- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784815807283
作品紹介・あらすじ
現代社会に生きる上で必要不可欠な科学技術と、どう向き合えばよいのか。理系人間にも文系人間にも必須の、自分の頭で考えぬく力をまったく新しいスタイルで身につける。
感想・レビュー・書評
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2023-05-03
思索と言うよりスキルに主眼を置いた本。1番思い知ったのは、議論は相手をやり込めるためのものではなく、新しい視点を得るための活動という点。論争相手は敵ではなくむしろ次に進むための協力者。いや、わかってはいるんだけどね、という話でもある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
Critical thinkingをなかなか理解できず、どのように思考していくかわからなかったけど、この本を読んで少し体が覚えたような気がした。言葉では上手く表せないけど、読む前と後では自分の考え方、見方などが変わった気がする。これをきっかけに上手に物事を考えていきたい。
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サイエンス
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これはとてもよく工夫がなされたクリティカルシンキングの練習帳。論争のある科学のトピックを事例として取り上げているので内容的におもしろく、またクリティカルシンキングで重要になる論理学(誤謬)の話と、心理学(認知バイアス)の話も適切に解説されている。一応STSとなっているが、倫理学関係者も読む必要がある。
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各ユニットの議論の内容が正確かどうかはあまり問題ではなく、論理展開がどうなっているかを考える題材として扱うべきものなのだろうと思う。そういう意味では面白いし、非常によくできていると思う。おすすめ。
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【書誌情報+内容紹介】
編者:伊勢田 哲治・戸田山 和久・調 麻佐志・村上 祐子
価格:2,800円
判型:A5判・並製
頁数:306
刊行年月日:2013年
ISBN:978-4-8158-0728-3
Cコード:C3040
遺伝子組換え作物、乳がん検診、地震予知……現代社会に生きる上で必要不可欠な科学技術と、私たちはどう向き合えばよいのか。理系人間にも文系人間にも必須の、自分の頭で考えぬく力を身につける、まったく新しいスタイルの 「練習帳」。
〈http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0728-3.html〉
【目次】
はじめに [i-x]
目次 [xi-xiv]
ユニット1 遺伝子組換え作物 001
背景説明 001
ユウさんの議論 遺伝子組換え作物は推進するべきだ 003
タクミさんの議論 遺伝子組換え作物は推進するべきではない 008
スキル1 議論を特定する 014
知 識1 予防原則 021
コラム1 思いやりの原理 025
ユニット2 脳神経科学の実用化 027
背景説明 027
タクミさんの議論 脳神経科学は実用化のための研究を推し進めるべきではない 029
アスカさんの議論 脳神経科学の成果はどんどん実用に使われるべきである 034
スキル2 三段論法と妥当な推論 039
知識2-1 原因推定の方法 048
知識2-2 EBM 052
コラム2 推論のタイプ 055
ユニット3 喫煙を認めるか否か 058
背景説明 058
ユウさんの議論 喫煙が有害だという根拠はなく、有害だとしても禁止を押し付けるのは個人の自由の侵害である 061
アスカさんの議論 喫煙は有害であり、個人の自由は問題とならない 066
スキル3 暗黙の前提の明示化 071
知識3-1 自由主義とパターナリズム 077
知識3-2 統計リテラシー 079
コラム3 逆・裏・対偶 082
ユニット4 乳がん検診を推進するべきか 083
背景説明 083
タクミさんの議論 乳がん検診は早期発見に役立つし日本の乳がんによる死亡者数は増えているから推進するべきだ 086
チアキさんの議論 乳がん検診の有効性は科学的根拠があまりないしデメリットもあるから推進するべきではない 092
スキル4-1 対立点を整理する 098
スキル4-2 リスク分析 101
知識4-1 二重盲検法 105
知識4-2 リスクコミュニケーション 107
コラム4 協調原理 111
ユニット5 血液型性格判断 113
背景説明 113
チアキさんの議論 血液型性格判断は当たるし楽しい 116
ユウさんの議論 血液型性格判断は根拠がなく有害である 122
スキル5-1 定義の明確化 130
スキル5-2 社会調査の質を疑う 133
知識5-1 異文化コミュニケーションとしての科学コミュニケーション 136
知識5-2 社会的CT 139
コラム5 藁人形論法 143
ユニット6 地球温暖化への対応 144
背景説明 144
タクミさんの議論 地球温暖化の原因と将来予測については異論があり、対応には慎重になるべきである 147
