「脱炭素」は嘘だらけ

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784819113991

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  • かつては温暖化が問題と言っていたと思いますが、最近では気温が実際には上がってきていない測定データが示されることもあり「気候変動」という言葉が主流になってきたと思います。これなら、地球温暖化や逆の現象である寒冷化、そして夏になると日本でお馴染みとなった「ゲリラ豪雨、台風などによる大雨」も含むことになりますが、果たして、これらの現象とCO2の現象は関連あるのでしょうかと思っております。

    また最近では、この本の題材にもなっている「脱炭素」という言葉が聞かれるようになりました、とにかくCO2を出さない生活をしようということのようです。1番の槍玉に上がったのが、乗用車です、商用車や建設機械についてどれだけ議論されているか私はわかりません。

    欧州ではディーゼル車の不祥事(いわゆるディーゼルゲート)があって将来性が見えなくなったので、起死回生の一手として「電動化の車」に進んでいるように思います。中国は二輪車ですでに電動化を終えた実績があるので、それを持って乗用車も電動化するのでしょうか。

    自動車に関連する業界に身を置いているものとして、これらの動向は大変気になります。昨年も今年(2021)も日本の経済成長率はかなり低いかマイナスなので、CO2排出量もかなり減っていると思います、新聞を見ると頻繁に「脱炭素」という言葉を見かけますが、果たして日本の取り組むべきことはこれで良いのかを疑問を持っています。そんな私にとって、この本は大変興味深く読むことができました。

    以下は気になったポイントです。

    ・米国は自分ができもしない目標(環境税、排出権取引などの規制)になぜこだわったのか、それは「地球の気候は危機に瀕しており、平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5度に抑えなければならない、そのためにはCO2は2030年に半減、2050年にはゼロにしなければならない」という「気候危機説:に基づく。これは西欧の指導層と米国民主党では信奉されている。(p16)

    ・過去30年の知見の蓄積を科学的(政治的でなく)に踏まえると、1)地球温暖化はゆっくりとしか起きていない、2)温暖化の理由の一部はCO2だが、その程度も温暖化の本当の理由もわかっていない、3)過去、温暖化による被害はほとんど生じていない、4)今後についても、さしたる危険は迫っていない、5)温暖化対策としては、技術開発を軸として排出削減は安価な範囲にとどめるのが適切である(p31)

    ・アメリカでは温暖化対策などやっている場合ではない、これは共和党だけでなく民主党でもそうである。気候変動は民主党インテリの問題という構図であった、これが日本で伝えられないのは、日本メディアでの米国情報は、大抵は民主党側のメディアの二番煎じになっているから(p34)

    ・上院では、5つの州の民主党議員(ニューメキシコ、コロラド、ペンシルバニア、ウェストバージニア、モンタナ)が造反して共和党議員に同調してシェールオイル・ガスの採掘に対する規制を阻止する修正案を可決した(p40)米国の共和党支持者は温暖化危機説がフェイクであることを知っているし、議会でも観測データに基づいた合理的な議論が行われているが、日本はそうなっていない、省庁が温暖化対策予算と権限を持っていて、それに群がる企業・研究者がいる(p42)


    ・太陽光発電や風力発電は「脱物質化」ではなく、むしろその逆である。確かにウランや石炭・天然ガスの燃料投入はない一方で、強大な設備が必要なため、セメント・鉄・ガラス・プラスチック・レアアースも大量に必要となる(p64)

    ・発電所よりも一層深刻なのは、発電所と変電所をつなぐ送電網、変電所からオフィス・家庭までを繋ぐ配電網だろう、英国では1990年以降、電気事業が民営化されて多くの事業が売買された。その結果として、CKグループ(長江実業)が、イングランド南部と南東部のみならず、ロンドンの配電までも管理するようになった(p70)

    ・米国ではサイバー攻撃の防御を理由として、華為などの先端技術企業を排除する動きが広がっている、2020年5月1日には、重要鉱物の敵対的な国からの輸入を見直すことを命じる大統領令が署名された(p73)

    ・世界における太陽光発電用の多結晶シリコンの80%は中国製である、そのうち半分以上が新疆ウイグル自治区による生産、世界に占める割合も45%である(p76

    ・CO2ゼロを実現するための技術として、CCUS(発電所からCO2回収して地中に埋める)、合成メタン(水素からメタン合成し燃料として利用)、合成石油(水素から合成)、水素(石油でなく水素を用いて銑鉄)、DAC(大気中からCO2回収して地中に埋める)これらの中で普及に至った技術は一つもない(p91)

    ・電気の価値は、スイッチを入れたときにきちんと照明がつくことにある、なぜ石炭火力発では可能か。スイッチを入れると、それで電線に電流が流れ、それに応じて発電所で石炭ボイラーへの投入が増えて、追加分が発電されるようになっている、実に巧妙に仕掛けである。太陽光発電は、日光が出た時だけ電気が送られるので、太陽が照っていないと照明はつかない(p101)

    ・ドイツは風力発電先進国であったが、異変が生じている。2019.1-6で陸上には35基しか設置されなかった、目標は2030年までに1400基と言われている。最大の理由は、生態系への影響、景観、騒音などの環境問題である。風力発電支援制度の変更、送電線建設の遅れもある(p113)

