休んだりして、ちょっとできた時間に古い映画「ニューシネマパラダイス」を観ていた。好きな映画ではあるが、そうとう久しぶりに観た。と思ったら!!!ちょうど、この本の中に収められたエッセイで島村菜津さんの「シチリア島の黄色い果実」の中に、ニューシネマパラダイスのことを書いたくだりが出てきたのだ。映画を観た翌日に、ちょうどそのページが出てきたので、すごぉおおおおくびっくりした!鳥肌が立った。(大げさ笑)。
    エッセイによると、映画の舞台はシチリア島の内陸の「パラッツォ・アドリアーノ」という人口2000人ほどの村で、住人の9割はエキストラとして映画に出ているらしい。主人公のトト少年も、その後俳優の道などには進まず、堅実に地元の農業高校に進んだとか。エッセイでは、その村出身の老人とタクシーをシェアした、ということがつづられている。
    とても興味深かった!そして、やっぱり読書体験って尊い、これだからやめられない、と思った。

  • 「何かを表現できたと思った時には、その背後に、圧倒的な量の、表現できなかったものがあることを思い浮かべておく必要がある。(AIと連歌を巻く 永田和宏)」

    2022年12月に公開されてから、わずか2ヶ月でユーザー1億人を超え、“ChatGPT”の話題に明け暮れた2023年。本書はその年にどこかの媒体に掲載されたエッセイの中から選ばれた作品集なので、上で紹介した永田和宏さんをはじめAIやChatGPTが出てくる話も多く、考えさせられたり感心させられたり。ブレイディみかこさんのエッセイには申し訳ないと思いつつ吹き出してしまった。大江健三郎さんが亡くなったのは去年だったなんて信じられないくらい、世界的にもびっくりするようなニュースが続き、時が経つのが早過ぎて怖いくらいだ。

  • 編纂委員作品を含む79人に及ぶエッセイ。
    心に残った作品を列記する。

     歌人が経験したクリーニング屋での一コマ。客の早とちりに対して、「すいません」ではなく、「こちらの説明が至らなかったかも」と、たった一言の言葉の力を思う。(P.185)

     ノンフィクション作家が、イタリアのシチリア島でタクシーのシェアで乗り合わせたおじさんの故郷が映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の映画の撮影地。当時、主人公の少年は地元の農業高校に通っていたという、エピソードに惹きつけられた。(P.241) 

     63歳になって鍼灸専門学校に入学した作家は、鍼灸師の国家資格取得したのだろうか?なぜか気になってしまう(P246)

     うまにそばの後に追加で中華丼を頼んだら、同じ具材だった。しかし、よく食べる!!
    まさに「孤独のグルメ」さながらだ。(P.255)

     父の遺品整理で、3段チェストから赤い靴下が大量に出てきたと、ロックンローラーらしい痕跡を感じる。また横尾忠則氏との交流も素敵なエピソードだ!(P.294)

     コンビニで買った辛子明太子のおにぎりだと思って食べ始めたら、ねぎトロ茎わさび入りだったと云う話し、これは、あるある(P.350)

  • ●なぜ気になったか
    この人の本は絶対読む!、と決めている作家さん含め、こんなにもそうそうたる作家さんたちのエッセイを一気に読めるなんて贅沢すぎる。これはたまらん!読まねば

    ●読了感想
    80ものエッセイがあるとおもしろさはピンからキリまで。すべてをじっくりと読むことはできず、相性の合わないものは飛ばし読みに。でもその中で新たな出会いがあるのはこの本ならでは。合田文さんの著作を読みたくなった

    #ベスト・エッセイ2024
    #日本文藝家協会
    24/6/24出版
    https://amzn.to/3zo8Guk

  • 毎年楽しみにしているベスト・エッセイ。
    もともと好きな作家さんのものは面白いし
    ここで初めて出会うかたとはとても良いきっかけ。

    前回あるかたの本を読んでみようと記録していたのですが
    結局一年間読めませんでした。
    次々とやってくる他の本に時間をとられてしまって。

    今回もまたあるかたのエッセイ集をメモしておいた。
    今度こそ読めるといいんだけど。

    それとは別に明和政子さんの「脳科学者がイヌを飼ったら」
    興味深かったので、少しここにメモ。

    〈私は、ヒトとチンパンジーを対象として、
    ヒト特有の社会性とその背後にある脳や心が
    どのように生まれ、発達していくかを
    明らかにしようとしている研究者だ。
    チンパンジーは、ヒトと系統発生上
    もっとも近縁な現生種である。
    化石資料と分子生物学の資料によれば、
    ヒトの系統はチンパンジーの系統と
    約600万ー700万年前に分岐したとされる。
    両種のDNAの塩基配列は、98.8%が同じであるという。
    この数字は、ウマとシマウマとの間でみられる差よりも小さい〉

    これを私は単純に
    「つまりヒトとチンパンジーは
    ウマとシマウマより近いということか」
    と思いました。

    それはともかく、明和政子京大大学院教授は
    チンパンジーを研究、そして飼っているイヌを見て
    最後にこうしめくくります。

    〈私の人生において出会ったチンパンジーもイヌも、
    そしてヒトである私の子どもたちも、
    それぞれは大きく異なるが、
    いずれもが美しい輝きを放ち、
    生命の尊さを日々実感させてくれる。
    「いま・ここ」の時空間で偶然出会い、
    とおに生きているかけがえのない存在を
    とても愛おしく思う〉

    比較認知発達科学、面白そう。
    京都大学に入るのは大変だけど。

  • 楽に読める本。
    特に私は
    ラランド・ニシダ「母との遭遇」
    カツセマサヒコ「行けたら行く」で本当に行く人
    三浦しをん「なにを食べてる?」
    この3話が面白かった。

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