僕はしゃべるためにここへ来た

著者 :
  • 産経新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784819111447

作品紹介・あらすじ

覚悟を決めて書いたテレビ報道の裏側。震災報道の真実!被災地ノンフィクションの決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 職業人と「人」としての選択肢。文章はこなれていないが生々しくて涙が止まらない。

  • [2012.その6]フジテレビの笠井信輔アナの東日本大震災の被災地取材での苦悩が綴られている。
    就活でも何度も聞かれた質問「被災地にいってリポートするとすれば、何をどんな風にリポートしますか?」、「被災地の取材で大切にしなければならないことはなんですか?」正直そんなこと分からなかった。この本をよんで笠井アナもこの問いに苦しんでいたのがよくわかったし、被災地取材に関わらず、取材し視聴者に伝えるということについてもっともっと考えないといけないと感じた。

  • この本を読んで良かった、知ることができて良かったな、と思う。

    震災の時、テレビでマスコミの人たちを見ては「後ろに瓦礫を片付けている人がいるんだから手伝えばいいのに」と簡単に思っていたけれど、何も知らなかったんだなあと思い知らされた。
    笠井アナが自分の行動を決して正当化していないのも、人柄だなと思う。

    印税は全額寄付されるし、多くの人にぜひ一冊買って読んで欲しい。

  • 被災地取材の厳しさ、倫理的ジレンマが生々しく、でも、笠井アナの語り口は親しみやすく読むことができた。
    同じ東北でも、人的被害が少ない地域では、東日本大震災の持つ意味合いは全く違うものになることを実感している今日この頃。私は内陸部に住み、津波も原発事故もリアルに体験してはいないが、あの時のこと、その後出会った被災者らの話は忘れない。今も、生活再建に、精神的に、困難を抱えている人がいる。忘れない。

  • 笠井さんて、いい人だよなぁと改めて思った。

  • 震災における、笠井アナウンサーの苦悩が赤裸々に書かれてます。生々しいけど、読んで良かったです。

  • これまでに読んできた震災関連の域を出るものではなかった。本書の中で本人も触れていることだが、TVで映像とともに物事を実況するという仕事に慣れているためか、事物への描写が時に不鮮明なことがあった。
    また、私はこの本を読んで、この笠井氏についてどうしても「業界屋」の域を出る印象を受けなかった。どこと言うわけではないが、言葉の端々に「TVだから何とかなる」とか「TVだから許される」という考え方が見え隠れする気がしたのだ。
    そもそも、被災地を巡りながらその特番をどうしても小倉・中野アナのどちらかにやらせようとする笠井アナ。この緊急時にこだわる点としては理解に苦しむ。

    本書の中で被災地の中での己(報道人)としての立ち位置について葛藤する場面が幾度とあるが、そこまで複雑なことなのだろうかと私のような一個人は思ってしまう。要は多くの場面において、踏み込み過ぎな取材姿勢がその葛藤の一因となっていると思われるが、ならば踏み込まなければ良い。自分達で被災地に支援活動を行い、そこで体験したこと、そこで通じた人達のことを記事にする、ではいけないのか。そういったことに笠井アナが参加している映像が「英雄気取り」と取られるなら、他の社員、または他社で支援活動をしている人ではだめなのか。そもそも、被災地の支援活動を「英雄気取り」と取るならそれは情報を受け取る方が歪んでいるだけであって、そんなことは支援活動をしたこともない人たちには非難する権利すらない。そういう考え方をすると、「英雄気取り」と取られるから支援活動をしないというのはいささか筋違いな論な気もしてくる。

    「映像を撮る」ということは報道においてそこまで重要視されることなのか。現地の人の感情を逆なでする危険まで冒して・・・。
    遺体の確認中の家族の様子を撮ろうとした笠井以下スタッフに「撮るなー!」と激高した警察官の気持ちは良くわかる。逆になぜ撮る側はそれがわからないのか。なぜカメラを回そうとするのか、それはどんな時に用い、誰に見せたい映像なのか、いやそもそも、公共の電波に乗せる前提のカメラで撮るべきものなのか。

    何らマスメディアへの不信が払しょくされるものではなかった。

  • 市図書館。

    被災地取材中に「報道に携わる人間としてどうあるべきか」と「人としてどうあるべきか」という意識が交錯する彼の胸中が飾らない言葉で書かれている。

  • 営業していない真っ暗な店内から泥だらけの食料を笑顔で“運び出す”自分たち。異常な行為だと分かっていても、飢えていたからみんな何も躊躇っていなかった。あの日の店内の光景はたぶん一生忘れない。

  • 先日、自分の目で見る決心がやっと固まり、石巻へ行ってきた。
    桜満開の日和山の下には、鳥の声しか聞こえない静寂につつまれた時間の止まった街があった。言葉には出来ない感覚だった。
    その帰り、偶然、仙台駅の本屋でこの本を見つけた。報道をする人がどんな感覚で、あの街をみたのか?が知りたくなり、読んでみた。

    震災当時、テレビで繰り広げられるリポートを見て、何が起こっているのか?を世間に知らせることは大事。情報は途切れてはいけない物。だとは思いながらも、「そこまでやるのか?」「行くのに食料ぐらいは当然積んでいるよな?」と、やや非難の目で見ていた。
    その後、偶然、震災当時のマスコミの方の葛藤がわかるドキュメントを見て、ものすごい狭間に立っている人たちなんだとわかった。
    そして、今回の笠井さんの本。
    マスコミの方々がどんな風に被災地ですごしたのか?どんな風に葛藤していたのかがすごいわかった。
    私が想像していた以上に葛藤されている姿。葛藤の連続で成り立っている職業という感じを受けた。
    自己弁護に走っているという評論も見かけたが、そうやっていかないと耐えられない現実を見てきたのだと思う。だから、私は自己弁護とは思わない。

    この本の中で登場する何人かの被災者の方の言葉に、被災者ではない私が勇気づけられた。自分も自分なりに頑張って生きなきゃなと思う。
    辛い話も目に入ってくるけど、私はこの本に出会えて良かった。

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著者プロフィール

1963年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業。87年、フジテレビにアナウンサーとして入社。「ナイスデイ」や「情報プレゼンターとくダネ!」など、おもに情報バラエティ番組を中心に活躍。2019年9月、フジテレビを退社し、フリーアナウンサーに。同年12月、悪性リンパ腫にり患していることを発表。12月末から入院し、2020年4月末に退院、7月に復帰を果たした。著書に『増補版 僕はしゃべるためにここ(被災地)に来た』(新潮社文庫)。フォロワーはブログ約17万人、インスタグラム約29万人。

「2020年 『生きる力 引き算の縁と足し算の縁』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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