    ・日本の製鉄業が今日まで国際競争で生き残っているのは、高い技術力もさることながら、石炭については内外価格差がそれほど大きくなかったことによるが、水素を輸入して用いるとなると、内外価格差が懸念される(p126)

    ・台風は増えても減ってもいない、発生数は年間25程度(強い以上に分類されるもの15程度)で一定している、猛暑は都市熱や自然変動によるもので温暖化ではない、温暖化は江戸時代に比べて0.8度(過去30年なら0.2度)に過ぎない。東日本台風(2019.10)で大規模な水害にならなかったのは、八ッ場ダムの整備が奏功したから(p141)

    ・CO2による温室効果の強さは、CO2濃度で決まるが、その関数形は直線ではなく対数関数である。すなわち温室効果の強さは、濃度が上昇するにつれて鈍化していく。CO2濃度が高くなるにつれて赤外線吸収が飽和するため、つまり今後の0.8度は、2800ppmを2倍にした5600ppmで起こるのではなく、CO2濃度が1.5倍になったとき、4200x1.5=6300ppmになったときに産業革命前に比較して1.6度の気温上昇となる、今は年間2ppmほど増えているので、さらに2100ppm増加するには105年かかる、つまり、2130年、3ppm増えた場合には、2095年となる(p146)

    ・気候シミュレーションの問題は、1)被害予測の前提となるCO2排出量が多すぎる、2)気候モデルが不確かな上に、気温予測の出力を見ながらパラメータをいじっている、3)被害予測は不確かな上に悪影響を誇張している(p153)

    ・気候モデル研究者にとって頭の痛いことに、最もわからない「雲」が地球の気温に最も大きく影響する。雲は太陽光を反射させることで温度を下げる一方で、地表からの赤外線を吸収して地球の温度を上げる、この効果の大きさは雲の形や高さによって異なる(p149)

    ・地球温暖化で農業生産が打撃を受けるというが、過去の都市熱で何が起きたかを調べる方が将来の地球温暖化の影響を推し量るためには適切な手段である、それによると、気温が上昇しても、農家は対応して問題なく生産を続けてきたということ。(p168)

    ・日本では夏の暑さで死ぬ人よりも、冬の寒さで死ぬ人の方が30倍も多い、これは超過死亡率の統計で明らかになっている、秋から冬にかけて、呼吸器系疾患・循環器系しっかんになって体調を崩してなくなる人が多い(p183)

    ・猛暑の原因は、1)気圧配置の変化やジェット気流の蛇行などの自然変動、2)都市化、100年あたりで東京は3.2、大阪は2.8、地球温暖化は0.7度(気象庁発表では、100年当たり1.1-1,2度としているが、都市化等の影響があり、それを補正すると0.7度)なので、都市化の影響の方が大きい(p190)

    ・菅首相はCO2実質ゼロを目指すと述べた、実質とは、日本の技術により海外で削減されるCO2も含めるという意味(p232)具体的にはCO2回収、貯留(C CS)、直接空気回収(DAC)である(p233)

    ・分厚く多様な産業の集積(=経済の複雑性)を有している日本は、温暖化対策イノベーションを生み出す母体となる、1)部品・材料、2)加工、3)計測、4)計算機が援用される(p254)日本のCO2排出量は12億トン(世界全体の3%)なので、日本の排出量を減らすよりは世界全体に日本の技術を広めた方が全体の削減量は多くなる(p259)今までも、LED・リチウムイオン電池・ハイブリッド自動車という技術を開発してきた(p259)

    ・EUは送電線が密につながっているので、そこから一国だけを取り出して比較することが間違っている、EU全体としてみるならば、日本と発電燃料の構成はあまり変わらない(p269)

    2021年8月9日作成

  • 2ちゃんねるの西村博之氏のお勧め。▶︎地球温暖化の主因はCO2なのか?CO2ゼロにするための費用対効果はいかほどか?翻って地球温暖化は悪なのか?▶︎CO2ゼロの原点に立ち戻って考えてみよう。

  •  「脱炭素」の裏では、FIT制度による電力価格の高騰、都合の良いデータのチューニング等良くない話がたくさんある。
     経済成長と環境問題の解決の両立を本気で図るのなら、筆者の言うように「日本の持っている本当に環境に良い発電技術を世界に売る」といった上げ潮シナリオが良い策だと思うそして、そのためにはコストが下がるようイノベーションが生まれやすい環境を作るのが重要なので、政府は減税等や基礎研究・教育支援の方にお金を回す必要があると思うのだが、、、利権構造もかなり絡んでそうなので一筋縄ではいかないのかなと思った。
     本書は初心者向けになるべく表やグラフを用いずに解説してくれてわかりやすかった。次のレベルに行くために、もっと一次データを見ることができる本を読みたい。

  • 温室効果ガスの排出削減を巡る、いわゆる「グリーンバブル」の裏側を語った一冊。現在世界中で叫ばれている「地球温暖化」は科学的根拠が薄く、風力発電や太陽光発電に切り替えたからといって電力を安定供給できるわけはなく、逆に国が疲弊していく(太陽光・風力発電は意外にエネルギーを多く使うので実はこちらも地球環境にあまりよくない)。また、こういった脱炭素の裏では中国が暗躍しているといった問題もあり、ちょっと専門用語が多いが勉強になる一冊。

  • 2021年33冊目。満足度★★★★☆ 地球温暖化のファクトフルネス。日本含む世界がゼロカーボンを目指していることについて疑義を呈する。

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