ユウさんの議論 地球温暖化は既に無視できない段階に至っており、早急な対策が必要である 149
スキル6-1 通約不可能な関係を避けるために 151
スキル6-2 意思決定 154
知識6-1 シミュレーションの信頼性 158
知識6-2 レギュラトリー・サイエンス 161
コラム6 論点ずらしの誤謬 163
ユニット7 宇宙科学・探査への公的な投資 165
背景説明 165
チアキさんの議論 宇宙科学・探査への公的な投資を推進するべきである 167
ユウさんの議論 宇宙科学・探査への公的な投資を推進するべきではない 172
スキル7 問題のフレーミングを疑う 178
知識7-1 科学コミュニケーション 182
知識7-2 科学技術政策の変遷 188
コラム7 情報の裏をとる 193
ユニット8 地震の予知 194
背景説明 194
アスカさんの議論 動物の異常行動や地震雲などの前兆現象は科学的に証明されており、地震予知のためにおおいに活用できる 198
チアキさんの議論 動物の異常行動や地震雲で地震を予知できるというのは、単なるニセ科学にすぎない 203
スキル8-1 確証バイアスと利用可能性バイアス 208
スキル8-2 四分割表と錯誤相関 212
知識8-1 科学的事実が確立するには 219
知識8-2 「予断」 の必要性 223
コラム8 対人論法 228
ユニット9 動物実験の是非 230
背景説明 230
アスカさんの議論 動物には人間と同種の権利があり、実験などにみだりに使ってはならない 232
タクミさんの議論 人間は他の動物とは異なっており、これからも動物実験は続けてよい 237
スキル9-1 二重基準と普遍化可能性テスト 242
スキル9-2 自然さからの議論 244
知識9-1 カント主義 248
知識9-2 動物としての人間 250
コラム9 仮定をおいての推論 256
ユニット10 原爆投下の是非を論じることの正当性 258
背景説明 258
チアキさんの議論 原爆投下について論じることには意味がある 260
アスカさんの議論 原爆投下について論じることには意味はない 265
スキル10-1 実践三段論法 270
スキル10-2 メタCT ――クリティカルなのは本当によいことか 274
知識10 功利主義とマクシミン規則 278
コラム10 誤った二分法 282
あとがき(2013年3月 執筆者・編集を代表して 伊勢田哲治) [283-285]
索引 [286-289]
執筆者一覧 [290] -
科学の話題を例題にして、クリティカルシンキングの練習。
なかなか楽しかった。 -
10個のトランスサイエンス的問題,社会的問題について,問題の背景,対立する2つの立場からの主張,そういったことを話すために必要な議論の前提,作法(論理学の話)などについてまとめられている,クリティカルシンキングの練習帳(サブタイトルの通りだな)。1つのお題を取り出して使うこともできそうだけど,議論の作法に関する部分はできれば全部さらっておきたい感じ(指導に使うには,という話)。サポート等の情報はhttp://tiseda.sakura.ne.jp/ct_sts/を参照。
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CTの基礎を学びたいと言う人にはうってつけなのではないかと思った。それはCT自体について本格的に学びたいと言うよりも、実際にその場で学びながら議論について論じるメソッドを体験して定着させることによって今後の建設的な議論の指針を手に入れると言う意味でのうってつけである。本格的に学ぼうと思えばもっと専門的な書物が必要であると思われる程度の優しい方法ではあるが、だからこそ無理せず正確な議論と言う概念に触れられる。普段からそのような考え方をしたことのない人にこそ読んで欲しい。
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科学や技術に関する論争を題材にクリティカルシンキングを身につけるという意図はいいとして,闘わされる主張の妥当性が対等と言いにくいものがありバランスに欠けるのが難点。各論争に決着をつけるのが本書の目的ではないとはいえ,科学技術と銘打たれた本を手に取る読者は何がしかの指針を求めているとも思うのだが…。
喫煙の害,血液型と性格の関連性,脳トレの根拠…。自分の中ではもうとっくに決着がついてると思っていたこういうテーマについての議論がことごとく相対化されてしまっていて,「あなたはどちらの議論に説得力を感じただろうか?またその理由は何だろうか?」と問われても困惑してしまう。震災以降,ネット空間でSTSがダメ出しされてたのはこういうことだったのか,と。
「はじめに」にあるように,議論の前提となる事実については虚偽が入り込まないよう慎重を期しているようではある。が,逆に「それでもこれほど議論を相対化できるのか…」とむしろ感慨深かった。EM菌やホメオパシーや千島学説や(科学ではないが)江戸しぐさなんかも,本書に示されたスキルをもってすれば擁護できてしまうのではなかろうか…。論争テクニックの巧拙で結果が左右されてしまうような話は,科学ではないと思うのだが。皆が科学的思考に長けてるわけでないのは重々承知だけれど,社会は科学をこんな風にしか捉えられないんだろうか。
これまで著書を読んできて良いと思っていた伊勢田先生,戸田山先生が編者ということで,期待してたのだがちょっと残念。