- Amazon.co.jp ・マンガ (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784821135714
感想・レビュー・書評
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同じ作者の、重版未定、重版未定2が面白かった身には、買わずにいられなかった一冊。出だしからして、フィクションて言ってるけど、この本のことだろ!とツッコミたいエピソード。そして、醤油大さじ9、まだ?なのに?で用意した調味料、弱火でコトコト煮込み焦げ目がしっかりつくように焼く、200分強火にかけた鍋に上質紙3kgを流し込み200度に熱した油を注ぐ...と恐怖の誤植オンパレードのレシピ本が実話だったこと...。ミスを謝罪にきておいて、うちは編プロで編集はするが刊行物に責任持つのが版元でしょう、火事が怖いなら薪を焚べるな、と啖呵を切った逃げた編集者の上司。確認、という最低限の手間さえ惜しんだ、あるいは惜しまざるをえなかった忙しさ、その発生する構造。どこかで本が出なくても人が死ぬわけじゃないとこっそり消える編集者たち、真正面から受け止めて心を壊す者たち。「あっという間に消える本をあっという間に編集する それが俺たち編プロなんだ」という矜持。「読まれるかどうかは編集者が決めることじゃない読者が決めることなんだよ」。「読まれない本にも読者に選択肢を与えている点で意義があるんです」。クールでニヒルなシーンが多いけど、それでも...という思いがかすかに残っているのは感じられる。出色は、版元の危機を企画で救ったエピソード。作者自身もほぼありえないけどこういった形があってもいいのではないか、と。最後に新米だった束美が編プロでしかできないことをやると引き抜きを断り、先輩と同じことを新人に言いながら教育するシーンで締めくくられる。
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『重版出来』で描かれる輝かしき出版業界から疎外された版元たちの挽歌『重版未定』の、さらにその周縁の世界が本作の舞台である編集プロダクションである。なぜ、彼女たちは心身を擦り減らしてまで本を編むのか。そしてここには二番煎じ、どころか五番煎じの本が書店に並ぶことの意義に対するアクロバティックな回答もある。同じく小さな編プロからこの業界に足を踏み入れた読者として、涙を禁じ得ない作品だ。「「つながらない電話」の数だけ編集者は強くなる」。力強い言葉である。