安全保障政策: 経世済民・新地政学・共同体 (国際公共政策叢書)

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  • 日本経済評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784818820449

作品紹介・あらすじ

防衛政策に留まらず経済・技術・社会的側面に射程を広げ、安全保障政策の理論と実際、地政学が国家や国際安全保障論に与える影響を考察する。

感想・レビュー・書評

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  •  我が国の安全保障論の第一人者たる国際政治学者が、「国際公共政策叢書」の一冊として書き下ろした、安全保障政策の概説書。

     同叢書は、「政策関連学徒のスタンダード・テクストたること」を目指して編まれている。ゆえに、本書も万人向けとは言い難い。国際政治学の基礎知識を一通りもっている人を対象にしているので、素養のない私には歯が立たないところも多い。文章もゴリゴリの論文調で、凝り固まった溶岩石のようにカテエ。しかし、安全保障全般に関心を持つ者なら、努力して読み込む価値のある質の高い内容となっている。

     かつて、「安全保障」という語は「国防」とほぼ同義であった。だが、冷戦終結やグローバル化の進展などをふまえ、現在ではもっと広義の概念となっている。その変化の象徴が近年使われ始めた「人間の安全保障」という言葉で、これは弱者の人権保護を重視した民衆中心の概念なのである。

     著者は第1章で、安全保障研究の歴史を、代表的な論者・論点を俎上に乗せて手際よく概観。そのことを通じて、国際構造の変容に呼応した安全保障概念の変遷も明らかにされていく。

     時代の変化に応じて、本書でも軍事面に限らない総合的な安全保障が扱われている。防衛政策についてもさまざまな角度から論じられているが、それだけではなく、安全保障の経済的・技術的側面、社会的側面にまで考察の射程が及んでいるのだ。

     そうした特長が顕著に表れているのが、安全保障政策を政治・軍事・経済・情報の4つの「系」に腑分けして論じた第2章だ。軍事面での安全保障が、現在にあっては安全保障政策の一側面にとどまることが、この章で浮き彫りにされている。

     本書のもう一つの特長は、地政学が安全保障論に与える影響が詳論されていること。
     地政学は、戦前・戦中の日本の帝国主義的な拡張政策に影響を与えたことから、戦後は「日本の国際政治学や安全保障研究でまともに取り上げることすら忌避されてきた」歴史をもつ。それをあえて真正面から取り上げ、最先端の安全保障論の中に位置づけたことは、著者の果敢な学問的挑戦といえる。

     国際政治学の核心的な研究分野である安全保障研究について、その歴史と現状、今後の展望までが一通り概観できる、有意義な一冊。

  • 古今東西を問わず、経世済民の策は対外政策のみならず、国内政策をも包み込む包括的概念であり、国家と国民の生存にかかわるあらゆる公共政策領域をカバーする概念であることはいうまでもない。

    冷戦終結後のグローバリゼーションやリージョナリゼーションの加速に伴って、ガバナンスシステムの多層化が進む。

    古くから洋の東西を問わず、情報を制するものは国家を制し、世界を制すると言われてきた。主権国家タイ系が成立してからこのかた、国力を構成する一要素として情報力が重要な位置を占めてきた。

    極(Polar)思考はリアリズム国際政治の十八番とも言うべきパワー概念を軸にした思考法であるが、敢えてこの思考に即して現在の国際秩序を特徴づけるなら、一極構造から多極構造へと地殻変動と地場変動が起こっている。

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著者プロフィール

早稲田大学名誉教授。現代イスラム研究センター副理事長。1943年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。早稲田大学政治経済学術院教授、米国ジョージア大学客員教授、オックスフォード大学客員研究員、ハーバード大学研究員等を歴任。博士(政治学)。著書『安全保障政策』(日本経済評論社、日本公共政策学会2010年度作品賞受賞)ほか

「年 『集団的自衛権とイスラム・テロの報復』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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