知の超人対談: 岡本行夫・佐藤優の「世界を斬る」

制作 : 高畑 昭男 
  • 産経新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784819110433

感想・レビュー・書評

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  • 外交が専門の二人の対談。この二人は外交能力、インテリジェンス能力が高い。民主党政権は一体何をやっているのだろう、と思わざるを得ない。やや古めの本だけど(対談は2008−2009年)、現在の国際情勢を知るには十分の内容。9月14日読了。

    <hr>
    <メモ>
    第1章 21世紀の世界の展望
    10 300年に一度の大転換期。ルネッサンスで人間主義が確立して、それから産業社会、市民革命が起こるまでの300年。その次はは、国民国家を主体とする世界の体制が300年。(中略) 個人や企業、国際機関、地域共同体といったものが主権国家と同じようなプレーヤーになるんだと。
    16 国際政治の手法では日本を分析できない。人類学の手法が必要だろう。

    第3章 国家とナショナリズム
    73 アメリカの代表は短期的な分析や現状分析ではすごく弁が立つけれども、全体を鳥瞰した議論になると、ヨーロッパ人の前ではまるで子供みたいになってしまうところがあるんです。
    75 (委任統治下のイラクで)英国が裁判所も法制度も整備しようとしない。その代わりに何をしたかというと、イラクで部族間の対立が起きると「襲撃する際は最寄りの英国警察署に予定を届け出よ」「襲撃後は何人殺し、何を略奪したかの記録を報告せよ」と。

    第4章 アメリカの民主主義、ロシアの民主主義
    87 ロシアは実は地球温暖化に賛成でCO2がもっと増えたほうがいいと思っている。(中略)北氷洋の氷が溶けることによって(中略)、冬でも船を通せます。
    98 (日本で)高学歴ワーキングプアとイスラム原理主義が合わさると、数万人規模の高学歴の原理主義者が現れてくる。

    第5章 国家の力の源泉はどこから
    108 「マニュアル型人間はダメだ」(中略)とかいう説がありますが、それは往々にしてマニュアル自体の不備にすぎないんですよ。

    第8章 イスラム、中東世界、そして日本
    186 岡本 どうして最近になって、こんなに原理主義が強くなってしまったんですかね?
      佐藤 やはり冷戦の崩壊と共産主義・社会主義の退潮があります(中略)。純粋な資本主義というものは(中略)どうしてもその結果として格差が生まれ、社会的に満たされない人が出てくる。

    第10章 欧州とロシアー永遠のすれ違い?
    217 「(西)ヨーロッパかくあるべし」という理念、「キリスト教共同体」
     一 ユダヤ・キリスト教の一神教の伝統。
     二 ギリシャ古典哲学の伝統
     三 ローマ法
     起源は西ローマ帝国。東ローマ帝国、東欧、ロシアには三がない。
    221 ロシア人の「クマの親切」・・親切心でポンポンと相手の肩をたたいてあげる。たたかれたほうは肩の肉がえぐれてしまう。

    第12章 2009年 オバマと世界
    264 日本は惰性に流されて、日米同盟の維持を真剣に考えてこなかった。感情的な反米とか嫌米は危険な兆候で、アメリカの力を過小評価すると日本の進路を誤ると思うんですよ。
    276 原理主義を堕落させよう。
    296 やっぱり人類というのは核兵器が拡散した状況でも生き残るための知恵を出していかなければいけないということですよ。
    300 日本が武装中立策もとらず、非武装中立策もとらなければ、理論的に「同盟」そか選択肢はないんですよ。

  • 1941 ロマンチックジャパン by バンジー インド人
    日本人は一人では何の意見もない。ところが徒党を組むと途端に騒がしくなって自己主張をする。自分は日本は嫌いだ
    大田昌秀元知事 死線をくぐりぬけてきた。親と子が一緒に地下壕に隠れて、子供らにのませる水がなくなる。最後は自分のおしっこを飲ませ、それも飲ませられなくなった時に子供が死んでいく。そういうのを実際に目撃し、体験している上に彼の思想があり、反基地闘争がある。そこを捨象して、ただ単に数合わせで、基地をどこそこへ移せとだけいっても、それは無理
    エドマンド・バーク 所詮人間は偏見(先入観)から逃れることはできない
    スンニ派 4学派 ハナフィー法学派(トルコ)、シャフィイー学派(インドネシア、チェチェン)、マリキ法学派(マグレブ地域、エジプト)、ハンバリー法学派(この煮詰まったのがサウジアラビアの建国理念のワッハーブ派、コーランの解釈は9世紀でとまっている)

  •  元外務省二人による意欲的かつ創造的な対談。時期は2008年だが、現在でも色褪せず充分な示唆に富んでいる。

     内容は世界情勢全般にわたっており、とても紹介しきれないが、冷戦後の世界構造の激変が最大のテーマ。つまり大国による新たな帝国主義的覇権構造を十分に認識し、日本もまた大国としての帝国主義国との認識に立って対外的に「振る舞い」をするべきと説いている。

     量質ともに読み応えのある内容がぎっしり詰まっており、読後の充実感ひとしおである。

  • インドにしてみれば自分たちインド人のほうが日本人より上だと思っている。インドから見た日本人は英語もろくに話せないし、自分の意見も満足に表現できないと。インド人のカウンターパートは欧米であると。
    ロシア人は法律なんかよくわからない。彼らは無法をもって法とするみたいな連中だから。じゃあ、どこで話ができるかというと神様の話とか哲学の話になって法律論ではない。ITの次はグリーン、環境、資源、エネルギー。ここに国力を注いで新しい経済発展のエンジンにできるか。

  • 岡本行夫、佐藤優の対談。双方元外交官だけあって話が合う。

    本文中にそのまま書いているわけではていないが、私は次のように読んだ。
    国家と言うのは必要悪であって、外交は性善説ではなく性悪説で成り立つものだ。じっくり観察すればどの国も独自に思想を組み立てており、それをもとに自己保存の要求から具体的行動に出ている事が分かる。
    世界は新たな局面に入り、新しい帝国主義の時代に入った。ナショナリズム・ファシズムの傾向が大きくなっている。

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著者プロフィール

外交評論家。2020年4月24日、新型コロナウイルスによる肺炎で逝去。1991年外務省退官後、岡本アソシエイツ設立。橋本内閣、小泉内閣と2度にわたり首相補佐官を務めた。 MIT国際研究センターシニアフェロー、立命館大学客員教授、東北大学特任教授などを歴任。2020年『岡本行夫 現場主義を貫いた外交官』(朝日文庫)がある。

「2021年 『フォト小説 ハンスとジョージ 永遠の海へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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