- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784815807122
作品紹介・あらすじ
科学的方法の根幹を支える統計的推論の枠組みを丹念に検討し、科学において証拠の果たすべき役割を、哲学者と科学者の双方に向けて明瞭に示した希有な著作。
感想・レビュー・書評
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『統計学を拓いた異才たち』や『異端の統計学 ベイズ』などの書籍を読み、確立・統計に関わる黎明・進展・論争・確執などの歴史やそれに関わった多くの人々の物語を楽しんだが、学術的な部分に関しては表層的な記述に留まり、そこで何を巡ってどのような議論がなされたのか分からず、蟠りが残り、不満足であった。(当然、そのような要望に応える類の書籍ではなかったのであるが、) そのようなことに関心をお持ちの方々に高い水準で答えてくれるのが本書である。科学的仮説を証明する証拠を巡る尤度主義とベイズ主義と頻度主義の考え方を「ロイヤルの3つの問い」を論点として「誰でも認めざるをえない」という客観性の視点で述べる。訳者解説から読み始めることお薦めします。なお、原文を読んではいないが、翻訳は熟れた日本語であり、秀逸であると思います。
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科学者が証拠を集めても、それで真の理論が確実にわからないのだとすれば、いったい証拠によって何がわかるのだろうか。科学者が証拠を使う理由として「真であることが確からしい学説は、どの学説か示すため」
「パスカルの賭け」=コストベネフィット計算によってなされた【思慮による受け入れ】
今信じられている命題と証拠との関係によってなされるならば【証拠によるうけいれ】 -
ロイヤルの3つの問いを座標にとり、頻度主義・ベイズ主義・尤度主義それぞれの道具立てと科学的な推論がどのように正当化されうるのかについて比較検討した本です。後半の章では、赤池先生らのモデル選択理論についてもかなり詳しく議論されています。
乱立する主張への反駁が繰り返されながら整理されていく感覚が哲学らしく(?)、とても面白いです。ただ特に前半は難しいと感じたので、誰かと一緒に読むと良いかもしれません。
とにかく、経験的な科学を志す統計ユーザーは、全員が、考えてみるべき内容だと思います。 -
計算方法や意味は分かったつもりでも、なんとなく使うたびにいつももやっとしている仮説検定についてより深く理解できるかと思い購入。
統計の哲学という題名のとおり、哲学の本なのであるが、統計というなじみの深い題材であること及びわかりにくい用語や概念がほぼ出てこないことから、社会哲学の本と比べて圧倒的にわかりやすく、かつすらすらと読むことが出来た。
正直前半の節は、興味深い洞察と思いつつも、哲学っぽいまだるっこしい議論だと思ったが、7節のAICの話は非常に興味深く勉強になった。
モデル選択と聞くと、モデルAとBのどちらが、物理的真理、つまり現実の世界を表す・一致するという意味で正しいかを決めるかのように考えてしまう。
しかし、そもそもモデル化の目的は予測であり、1万個の結果を表現するための1万個のパラメータを持ったモデルが、パラメータが数個のモデルよりデータとの一致度が高くても、予測において役に立たなければ意味がない。
AICが、この意味で、モデル※の予測の正確性を算出し、モデル間の比較を可能とするものであるという説明は、データを基にしたモデルの評価に一定の解を与えるものであり、読んでいて非常にすっきりした。
※統計学的な意味のモデルであり、数式構造のみを規定し、パラメータの値自体は確定していないもの。 -
わかったこともあるが、内容が読み解けていないので、もう一度自力をつけて読み直さないとわからない。
ベイズ主義、頻度主義、尤度主義について、
(1) 現在の証拠から何がわかるか
(2) 何を信じるべきか
(3) 何をするべきか
について、述べている
## 書名:科学と証拠 --- 統計の哲学 入門
* 著者: エリオット・ソーバー
* 訳者: 松王政浩(Masahiro Matsuo)
* 出版社: 名古屋大学出版社
* 時期: 2020-02-02
目次
日本語版序文
はじめに
§1 ロイヤルの3つの問い
§2 ベイズ主義の基本
ベイズの定義
更新の規則
事後確率、尤度、そして事前確率
確証
信頼性
予想と期待値
帰納
楽園の苦難
哲学的なベイズ主義、ベイズ統計、論理
§3 尤度主義
謙虚さの強み
尤度主義への3つの反論
尤度の法則を制限する必要性
ばかげた仮説がきわめてもっともらしくなることがあるか
尤度主義と条件付き確率の定義
全証拠の原則
尤度主義の限界
§4 頻度主義 I --- 有意検定と確率論的モーダス・トレンス
§5 頻度主義 II --- ネイマン-ピアソンの仮説検定
§6 テストケース --- 停止規則
§7 頻度主義 III --- モデル選択理論
街灯の下で鍵を探す
科学のモデル構築:広く見られる2つの方法
赤池の体系、理論、基準
同定可能性
AICは統計学的一致性をもたないか
ベイズ主義のモデル選択
下位グループの問題
AICの適用範囲
実在論と道具主義
パラメータとは何か
AICは頻度主義か
§8 第2のテストケース --- 偶然の一致についての推論
§9 結語
訳注
参考文献
訳者解説
本書が抄訳である理由
第8節について
本書のアウトライン
議論についての補足
おわりに
索引 -
図書館2019/04/21
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原題:Evidence and Evolution, 2008
著者:Elliott sober (1948-)
翻訳:松王政浩 (1964-)
【メモ】
・本書は、『Evidence and Evolution: The Logic behind the Science』の第一章「Evidence」だけを翻訳・刊行したもの。訳者解説にその理由が述べられている。
・著者のソーバーは、科学哲学者(とくに生物学の哲学)。
【 目 次 】
日本語版序文/目次/凡例 [i-x]
はじめに 001
§1 ロイヤルの3つの問い 006
§2 ベイズ主義の基本 013
ベイズの定理
更新の規則
事後確率、尤度、そして事前確率
確証
信頼性
予想と期待値
帰納
楽園の苦難
哲学的なベイズ主義、ベイズ統計、論理
§3 尤度主義 048
謙虚さへの強み
尤度主義への3つの反論
尤度の法則を制限する必要性
ばかげた仮説がきわめてもっともらしくなることがあるか
尤度主義と条件付き確率の定理
全証拠の原則
尤度主義の限界
§4 頻度主義Ⅰ――有意検定と確率論的モーダス・トレンス 074
§5 頻度主義Ⅱ――ネイマン‐ピアソンの仮説検定 090
§6 テストケース――停止規則 112
§7 頻度主義Ⅲ――モデル選択理論 122
街灯の下で鍵を探す
科学のモデル構築:広くみられる2つの方法
赤池の体系、理論、基準
同定可能性
AICは統計学的一致性をもたないか
ベイズ主義のモデル選択
下位グループの問題
AICの適用範囲
実在論と道具主義
パラメータとは何か
AICは頻度主義か
§8 第2のテストケース――偶然の一致についての推論 164
§9 結語 170
訳 注 175
参考文献 209
訳者解説 217
本書が抄訳である理由
第8節について
本書のアウトライン
議論についての補足
おわりに
索 引 241 -
統計学をもっと学んでから読んだらより味わい深かったのではと思わせる。