法服の王国 小説裁判官(下)

著者 :
  • 産経新聞出版
3.94
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本棚登録 : 192
レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784819112161

作品紹介・あらすじ

「きみらは、日本国憲法のことをどう思ってるんや?」国家権力からの圧力の中、ベテラン判事が後輩たちに悲痛な声で問い質す。裁判所内では歪んだ人事行政のツケで、首相私邸への偽電話事件、女性被告人との情交、当事者からの収賄といった不祥事が噴出。津崎守は、最高裁調査官、東京地裁の裁判長と順調に出世の階段を上がるが、突然、「招かれざる被告人」が姿を現す。やがて能登の日本海原発二号機訴訟が金沢地裁で一審判決の日を迎える。裁判長席に現れた村木健吾は、「世紀の判決」を言いを渡す気負いもなく、穏やかな表情だった-。戦後司法史を描く大河小説、怒涛のクライマックス!

感想・レビュー・書評

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  • 2人の立場の異なる(一人は現場回り、もう一人は最高裁事務局を中心とするエリートコース)裁判官を主人公とした小説。
    2人の学生時代から裁判官としての終点までを、周囲の人々の人生模様も織り交ぜながら、重厚に描いている。2分冊でかなりの分量だが、苦も無く読み進めることができた。在るべき裁判官、司法とはいかなるものか、について考えさせられた。
    (おそらく)周密な取材の上に書き上げられたノンフィクション小説のような側面も持ち合わせており、戦後の司法の在り方や原発訴訟の実態などを知ることができるという知的面白さもあった。

  • 小説の進行と呼応するかのように、現実の世界で、四国電力伊方原発の運転差し止め判決が広島高裁から出た。偶然の出来事に驚きつつも残りを一気に読み終えた。政治からの影響を受けることなく、いかに裁判所判断の独立性、公平性を担保するかが、3人の主人公の軌跡を通して綴られていく。法律や技術を熟知した展開には、フィクションとは思えないリアルな迫真力があり、読み応えがある。

  • 正直、読み手を選ぶ本だ。裁判所、裁判官に興味がない人や裁判特有の専門用語、さらには原発問題に予備知識がない人が読むと、ちっとも面白くないだろう。しかし、法曹の世界を目指す人、すでに身を置いている人たちにとっては、必須の書になるはずだ。昭和30年代から平成23年の東日本大震災までの事件や判例を実在の人物をもとに歴史書のように丁寧に綴りながら、一人ひとりの裁判官がどのような立場にあり、どのような苦悩の中で、裁判を指揮し判決を書いているのかとてもよく分かる。全体を通して分かるのは、裁判官一人ひとりは完全独立であることと、同時に、裁判所も一つの役所であること。その両立は絶妙なバランスで成り立っている。裁かれる者にとってはどちらでも構わないが、裁判官が違うことによってまったく逆の判決が出る場合があることを良しとする考え方は、救いがあるような気がする。

  • さすがに下巻になると、力尽きたのか誰が主人公なのか分からなくなっている。
    それに村本の裁判官としての生き様というのがメインテーマだと思っていたが、あまり盛り上がることなく終わってしまった。

  • 下巻は上巻での中心人物たちが定年等、老年になるまでが描かれている。また、原発訴訟についても判決が続々と出てる様も描かれている。本書は司法もの小説ではあるが、原発問題についても深く考えるきっかけとなる良書であると感じた。

  • 黒木さんの小説は金融モノから社会問題にシフトしてきた。この小説も原発を扱う裁判が主たるテーマとなっている。フィクションだけど、かなり史実に忠実なので、勉強になる。
    主テーマのまわりにちりばめられた、裁判や法曹界についてのいろんなエピソードも興味深い。
    そしていつものように、舞台となる土地についての描写(名所とか美味しいお店とか)があるのも楽しい。読書中のちょっとした息抜き。
    金融モノに比べると、自分にはややとっつきにくいかなあという印象はいなめず、夢中で読み終えた、という訳ではなかったのだけれど、良書でした。

  • 150801 中央図書館
    最高裁長官矢口洪一や竹崎博允、それに前原誠司まで登場させ、志賀原発訴訟や住基ネットの歴史を思い起こさせる、お勉強小説。

  • 細かい事件の中身とかは手を抜きながら、軽く読んだ。実際の事件関係よく調べて書いてるなぁと思うけど(黒沢ターンまで!)、予想より、裁判官小説っていうより原発小説で、メッセージ性が強すぎて若干引いたので★3。

  • 村木の半生が、上巻冒頭の判決に結びつく流れがとても感慨深い。現場を回り続けた裁判官、エリート街道を驀進した裁判官、国と戦い続ける弁護士など、あまり注目されない職種が描かれとても興味深かった。
    いい意味でも悪い意味でも、フィクションとは割り切れない内容なので、偽電話事件を実名で描いていたり、過激な人権派については特に言及されないままだったりと、視点に関しては疑問はある。あと、3.11フクシマの直接的原因は地震後の津波であり、耐震性に疑問を提示した判決を画期的と描くのは演出が過ぎる。

  • すごい作品でした!
    まるでノンフィクションかと思えてしまうほど、実際にあった事件や裁判を元に知られざる裁判官の立場、司法の世界が描かれずっしり読み応えがありました。
    公平で独立しているはずの司法の世界も、結局のところ目に見えない縛りで国の管理下にある判決を強いられたり、原発問題や公害問題など深くえぐられていました。
    裁判用語と言うべき、難しい言い回しも多くて読み辛さで、読むのに結構時間はかかりましたが、面白さに最後まで読み終えることが出来ました。
    様々な裁判を通して、日本の問題をえぐる強烈な作品でした!
    以前読んだ『司法記者』では検察官の世界、今回は裁判官の世界、これらが現実なのかどうかは知りませんが、見えない縛りにあるのが司法の世界なのかと思うと恐ろしいです。

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著者プロフィール

1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社を経て2000年、大型シンジケートローンを巡る攻防を描いた『トップ・レフト』でデビュー。著書に『エネルギー』『冬の喝采』『貸し込み』『カラ売り屋』など。英国在住。

「2018年 『世界をこの目で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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